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随筆 / 晴れた金曜日、海が見える公園で。

石津浜公園に来た。
ボーッとすることが出来て心地よい。

広い。
言葉では言い表せないくらい、脳みそが洗われる。
青い。
こんなにも色々と感じているのに、言葉にして書き落とそうとすると、出てこなくなる。
消える。失くなる。
目の前の漢字の間違いなどに囚われて、書きたかった言葉が、消える。
広い。ただ広い。
青い。青い。

向こう側には岸だって見えて、山だってビルだってあるのに、この場所はこんなにも静かなんだ。空だって海だって、どこまでも続いている。
それがなんだか不思議で、目の前の海に浮かぶ漁船や向こう岸に立ち並ぶビルからは、たしかに今も働いている人たちの気配を感じることが出来るのに、辺りはあまりに静寂に包まれているものだから現実ではないように思える。
今、この場所で働いている人など、誰一人として居ない。僅かに蝶がチラチラと花の蜜を集めるばかりである。

まるで別世界に閉じ込められているみたいだ。

いつかの放課後に理科室で見たポスターに載っていたみたいにさまざまな形をした雲は、プラネタリウムみたいに球体な薄水色に浮かんでいた。
濃淡をもって広がる青の山々に、レオナルド•ダヴィンチの発見した遠近法を思い出す。

あぁこんなにも地球は広くて、そして穏やかだったのか。
人間の寿命などお構いなしに流れるこの時間に、わたしは静かに目を閉じる。

海風が身体の外を走り抜ける。
春ならばわたしの頭皮もやさしく撫でてくれただろうに。たしかに冬を含んだその風は、少しばかり、当たりが強かった。

トンビが鳴く。
ピューヒョロロ
ピュー、ヒョロロ。

いつの間にか空は色を変えてしまっていた。
気まぐれな奴だ。
だがそれでいい。

わたしは筆を置くと、片脇に海が広がる道を歩きはじめた。




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