チョコニート【ショートショート#45】【430字】

　バレンタイン当日、ニートの幼馴染に呼び出された。理由は不明だが、徹夜で何か作業をやらされるらしい。
　龍之介には、幼い頃から振り回されてきた。独学でプログラミングを身につけた彼は、詐欺グループを逆にハメて大金を巻き上げたり、悪徳政治家のSNSを乗っ取って、罪を自白させたりとやりたい放題だった。
　そんな彼も今年でハタチになって、色気付いたらしい。女の子からチョコがほしいと宣ったのだ。実家から一歩も出ないくせに何を言ってるんだ。

「よく来たな。驚くなよ」
　部屋の前で龍之介がニヤリと笑う。
「うおっ！？」
　天井まで届くチョコの山だった。しかも一つ一つに愛のメッセージ付き。
「今度は何したんだよ」
　すると、スマホの画面を見せてきた。某人気アイドルのSNSアカウントだ。
「まさか……乗っ取ったのか」
「チョコの送り先を俺ん家にした」
　見損なったぞ、詐欺に手を染めるなんて。怒りに震えていると、龍之介にホワイトチョコの包みを渡される。
「これからホワイトデーのお返しを発送するぞ。一つ一つ手書きのメッセージ付きでな」

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