映画『ルックバック』を観て
ルックバック : 作品情報 - 映画.com (eiga.com)
部屋の電気は消え、机のライトの明かりだけが手元を照らす。母親が起きてこないかと息を潜めながら、目の前の作業に夢中になる。それは夏休みが終わりかけなのにほとんどが白紙の宿題の1ページだったかもしれないし、こっそり夜中に友達とオンライン通信で遊んだゲームだったかもしれない。
映画の冒頭、自分が小学生だったころの記憶が鮮明に浮かんだ。
主人公の藤野は、絵を描くことが得意な小学4年生である。藤野の描く学級新聞の四コマはクラスメイトや担任から絶賛され、得意になっていた。しかしある日、不登校の京本という生徒に掲載している四コマの欄を半分譲ってほしいと担任から告げられる。「自分より上手く描けるわけがない」と不満げな藤野だが、掲載された京本の画力の高さにショックを受ける。後にあるきっかけでふたりは出会い、共に漫画家を目指すようになる。
必死に机に向かう藤野の姿に、懐かしさを覚えた。京本の画力に追いつこうと、彼女はわき目もふらずスケッチに励む。夜中でも学校でもお構いなしである。
日が暮れるまで公園で遊び、門限を忘れて怒られる。本の続きが気になれば夜中にこっそり布団の中で明かりをつけて読んだ。小学生の頃、時間を忘れてひとつのことに夢中になった経験を思い出した。
京本と藤野、二人の姿を通して、自分の中の記憶が輝きを増してよみがえってくる。キラキラ輝く宝石のような日々が詰め込まれた映画だった。