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AI活用による需要予測:具体例と実践による理解と改善


2024年問題でAIを活用した需要予測が注目されている


2024年4月1日からの改正法により、物流業界(運送業)で時間外労働の上限規制が開始されます。これにより、人材不足や労働負担増加の問題に直面することが予測されます。

この問題の解決策の一つとして、物流業界の需要予測にAIを活用したDXが進められています。

以下の効果が期待できるため、AIの活用が注目されています。

  • 市場動向や過去の需要パターン把握

  • 無駄を減らし、コスト効率改善

  • 生産計画の最適化

需要予測が「ドライバーの労働改善・生産計画の最適化」を実現する


AIの活用で以下のことを実現できます。

過去の需要パターンから将来の需要を予測
AIを導入することで自動で入力された過去のデータを分析し、需要の季節変動や周期性を把握することができます。これにより、在庫最適化も発注量の最適化も可能になります。

単純労働が削減され、従業員の負担も軽減でき、需要予測もより正確に行われ、業務効率化することができます。

事例:

需給予測や運送業務の車両手配でAIが活用されています。
AIを活用して商品の積み込みや配送を効率化し、ドライバーの労働時間を削減できます。

また、過去の物流倉庫データや、天気/ 季節などの外部データを活用することで、1週間の出荷量を予測する取り組みも行われています。

市場動向の把握
市場動向の分析は、将来の需要に影響を与える要因を理解する上で重要です。この分析には、市場の動向やトレンド、競合他社の動向などが含まれます。

AI を活用するデータを分析をすることで、これらの情報を考慮し、将来の需要をより正確に予測することが可能となります。

さらに、新製品の導入や販促キャンペーンなどのイベントや施策も将来の需要に影響を与える要素です。これらの要素を考慮することで、需要予測の精度を向上させることができます。

事例:
アパレル物流でAIを活用して、世界中から自動収集したファッションのビッグデータ画像を解析し、カラーや着こなしなどトレンドを予測します。
さらに自社情報の追加学習も実施することで、より正確な予測が可能になります

生産計画の最適化
AIを活用した需要予測は、業務効率だけでなく戦略的計画にも重要な役割を果たします。
長期的なトレンドや市場の変化を特定し、物流企業はキャパシティの拡大や新規市場参入などの戦略的な意思決定を行うことができます。
事例:

従来は、物流センターや補充倉庫の担当者が経験や知識に基づいて計画を作成しますが、作業が属人的で予測精度にバラつきがありました。

そのため、AIの需要予測を活用したシステムを自社で開発し、商品の横持ち計画にAI予測を活用することで、予測精度の向上や作業効率の改善が実現しました。

この結果、管理が難しかった「期限管理品」の保管や、センター内での商品移動の削減が可能となりました。

コスト削減
正確な需要予測は在庫レベルを最適化し、在庫過剰や欠品のリスクを軽減するのに役立ちます。

在庫過剰は資本や倉庫スペースを拘束し、保有コストを増加させますが、欠品は売上機会の損失や潜在的な顧客不満を引き起こします。

これらの非効率性を最小限に抑えることで、AIによる需要予測は物流企業に大きなコスト削減をもたらします。

予測モデル構築の1stステップは、「目的変数/説明変数の定義」


まず、需要予測に必要なデータには目的変数と説明変数があります。

目的変数
目的変数は、統計学や機械学習において、予測や分類の対象となる変数のことです。

つまり、モデルが予測したい対象や分類したいカテゴリなど、解析の目的となる変数を指します。

物流業界では、予測したいその日の需要数(店舗別でセグメントされているデータなど)、予測の対象となる商品やサービスの需要を表します。

説明変数
一方、説明変数は、その目的変数を予測や分類するために使用される変数のことです。

目的変数の値を説明するための要因や特徴を表します。物流業界では、内部に蓄積されているマーケティングキャンペーンデータや特定のイベントデータ、その日の在庫数などのデータになります。

例えば、マーケティングキャンペーンの実施や特定のイベント(セール、季節イベントなど)が需要に与える影響や、当日の在庫状況が需要にどのように影響するかなどが含まれます。

収集データを元に、モデル内部を処理し、予測モデルを構築します。

AIを導入して需要予測を図る際のポイント


需要予測にAIを導入する際は、以下のポイントが重要です。

1. 目的の明確化:
AIプロジェクトを社内で進める上で、以下3点が求められます。
・技術的開発可能性(フィジビリティ)
・業務フローの変化
・費用対効果(ROI)

その上で、企業内のどの領域にAIを適用するか、定量/定性目標や期間、および適用前後の費用対効果や投資回収期間を明確にする必要があります。
これにより、業務における適用の効果を容易に把握することができます。

2. データ量の把握
時系列要素を反映させるには、約3年分のデータが必要だと考えられます。
この長期的なデータの収集により、需要の変動や傾向をより正確に把握し、より信頼性の高い予測を行うことが可能となります。

【内部データ】
・過去データ:販売記録などは需要の傾向や季節的な変動を理解するのに役立ちます。
・生産データ:生産プロセスに関するデータは、生産計画の最適化に不可欠です。生産能力やリードタイムなどの情報が含まれます。

【外部データ】
天候、経済指標、政策変更、市場トレンドなどの外部要因データも考慮することが重要です。

3. 社内窓口担当の決定
需要予測モデルの構築には、AI開発会社の専門知識だけでなく、現場担当者の感覚や要望を組み込む必要があります。

このため、社内でモデル構築に関わる窓口担当者を決定することが重要です。彼らは現場のニーズや課題を理解し、それを開発会社に適切に伝える役割を果たします。

適切な窓口担当者を選定することで、円滑なコミュニケーションと効果的なモデルの構築が可能となります。

これらのポイントを押さえることで、効果的な需要予測を実現するAI導入が可能となります。

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執筆:Khanh Linh Tran 編集:平野 佑樹