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“困っている人”は支援のはざまにいる。高校生が考えた「フリースペース」

周りの人はどんなことで困ってる? どうしたら解決できる?

「社会問題の解決」というと、難しい話と思いがちですが、身近にもたくさんの「困った」があります。見つけたら、何ができるかを考え、行動することが、社会を変える力になります。

KTCおおぞら高等学院東京キャンパスの生徒たちは、子どもたちへの虐待を防ぐには、まずは養育者を支援することが必要と考え、「フリースペース」を提案しました。

探究学習の祭典「クエストカップ2022 全国大会」。全国の中高から4098の応募があり、審査を通過した261チームが参加しました。今回は社会課題探究部門「ソーシャル・チェンジ」でグランプリを受賞したKTCおおぞら高等学院東京キャンパスのチーム「おおぞら子育て協力隊」が提案した「フリースペースLegato」を紹介します。

私たちはこれまで子育てに関して学習を進めてきました。まずは資料=下図をご覧下さい。

厚生労働省が発表している児童虐待報告件数のグラフです。特にこの10年間では大きく増加していることが分かります。この原因は何か考えた結果、養育者の精神的・経済的余裕のなさが原因なのではないかと気がつきました。

そこでまず、養育者がどれほどの期待や不安を感じているかを調査しました。結果、6割の方が子育てにおいて精神的不安を感じることがあるとのことでした。しかしこうした方への支援はすでに行政が提供しているはずです。

「真に困っている人は支援と支援の狭間にいる」

疑問を感じた私たちは、支援の現状を学ぶために「子ども家庭支援センター」などの様々な施設を訪問し、直接話を聞いてきました。そこでは「支援・サービスを知らない方が多い」「共働きの場合、仕事の時間と行政サービスの時間がかぶってしまうため利用が難しい」などの意見を聴くことができました。つまり、真に困っている人は支援と支援の狭間にいるということです。

このような支援の隙間を埋めるために、私たちが生み出したアイディアが「フリースペースLegato」です。「Legato」はイタリア語で「結ばれた」を意味します。

このアイディアは、子ども家庭支援センター、児童館、こども食堂、コワーキングスペース、オンラインなどの既存のサービスを掛け算して1か所ですべて解決できる場所というところにあります。

企画のポイント

コンセプトは3つのFree、①Free of Charge(無料)、②Streff free(ストレスからの自由)、③Use freely(使い方自由)。大きなポイントは2つです。

まずひとつめ、Zoomと公式LINEを使って、オンラインで相談ができます。公式LINEは24時間メッセージを受け付けられるので、相談のハードルがさがります。また、ぴあサポーター制度を作ります。担当者が定期的に連絡をすることで、養育者がひとりで不安やストレスを抱えることが少なくなります。

続いてふたつめ、行政サービスを紹介するリーフレットを配布します。(パンフの)QRコードを読み込むと、「東京子育てスイッチ」という東京都福祉保健局提供の子育てのお役立ち情報が得られるサイトに移動します。

さらにLegatoでの過ごし方は自由。キッズスペースに子どもを預けたり、低価格で食事をとったりできます。

現代のインターネット社会の利点を存分に活用しながら、従来の仕組みをいくつも融合させた、子育てを総合的に支援する場所、それが「フリースペースLegato」です。

この仕組みが実現すると、子育てにおける様々な負担を軽減することができるため、養育者に余裕が生まれます。最終的に虐待などの減少に貢献します。

実践の結果

私たちはこのアイディアを実際に12月に試験運用しました。4名の養育者が参加してくださいました。そこでは「既存の枠組みにとらわれない若者の柔軟な発想がいいと思った」

「実際に活用できそうな期待感がある」などのお言葉を頂くことができました。

私たちももうすぐ大人になります。親になるかもしれません。「親だから、大人だから、強くひとりで頑張れ」という風潮に向かって進んでいくことは正直不安です。自分たちが変えることで、自分たちが安心な子育て環境を創造したいと思っています。

親も子も自分らしい幸福を追求する権利が保障された明るい未来に向けて、私たち「おおぞら子育て協力隊」は進み続けます。以上でプレゼンテーションを終了させていただきます。ご静聴ありがとうございました。

審査員の声

審査委員からは、

「実際に足を運んでみたりやってみた、という実行力が本当によかった」

「情報を取りにいくことが難しい人たちにどう情報を届けるのかをさらに深ぼると、行政が導入したいサービスにもなると思う」

といったコメントがありました。

「おおぞら子育て協力隊」に「施設に行っていいのかなと思って使えていない人たちが、一歩踏み出せるような工夫などあるか」という質問もありました。

メンバーはこう語ります。

「行政サービスが活用されてない理由は、ターゲティング(想定される利用者)を“困っている人”と打ち出しているから。経済的に困窮していなかったり母子家庭じゃなかったりすると、精神的につらいと思ってもそういった場所に(自分は)当てはまらないと思って、足を運びづらいと親御さんから聞きました。そこで支援と支援の間を埋めるために、あえて”困っている人”という枠組みをせず、広く子育てに関わっているすべての方を受け入れるスタンスで、悩みや幸せなことも共有できるスペースとして打ち出しました」

「校内選考で落選」からの,グランプリ受賞


メンバーが出場したソーシャルチェンジへの応募は、学校推薦と、自己推薦の2つの方法があります。学校推薦の枠から漏れても、自分たちの思いがあれば、自己推薦で応募できるのです。「おおぞら子育て応援隊」も学校推薦の枠に入れなかったのですが、自己推薦で全国大会への道をつかみました。

そして、グランプリ受賞。メンバーはこう振り返りました。
「実は校内選考で落選したんです。だから、自己推薦枠を使って、自分たちで応募しました。まさかのグランプリを取れて夢のようです!最初は虐待を受けた子どもに焦点を当てていましたが、友だちの親が運営している子育てサロンを実際に体験して、虐待を引き起こさないような環境づくりの視点を持たないと、根本的な解決にならないと気づき、発想を大転換しました。クエストをやって、とにかく自己完結しないこと、自分で考え言葉にまとめ、相手にとにかく伝えていくことが重要なんだと、わかりました。ゼロから何かを作り上げることは初体験で、すごく自信になりました」
みなさん、ありがとうございました!

おおぞら子育て協力隊の発表動画は、こちら(00:45:00ごろから開始)。

この発想、どこから生まれた?

日本最大級の探究学習の祭典「クエストカップ2022 全国大会」企業探究部門でグランプリを受賞した東葛飾中学校と聖心学園中等教育学校の先生が、受賞までの軌跡を解説するオンラインセミナーが3月27日午前10時から開かれます。生徒たちの発想の源は?教師はどう関わった?学びの多い振り返りです。概要と申し込みはこちら

【参考】
探究学習はじめの一歩!【実例】探究学習のテーマ16種
「探究学習」の最先端 教育と探求社の総合パンフレット
教員向けイベント情報

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