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子どもたちの心をむしばむ“見えない闇”

小中高生の自殺、過去最多527人の衝撃

「いったい、どうして子どもたちがここまで追い込まれているのか」
厚生労働省の発表によると、2024年の1年間に小中高生の自殺者数が過去最多の527人(小学生15人、中学生163人、高校生349人)に上り、前年度より14人増加しました。この数字は、統計を開始した1980年以降で最も多いものです。一方、全国の総自殺者数は2万268人(男性1万3763人、女性6505人)と、こちらは1978年の統計開始以来2番目に少ない水準。そのアンバランスが鮮明に示すのは、子どもたちが抱える心の問題がいっそう深刻化しているという現実です。


■ コロナ禍以降、「病み=闇」が深まる社会

コロナ禍による生活様式の激変や、長期にわたるマスク生活・リモート授業などからくるコミュニケーション不足、先行き不透明な社会情勢――。こうした環境変化が、人々の心に大きなストレスを与えています。

  • ストレスが他者に向かえば、いじめや虐待という形で表面化

  • 自己に向かえば、自殺という悲痛な結末になる可能性が高まる

今回、小中高生の自殺者数が527人まで増えた背景には、こうしたストレスフルな社会の影響が色濃く反映されていると考えられます。


■ 小中高生の自殺数が“過去最多”となる要因

  1. 環境変化への適応困難
    コロナ禍で学校の行事や友人との交流が制限され、子どもたちが気軽に悩みを共有できる場が激減しました。思春期に必要なコミュニケーションの機会が奪われ、孤立感を抱える子が増えた可能性があります。

  2. SNSの普及と“取り残され感”
    一方でSNS利用が増え、いじめや誹謗中傷がオンライン上でエスカレートする一方、他人の“充実した姿”を見て自己肯定感を失う子もいる。心のケアが行き届かないと、追い詰められた結果、自死を選んでしまうケースも懸念されます。

  3. 家庭や学校での目配り不足
    親や教師自身もコロナ禍のストレスにさらされ、“子どもを守る体制”が弱まっている現状があります。ささいなサインを見逃すリスクが高まり、悩みを抱える子どもがSOSを出しても届きにくい状況です。


■ 「目に見えない武器」との戦い──一人ひとりの“闇”にどう向き合うか

「兵隊にとられる可能性のない太平の世」ともいわれる現代日本。しかし、子どもたちの命を脅かすのは“見えないストレス”や“心の痛み”という、形のない武器です。

  • いじめ・虐待:他者への攻撃
    自分自身のストレスが外に向かえばいじめや虐待となり、社会問題を深刻化させます。

  • 自殺:自己への攻撃
    行き場のない苦しみが自分へ向かい、死という選択肢を選んでしまう子どもが増える状況は切実です。


■ 子どもの自殺を防ぐには?――政府や社会の取り組み

厚生労働省は、SNSを活用した相談体制の拡充や、子どもが自殺未遂を起こしたときに助言を行う「危機対応チーム」の設置などを強化するとしています。しかし数字は527人という過去最多を示し、なおかつ増加傾向が止まらないままです。

  • 学校だけでなく家庭・地域・オンライン
    子どもが悩みや不安を抱えたとき、どこに相談すればよいのか明確に案内が行き渡っていないケースも。地域の相談窓口やSNS相談サービスを周知徹底するとともに、家庭内でも日頃から会話しやすい雰囲気を作ることが求められます。

  • 大人自身のストレスケアも不可欠
    親や教師が心の余裕をなくしていると、子どもがSOSを出しても気づきにくい。社会全体で“大人向けのメンタルケア”も充実させ、子どもを支える体制を整える必要があります。


■ 具体的な数字で見る子ども自殺の深刻度

  • 2024年の子ども(小中高生)自殺者数:527人
    過去最多で、前年度より14人増加。

  • 内訳:小学生15人、中学生163人、高校生349人

  • 全国の自殺者総数:2万268人
    (男性1万3763人、女性6505人)
    こちらは1978年以降2番目の少なさだが、子どもに限っては深刻化している。


■ まとめ:子どもたちを「見えない闇」から救うために

コロナ禍以降、人々の心の中に巣食うストレスは増大し、子どもたちへの影響が一段と顕在化しています。2024年の小中高生の自殺が527人に達した事実は、私たちに大きな警鐘を鳴らしているといえるでしょう。

  1. 環境の変化とコミュニケーション不足

  2. SNSをめぐる誹謗中傷や比較意識

  3. 大人社会のストレスが家庭や学校に及ぶ

こうした要因が複雑に絡み合い、子どもたちの“見えない闇”を深めています。戦争や強制的な徴兵制度こそない「平和な時代」ではあるものの、心の戦いはむしろ激しくなっているのかもしれません。

国や自治体が発信する
相談窓口(「こころの健康相談統一ダイヤル」0570-064-556など)
を普及させるだけでなく、身近な大人が子どもを見守り、声をかけ、つながりを築けるような社会にしていく必要があります。

子どもの命を守るために――いま私たち大人が何をすべきかを再確認し、子どもが“見えない闇”に囚われる前に、気づいて手を差し伸べる仕組みを整えることが、急務と言えるでしょう。


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