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認知症だって忘れるばかりじゃありません

以前、母が喫茶店のレジで迷う話を書きました。
母は90歳で認知症の入り口あたりにいます。
私は月3度ほど母のところへ行き、いっしょに喫茶店に行きます。
母はコーヒー、私はアメリカン。レジは母がコーヒーチケットを出してくれます。
そこでひと悶着起こるのです。アメリカンはコーヒーより50円高いのです。母はレジで50円払うというのが、どうしても分かりません。
アメリカンはコーヒーより50円高いから50円払うのよと何回言っても分かりません。
「どうして50円払うのかしら」
喫茶店を出ながらいつもいつもいつもいつも、もう何回くりかえしたか分からないくらい言っていました。
認知症っぽいしなあ、理解できないんだなあとあきらめていたのです。
 
 
でもね、
とうとう理解しました。
まず、「どうして50円払うのかしら」の言葉が消えました。
母はレジでチケット2枚と小銭を出すようになりました。
分かっているのかなと思いましたが、特に言葉はありません。
そういうことが続きました。
 
そんなある日、ついに言ったのです。
私が100円を出すと、「50円じゃないの?」と言います。
「50円ないから100円」と言うと、「はい、凜さんはアメリカンだから50円余分に払うのね」と。
おおっ! 覚えた!
私は心で喝采の声をあげました。
以後はスムーズです。
チケット2枚と私の出す小銭。母はレジでそれを出すと、もう「どうして50円出すのかしら」とぐずっていたのがうそのように、すんなり喫茶店を出るようになりました。
 
認知症の人って忘れることも多いけれど、というか片っ端から忘れるけれど、こうやって覚えることもあるんだと、少しうれしくなった出来事でした。
 

noteで紹介しなきゃとほくほくしながら書いてます。


 
お読みくださりありがとうございました。
 


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