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ドラフト指名を振り返る(セ・リーグ)

10月24日にプロ野球ドラフト会議が開催されました。育成指名も含め123名の選手が12球団から指名されました。本稿では12球団の指名選手ならびに指名の意図等を考えていきます。

・中日  評価:S
今ドラフト最大の目玉選手で、世代トップの評価を受ける金丸投手(関大)の交渉権を4球団競合のクジで引き当てたことが、最大のプラス評価でしょう。最速154キロの即戦力左腕投手で、MLB挑戦を表明している小笠原投手の穴を十分に埋める逸材。腰の状態が気にはなりますが、順調であれば開幕ローテーションに入ってくると思われます。また指名評価が高い理由として2位指名で吉田投手(西濃運輸)を指名できたこと。高卒社会人4年目の投手で、外れ1位と評価された投手です。好素材の左腕投手を2名指名できたことにより、小笠原投手だけでなく年齢のあがってきた大野投手の後釜も確保できたのはなにより大きいと言えます。3位指名で強打の野手である森選手を確保。左打ちの強打者が不足しているチーム事情にフィットした選手です。守備は遊撃ですがここはダブつきがあるため、外野コンバートもあるかもしれません。4位で守備力に定評のある石伊選手(日本生命)を指名。レギュラークラスの選手と若手の年齢層が離れている捕手陣において、その穴を埋める指名。金丸投手を確保でき、2位以下でも有望選手を指名できたことから最高のドラフト指名と言えるのでないでしょうか。

・東京ヤクルト  評価:A
他11球団が指名選手の競合がありクジ引きとなる中、中村投手(愛工大)の一本釣りに成功。評価としてはクジ競合があった選手と遜色なく、外れ1位となった場合、間違いなく競合指名となる選手です。最速160キロのストレートに加えスライダーなどの変化球も一級品。先発投手獲得が急務とされるチーム事情を考慮すると、最高の指名といえるでしょう。また2位指名においてはモイセエフ・ニキータ選手(豊川高)を指名。選抜甲子園大会において、新基準のバットで本塁打を記録できるパワーも魅力なのですが、最大の魅力は夏大会予選で7割近い安打を放ったコンタクト力。ファームに有望選手が少ないチーム事情を考えると、よい指名だったと言えるのではないでしょうか。3位指名で即戦力左腕投手の荘司選手(セガサミー)を指名。左の中継ぎ投手の層が薄い投手陣にとって、すぐ使える投手の指名は急務であったことを考えると、チーム事情にフィットした指名と言えるでしょう。4位で田中選手(健大高崎)を指名。長打力のある内野手であり、年齢があがってきた山田選手の後継を見据えた指名と言えます。チームとして世代トップクラスの選手を獲得でき、補強ポイントであった即戦力投手、強打の野手を獲得できたことから、理想通りの指名と言えるでしょう。欲を言えば育成でいいので高校生投手を指名できていれば尚良しというところでしょうか。

・広島  評価:D
1位指名は宣言通り宗山選手(明治大)。5球団競合ということもありクジ引きでは縁がなく、代わりに指名したのが佐々木選手(青学大)。コンタクト力ではチームメイトの西川選手に劣るものの、最大の魅力は長打力。鈴木誠也選手の後釜が中々見つからず、打力に苦しんでいたチームにフィットした指名と言えるでしょう。ただ完成度が低いため、1年目はファームで実戦経験を積み、それ以降の活躍となる可能性もあります。2位で佐藤投手(富士大)を指名。球の出どころが見にくい左腕投手ですが、球速が最速145キロ程度と同年代の投手と比べると遅め。1年目でどこまで通用するかがカギとなるでしょう。3位で岡本投手(甲南大)を指名。最速149キロの右投手ですが、正直完成度が低く高値掴みの印象も感じます。それ以下の指名にも言えるのですが指名順位が一つ程度高く、繰上げ指名という印象を受けます。

・横浜DeNA 評価:C
金丸投手をクジで外し指名したのが竹田投手(三菱重工West)。150キロの速球を軸に相手打者を打ち取る先発候補の投手です。チーム事情としては今永投手MLB挑戦の穴が埋まらなかったこともあり、先発として期待できる投手の指名となったと考えられます。ただ正直評価の分かれる投手であり、活躍できないリスクがあるのも事実。今年活躍した吉村投手(ヤクルト)の社会人時代の投球と比べると、少し劣る印象を受けます。年齢的に伸びしろは期待できないため、1年目からが勝負となります。2位指名で篠木投手(法政大)を指名。下級生時から活躍しており、最速157キロのストレートが魅力な投手です。ただ最近の登板を見ると球速が落ち、スケール感が小さくなった印象。先発で長いイニングを投げるためと思われますが、故障等でなければと不安を覚えます。リリーフであれば即戦力の評価ですが、大学で相当酷使されていることから肘肩の状態が不安材料です。3位で強打の野手である加藤選手(四国リーグ・徳島)を指名。コンタクト力に加え長打力のある遊撃手であることから、即スタメンで使えるという評価でしょう。独立リーグとNPBにおいてはレベルの違いはあるため、対応できるかが評価の分かれ目となりそうです。下位指名でも若松投手(四国リーグ・高知)を指名。150キロを超えるストレートが魅力で、中継ぎで即戦力として活躍を期待した指名と考えられます。指名の意図としては即戦力で使える選手を集め、三浦監督の次年度を支えるということでしょう。ただ上位選手の評価が人によって大きく分かれるため、活躍の有無により評価が大きく変わる指名と言えます。

・阪神 評価:C
金丸投手を競合指名で外し、外れ1位指名にて伊原投手(NTT西日本)を指名。身長170センチと小柄な左腕投手ですが、今年にかけて伸びてきた大器晩成型の選手です。外れ1位指名はプラン通りだったと思いますが、年齢も来年で25歳となることもあり、これ以上の伸びしろは考えにくいため、1年目から勝負となるでしょう。阪神は先発投手が充実しているため、最初は中継ぎ起用となるかもしれません。2位指名で今朝丸投手(報徳学園)を指名。春の選抜大会時点においては世代トップの評価だったのですが、夏にかけて評価を落としたのが気がかりです。理由としては春から夏にかけて、あまり伸びていなかったこと。早熟タイプと評価された場合、プロで伸びが期待できないことが評価を下げた要因と思われます。3位で木下投手(KMGHD)を指名。大学から投手転向した変わり種で、KMGHDに入社後から急成長。最速156キロをだしたことで話題となり、指名候補となった投手です。投手としての経験は浅いですが、これまで酷使されていないことから更なる成長も期待できる投手。4位以降は独立リーガーを2名指名しました。指名としては育成というより1年目から勝負できる選手を集めたという印象です。1年目から勝負の選手が多いため、来年活躍できるかが評価を大きく左右しそうです。

読売 評価:C
菅野投手のMLB移籍もあり、どうしても即戦力投手が欲しいというのがチーム事情。金丸投手を競合指名するも縁がなかったことから、高校屈指の内野手である石塚選手(花咲徳栄高)を指名。西武と競合するもクジを引き当て、交渉権獲得となりました。即戦力投手から将来性にかける高校生野手に方針転換したことについては、候補選手の力量を鑑み指名方針を切り替えたと見ることができます。中途半端な選手を獲得するくらいであれば、坂本選手の後釜たる遊撃手を獲得するという方針転換と考えられます。石塚選手については長打力というよりも、コンタクト力の高さが魅力の選手。将来の遊撃手、または三塁手のレギュラー候補として育成していくのではないでしょうか。2位指名は俊足の内野手である浦田選手(九産大)。脚力とグラブさばきは申し分ないのですが、課題は非力な打撃。指名の意図としては内野の控え層が薄いこと、2塁レギュラーの吉川選手が来年30歳を迎えることもあり、層を厚くすることであると考えます。また遠投は110メートルと肩力はあるのですが、送球に難があるため遊撃手での起用は厳しいと予想。その場合、身体力を生かした外野手への転向も想定していると考えられます。3位指名で荒巻選手(上武大)を指名。一部報道だと遊撃手とされていましたが、大学では二塁、三塁を守っている選手。左打ちのスラッガータイプの選手です。指名の意図としては衰えの見える坂本選手の控えを厚くすること、良ければ1年目から三塁レギュラーで起用したいということでしょう。4位指名石田選手(北星学園大学付)は時間のかかるロマン型の投手。ただ5位指名の宮原投手(東海大静岡キャンパス)は小柄ながらも150キロのストレートを投げる投手ということもあり、1年目から1軍登板も期待できる投手です。最大の課題とされる、即戦力先発投手を獲得できなかったことから評価は低めですが、該当選手がいないとなると、瞬時に指名方針を切り替えて弱点補強を行った点は評価していいかと思います。

ここまで簡単に各球団のドラフト指名を振り返ってきました。基本評価が高くなる球団は全体の評価が高く、意中の選手を競合を制して獲得できた球団。中日、ヤクルトの指名評価が高く、それ以外の球団は可もなく不可もなくといった評価となります。広島だけは下位指名がどうしても繰上げ指名に見えることから評価を下げましたが、上位指名を受けた選手次第で評価は大きく変わります。指名時点ではあくまでもスタート時点ですので真の評価が定まるのは入団後、どのような活躍をしたかによります。ですので現時点での評価は、あくまでも目安であるということ。いい意味で評価を覆す活躍を期待したいです。

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