
嬉しかった経験に「停学」を挙げた、生徒の話【教室の風景】
教育と探求社のメンバーは、各地の学校の探究学習の授業によくお邪魔しています。生徒たちから、おびただしい数の言葉や表情が生まれては消え、生まれては消えていく様を間近で見る中で、時折思いがけないような言葉や場面に出会うことがあります。そんな瞬間を、ご紹介します。
「クエストエデュケーション」の企業探究コース「コーポレートアクセス」に取り組む学校に行ってきました。参加企業からの「ミッション」(お題)をもとに、自分たちで企画を考えていきます。
この日、「ミッション」の内容を初めて知らされた生徒たちは、チームに分かれて「ブレスト」を始めました。
抽象的な「ミッション」を具体的なイメージに分解するために、特定のキーワードをまずもらい、頭に浮かんだものを付箋に書き、模造紙に貼り付けて共有しながらイメージを固めていきます。
静かに何か思いを巡らせている様子の6人グループがいました。考えていたのは「嬉しかったこと」というテーマ。
女子生徒の1人が、書きつけた後もしばらく膝の上で持ち続けていた付箋を1枚、机の上の模造紙にスッと出してきました。
「停学」と書かれていました。
停学、嬉しかったんだ、なんで?
うつむき加減に「バイトして、ご飯食べて、寝て、を繰り返していたからかなぁ」。そういえば、と思い出したように「停学中に、友達が会いに来てくれたこともうれしかったかなぁ」と続けました。
そっかあ、なるほどねえ、と聞いていたら、斜め前に座っていた生徒が「(停学の)理由が気になるー」と聞いてきました。
彼女はにっこり笑って一言だけ。
「生きてたら、人生いろいろあるじゃん?」
このやりとりを見ていた隣の男子生徒が、「オレもあったー」といいながら、付箋に「出停」(出席停止)と書きつけて模造紙に貼り付けました。新型コロナの濃厚接触者になって学校に来られなくなったときがあって、そういうの、こう言うらしいです、と彼。
「停学」に触発されたかのような「嬉しかったこと」が、一つ加わりました。
授業後、担当の先生とブレストの様子を振り返りました。この学校では、違うクラスの生徒同士でチームを組んでいるそうです。「ここからチームビルディングをしていくんです」と先生が言っていました。
ほぼほぼ「初めまして」のメンバーに、「停学」を「嬉しかったこと」と伝えた、あの女子生徒が付箋を出したときの様子は、今も覚えています。多くは語らなかったけれど、彼女にしか出せない言葉だった。どんな経験であっても、その人にしかない経験を大事にして欲しいと思っています。
見てきた人
早﨑亜紀子:「自分自身を生きるとき、人は自然に輝きます」とHPに書かれたメッセージに惹かれて2019年4月入社。探求したいことは哲学と芸術!「きっかけを提供するのは大人の役目」と心に刻み、世界中の子どもたちに沢山の学びのきっかけを届けたいです。
【10/1イベント開催】「これからの進路指導を考える」

いま、中学校・高等学校では「総合的な探究の時間」等の授業において問題発見や課題解決的な学習活動が進められています。
そして、探究的な活動を通じて身に付く能力や資質等を入学試験で評価しようという動きが大学を中心に増えてきました。現在の大学入試では、受験生の3分の2が第1志望の大学に進み、受験生の過半数が年内に合格が決まると耳にします。
18歳人口の急激な減少で大学が選抜する環境が大きく変わり、今の基準だけでない評価軸で大学を選別するようになるでしょう。
進路指導のあり方も、大きく変わるタイミングかもしれません。複雑化していくことが予想される今後の大学入試に対応するために、多様な進路情報を整理し適切に生徒に提示することが、今後ますます大切になっていきます。
新しい形の学びのあり方に対応していくため、大学や企業を含めた社会全体が生徒たちの学びを支える環境を整え、連携していくことが求められるようになるでしょう。進路指導も社会と連携し、今まで以上に協働していく時代になるのではないでしょうか。
今回のナレッジカフェでは「これからの進路指導について考える」をテーマに、人材育成の新たな道筋を模索する中でこれからの時代に活躍する人材教育のあり方、そして大学入試のあり方を共に語らいたいと考えています。
進路指導に関心のある先生方のご参加を、心からお待ちしております。
お申し込みはこちらから。
【登壇者】
柴山 翔太先生(福岡女子商業高等学校・校長)
1990年、北海道生まれ。国語科の教師として教職9年目で5つの私立高校を経験。赴任1年目で、進路指導や小論文教育により福岡女子商業高等学校の国公立大の合格者をゼロから20人に増やし、30歳で校長に抜擢される。
池田 靖章先生(香里ヌヴェール学院学院長・中学校高等学校校長)
探究学習を教育方針の軸に据え、様々な取り組みを実践。海外進学にも力をいれ、3年で18名の進学者を輩出。その中でも世界のトップ大学(ワシントン大学等)にも合格するなど多様な生徒を育成する。著書に学事出版『「総合的な探究」実践ワークブック』、ワークアカデミー『自分ごとからはじめよう SDGs探究ワークブック~旅して学ぶ、サスティナブルな考え方』などがある。
山田 高幹氏(関西学院大学 高大接続センター・課長補佐)
前職ベネッセコーポレーションでは高校営業を起点に大学、官庁への訪問まで幅広く活動。現在は関西学院大学にて、入試広報を主に担当している。高校生・受験生と接しながら、進路指導支援にも取り組んでいる。関西学院大学では探究的な活動を評価する「探究評価型入学試験」を導入しており、生徒の多面的な評価を進めている。
<日程>
2022年10月1日(土) 17:00-19:00
<内容>
1.パネルディスカッション
登壇者
柴山 翔太先生(福岡女子商業高等学校・校長)
池田 靖章先生(香里ヌヴェール学院中学校高等学校・校長)
山田 高幹氏(関西学院大学 高大接続センター・課長補佐)
モデレーター
宮北 純宏(教育と探求社 大阪営業所・元西大和学園進路部長)
2.振り返り
3.質疑応答
<一緒に考えたいこと>
・探究学習を活かした総合型選抜の可能性
・新しい形の受験勉強のあり方、学校での学び方
・大学以降の成長に関わる探究学習の意義
■リアル会場
以下の開催会場へ開始10分前までにお越しください
ナレッジキャピタル ナレッジサロン
(グランフロント大阪 北館 7F)
■オンライン(ZOOM)
お申し込み後にZoomのURLをメールでお送りいたします。
【参考】
自ら課題を発見し、その解決を探究する「ソーシャルチェンジ」のサイト
探究学習はじめの一歩!【実例】探究学習のテーマ16種
「探究学習」の最先端 教育と探求社の総合パンフレット
教員向けイベント情報