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ぼくの秘密の家庭教師(16 )
さて、ぼくはというと、さすが上級生の四年生だ。勉強の内容もグンと難しくなってきて、お家に帰ってジュナにわかりやすく教えるためには授業中にしっかり先生の話を聞くだけでは間に合わない。ちょっとでもわからないところがあると休み時間に亮に教えてもらうんだ。そして、ジュナに教え終わると、忘れないうちに練習問題で頭の中を整理する。この方法を続けていくと、勉強の内容がきっちりと理解できていくんだ。たまにはジュナの疑問に答えられないときは翌日、またまた亮に教えてもらってジュナが納得できるようにするんだ(本当は答えられなかったぼくがなんだけどね)。
国語担当のウニヨンはというと、四年生になって文章が長くなってくると読むスピードアップを要求するようになってきた。
「ゴロクお兄ちゃん、わかりやすく速く読んでくれないと、公園に行く時間がなくなっちゃうよ。ぼくお留守番はいやだよ~。」
でも、このウニヨンの要求も大いに勉強に役立った。読むスピードが必要なのは国語だけではない。テストの時には算数も理科も社会科も問題を理解しながら速く読むことで、考える時間が確保できる。特に、国語や算数は問題文が長くて長くて速く読めないと、もう何のことやらわからなくなってしまうんだ。ウニヨンは速く読むことを要求するだけじゃなく必ず内容について質問してくるから、「ウニヨンの質問しそうな部分はここかな?この文は何を伝えたいんだ?」って考えながら読むことが癖になってきたことが普段の勉強に役に立っていた。
そんなこんなでぼくの成績はどんどん上がるし、いつの間にか担任の先生からもクラスのみんなからも頼りにされる存在になっていた。
そんな四年生の五月のことだ。担任の先生のアイディアで、朝の会を利用して誕生日の人がスピーチをやることになっていた。テーマは決まっていた。《名前の由来》だ。案の定、ぼくの名前にクラスのみんなが食いついた。
「明日の朝の会は、野比のスピーチだね。期待してるぞー。名前の由来はドラえもんかぁ?」
「そういえば、本当におもしろい名前だよね~。明日のスピーチ楽しみー。」
「でもさ、ドラえもんからとったなら、著作権侵害じゃん?」
「著作権侵害ってなんだよ?」
「人が作ったものを勝手に使用することさ。ねっ先生そうでしょ?それってダメなんじゃないの?」
「はいはい、静かに。栄さんの名前の由来は明日の朝の会のスピーチで聞くんですよ。今じゃありません。」
先生、注意するところはここじゃないんじゃない?近頃はあだ名で呼ばれることはなくなっていたけれど、やっぱりみんな心の中では気になっていたのか・・・そりゃそうだよな。ゴロクなら由来をすぐに説明できるんだけどな。そういえば、野比って名前の由来をお母さんやお父さんに聞いたことなかったな。ぼくの中でも絶対にあのアニメからのパクリだと思っていたからな。ぼくの名前の由来。なんなんだろう。
「おい、野比。気にするなよ。大丈夫か?」
考えごとをしている間に、休み時間になって真剣に考えこんでいるぼくを心配して隼人と和樹と亮が席まで来てくれていた。
「えっ?ああ~。平気だよ。ぼくも名前の由来が気になってさ。今日家に帰ったら早速聞いてみるよ。お父さんお母さんアニメが好きだったのかなあ?」