真偽一刀part①
両断。
己のアイデンティティが崩壊した今、なす術がない。
敵を斬る、殿のために手柄をあげ自国の天下統一を目指す。殿を王に、そのために斬る。
ただそれだけだった。
今はもう
敵に見えない。味方に見えない。殿が、もう殿に見えない。
敵を斬るたびに間違ったことをしている気分になる。
なにかがおかしい。こいつは本当に敵なのか?自国に生まれていれば肩を組んで仲良く酒を飲み交わしていたのではないか?
親友のこいつが敵国に生まれていたら俺は斬っているのではないか?
もう刀が振るえない。己はもう侍ではない。
ただのニートだ。
そう語りながらニートが画面越しに訴えかけている。母親は呆れた顔でオレンジジュースを机に置き、部屋を出ていった。