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絵師小説もいろいろ、結局は人物をどれだけ鮮明に書き込めるか!

第165回直木賞受賞作、澤田瞳子著『星落ちて、なお』読了のご報告。

澤田さんの絵師小説では以前『若冲』を読んでいて、若冲の絵さながらの濃厚な迫力と凄みに圧倒されました。ちょうど若冲ブームの時期で、読んでいて胸苦しいほどに若冲の絵が見たくて仕方なかった。

この作品では女の一代記として色鮮やかに、血族間の愛憎、妻や母として、芸術家一家ならでは懊悩が描かれています。明治期ならではの開明的な耀きとその背負う影が克明に描かれて、その凄腕の筆力に唸らされることしきりでした。

親族間における妄執に揺れる心の襞の描写は、澤田さんならではの個性です。絵師における制作と生活のバランスにおける葛藤、芸術を究める過程の苦悩に加えて何を描くかで、作品の個性が際立ちます。
結局は、絵画をモチーフに人の生きざまをどれだけ書ききれるかに尽きます。そこが要所なのですが……難しいのです。

江戸の情緒を残しつつ目まぐるしく西洋化された明治の町の風景が、心象風景として鮮明に描写されて、時代小説を書く者として、うーん、ひじょうに勉強になりました!
重厚だった『若冲』にはなかった、希望をはらむ軽妙なモチーフも埋め込まれて、エンターテイメントとして読める小説でもありますよ。

書き手としては、常に読書と執筆のバランスには悩みますが、
とにかく読まないと始まらないのであります。。。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました☆
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