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品質管理の玉手箱(6)

QCサークルとは(2)


 前回は、近年、組織改革の分野で注目を集めている「自走する組織」との共通性と言う視点で、"QCサークル"の特徴をお話しましたが、近年注目を集めている組織改革に関わるもうひとつのキーワードである「心理的安全性」も、実は、"QCサークル"活動の中に半世紀以上前から組み込まれていました。

 勿論、当時は「心理的安全性」などと言う用語はなく、昨今のように意識的に「心理的安全性」に特化した活動が推進されたわけではありませんが、"QCサークル"活動そのものが、 職場の「心理的安全性」を高める"場(環境)"の形成に重要な役割を果たしていたのです。

 日本に於ける「心理的安全性」の第一人者である石井遼介氏は「心理的安全性の4つの因子」として、①話しやすさ、②助け合い、③挑戦、④新奇歓迎を掲げていますが、これらは全て、"QCサークル"活動を運営する上での基本要件でもありました。

 まず第1因子の「話しやすさ」が、効果的で活力ある組織運営の基本であることは、当時から認識されており、"QCサークル"では、「話しやすさ」を保証し参加者が思ったことを自由に発言できるよう、話し合いは"ブレーンストーミング"を前提として、他のメンバーの発言に対する否定や論評、一方的な判断を禁止していました。

 また、サークル内での権威勾配(権威のある者の意見に無批判的に従う心理)を排除するために、多くの"QCサークル"では、経営者や管理職者が活動に直接的に関与しないのが基本ルールでしたし、サークル毎に「話しやすい場(環境)づくり」のためのルールを運用してきた結果、常識や慣習に囚われない新奇なアイデアが生まれ(第4因子の「新奇歓迎」)、数々の高品質(Japan Quality)の実現に繋がったのです。

 「心理的安全性」の第2因子とされる「助け合い」は、正に、"QCサークル"の成果(結果)に直結する重要な要素と言えるでしょう。

 職場が抱える問題や課題を、同じ職場の仲間が力をあわせて解決(達成)するのが"QCサークル"の目的ですから、「助け合い」のない"QCサークル"などあり得ません。

 前回もお話した通り、一人の人間の考えることや出来ることには限界があるのですから、周囲の助けがなければ、その限界を突破(現状打破)することは困難ですし、「助け合い」があるからこそ、第3の因子である「挑戦」も可能になるのです。

 このように、改めて"QCサークル"の特徴を見直してみると、現在の企業(組織)に求められている「組織改革」の課題に、半世紀も前から取り組んでいた日本企業の先見性に驚かされるばかりです。


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