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女王、蛾に変身する
ちょうど3年ほど前、コロナ禍で家にこもっていた頃、
私は観葉植物に夢中になった。
うちの近くの大きな園芸店で夏の終わりに観葉植物のセールをやっていて
それでいくつか買ったら火がついた。
スーパーの園芸コーナーから高級園芸店まで、
色々と回って買い漁り、毎晩YouTubeを見て育て方を学んだ。
意外にもグリーンサム(緑の親指:植物を育てる資質)を持っていたらしく、
多分、一鉢も枯らしていないと思う。
その間に愛猫二匹(兄弟猫)を亡くしたこともあり、
観葉植物たちは自分の子供とまではいかないが、
ペットくらいの愛着を持って育てている。
その中で特に誇らしく思うのがアロカシアと言う植物である。
乾燥を嫌うくせに、あまり水分が多くなると根腐れするという
なかなかのハイメインテナンスな奴である。
(上の写真は借りてきたもので家にあるのとは少し種類が違う)
それが買った当初は15センチくらいだったものが、
今測ってみると80センチにもなっている。
そして花も3年連続で咲かせることができた。
インターネットで検索すると花が咲くのは珍しいらしく、
あるウェブサイトには「あなたの提供する環境にアロカシアがハッピーな証拠です」と書いてあった。
植物の母としては誇らしい。
さてアロカシアの花であるが写真のようにかなり地味である。
![](https://assets.st-note.com/img/1689873692583-BM5VZ63syY.jpg?width=1200)
夜に花が開くようで、開花した後の朝は
アロカシアがあるリビングから離れたベッドルームの部屋を開けた瞬間に、
フリージアを思わせる甘さとピリッとしたスパイシーさが混ざった独特の匂いに気づく。
リビングはそのトロピカルな香りで満たされて、
アロカシアの原産地である東南アジアのジャングルにいる気分になる。
ところがである。
普段は私の100倍も鼻のきく夫にはこの香りがほとんど分からないのだ。
私が「アロカシアの花が咲いたね」と言って、
初めてやっとその香りに気がつく程度である。
ふーむ、内省女王は考える。
女王は仮説を立てるのが好きなのだ。
これはどう言うことなのだろうか?
やはり赤ちゃんがちょっとでもむずかっただけでお母さんが目を覚ますように
子供のように大事にしている植物だからそれだけ敏感に気づくのだろうか?
いやいや、これはいわゆるフェロモンのようなもので、
アロカシアは私を誘惑しているのかもしれない。
内省女王はファンタジーの世界も好きなので、
自分が蛾になり、夜中の蒸し暑いジャングルで
アロカシアの甘くスパイシーな香りに惹きつけられて
飛び回ることを想像する。
ふーむ、せっかく誘惑されたから受粉の方法を学んでみようとまたインターネット検索。
女王といると退屈になることはない。