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古楽への入り口

古楽への入り口は百人百様。

私の場合は高校時代、ソルフェージュで2年間お世話になった山田栄ニ先生(作曲家)によるお導きだった。

レッスン終わりに毎回様々な録音を聴かせてくださった。それも面白いもの限定で。

例えば

【ロディオン・シチェドリン/カルメン組曲】
前奏曲、molto cresc.→subito pianissimo→現れたのは闘牛士の有名な部分。突然の減音で驚かされるが耳を凝らして聴くと伴奏のみである。旋律は聴衆の頭の中で補足する様に作られている。

【アルテュール・オネゲル/火刑台上のジャンヌダルク】
【オリヴィエ・メシアン/美しき水の祭典】
なんともミステリアスな音色の楽器オンド・マルトノの魅力を教えていただいた。

オンド・マルトノ (Ondes Martenot) 、フランス人電気技師モーリス・マルトノによって1928年に発明された

【レナード・バーンスタイン/ミサ曲】
クリスチャンである先生と遠藤周作オタクの私。小説「沈黙」と「ミサ曲」の主人公の苦しみとその答えが共通している事をしみじみ語り合った。

先生はフランク・マルタンの大ファンで勝手に「マルタン和声」と言う造語を使う。そして極めつけは飼っていたゴールデンレトリバーの名前がマルタンだった。

フランク・マルタン(Frank Martin、1890年9月15日 - 1974年11月21日)、フランス語系スイス人作曲家。

そんな、ジャンルの垣根なく紹介されるレコードの中に古楽の録音も登場した。

エマ・カークビーやThe Consort of Musickeの演奏だ。初期ピリオド楽器ブームの頃の演奏家達が試行錯誤の末、少々エキセントリックな方向に帰結した音楽。

カークビー氏と土田

それ以来バッハの宗教曲オタクになり、特にバロック声楽に興味が集中した。

エマ・カークビーやスサンネ・リュデーン、デボラ・ヨーク、ヨハネッテ・ゾマー、ジョアン・ラン等は私のお気に入りのソプラノだ。他の声種にも大好きな演奏家が多数いるが名前の羅列は控えることにする。

私の一番好きな声:スサンネ・リュデーン氏

流れ流れて私はモダン・フルートでドイツに留学したが、辿り着いた先は18世紀オーケストラのメインメンバーであったコンラート・ヒュンテラー先生のクラスだった。

作品が作られた当時と同じ空気の振動(音)を2024年に再現する。
数ヶ月かけて手紙が届く様な。ザルツブルクからパリまでの馬車旅の末、疲労によって死んでしまう様な時代の音。
スマホ、飛行機、ChatGPT等とはまるで無関係だ。
音にはその物質の成分情報が全て含まれると言うが、コンラート所有のオリジナル楽器(ヤコブ・デンナー)から鳴った音にもその時代の成分情報が感じられるのである。

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