D2Cが変えるビジネスの世界と私たちのライフスタイル

佐々木康裕さんの『「D2C 「世界観」と「テクノロジー」で勝つブランド戦略』を読みました。
D2Cは2年くらい前から徐々に聞くようになったワードです。この本を読むまでは、消費者が直接作り手と結びつくため、細かなオーダーにも対応可能、すなわちオーダーメイドに向いているのがD2Cという理解をしていたのですが、それはごく一部だということがわかりました。必ずしもカスタマイズ、オーダーメイドに限定しなくてもよく、メーカーと消費者が直接結びついていればよく、しかもECに限定されておらず店舗も所有している例も少なくないことがわかり、視野が広がりました。
最近は、個々の商品、ブランドをライフタイムバリューで評価する重要性が言われており、提供しつづけた価値と顧客獲得コストと、初回以降かかった経費のバランスで見て、採算性やブランド価値などを見ることが増えていると感じます。
メーカーが直接消費者と接点を持てば、卸売や小売が間に入らない分、中間マージンを乗せる必要はなく販売コストは下がるといえますが、流通効率や品揃え、プロモーションの巧拙などを考えると、本当に採算が合うかというと、疑問に感じることもあります。
それに対して、この本では世界観を発信しつづけることで、ファン作りをして、テクノロジーを駆使して、特定顧客が求めているものを発信していくことで、業界の地図を塗り替えることもできるとあり、大いなる可能性を感じました。
確かに世界観の発信は重要になってきている印象もあります。最近、web動画でドラマ仕立てのものも見かけることが増えましたが、製品の機能性や利便性などにほとんど触れていないものもあります。
これまでのマーケティングでは、「ドリルが欲しいのではない、穴が欲しいのだ」と言われるように、モノ(ドリル)ではなく、価値(穴)に焦点を当てることが大切だと言われてきました。これからは「あのかっこいいドリルを使ってDIYしている暮らし」に憧れるのかもしれません。そうだとすると「穴が欲しいのではなく、かっこいいドリルを使っている私」が求めるものになってくるのかもしれません。コト消費などと言われることもありますが、ライフスタイルそのものが提供価値になってくるといえるのでしょう。
世界観の発信だけだと、小売業でもできそうですが、そこに作り手のこだわりや作り手だからこそ醸し出せる世界観があると、差異化を図ることができると思います。
日本と欧米諸国では、従来のメーカーや流通業者が提供できている価値も異なり、消費者の満足度も異なるものだと思いますが、これから5年、10年の中で存在感のあるD2Cメーカーが出てくると思うととても楽しみです。
私自身もメーカーが発信する世界観に共感でき、その世界に浸ることができれば、日々の暮らしの満足度・充実度も高くなってくるのではと思いました。

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