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<読書日記>神様の裏の顔(藤崎翔)
あらすじ
神様のような清廉な教師、坪井誠造が逝去した。その通夜は悲しみで包まれ、誰もが涙した――と思いきや、年齢も職業も多様な参列者たちが彼を思い返すうち、とんでもない犯罪者であった疑惑が持ち上がり……。
ざっくりストーリー
偉大な人が亡くなった。
誰からも尊敬された、まるで神様のような存在である元教師の坪井誠造。彼の葬式からストーリーは始まる。
出席者のほぼ全員が泣いている葬儀は初めてだ。とは、葬儀会社のスタッフの弁。たくさんの人が出席する葬儀はあるが、そのほとんどの人が本当に悲しんでいる様子を見るに、素晴らしい人だったんだろうなと思いを馳せる。
中学教師だった坪井は校長まで上り詰め、引退後はNPO法人を立ち上げ、不登校児など居場所のない子供達が通える場所をつくりそこで教鞭をとっていた。その後は、破格の家賃で苦学生を助けるアパートの経営を行っていた。
父の姿をみて教師となった娘の晴美。他の教師から反感を持たれていた時も自分をかばってくれたと今でも尊敬する先生は坪井だと熱く語る、今はスーパーの店長となった教え子の斎木。学校では坪井と意見が合わなかったが、意見が合わなくても話を聞いてくれたと、体育教師のボスゴリラこと、根岸。木から下りられなくなった息子を助けてもらうなど世話になったと、お隣の香村。中学時代の生徒で学校に居場所がなかった中、校長室解放という方法で助けてもらいそこで勉強も教えてもらえたので高校にも進学できたという鮎川。
アパートの住人で売れない芸人の寺島だけが、あまり坪井への思い入れはなく、ネタの勉強がてら葬儀に出席していた。
出席者達が自分と坪井との思い出を語っていくうちにだんだんとその神様のようだと思われていた坪井の裏の顔が明かされていく。それはまるでパズルのパーツがうまくかみ合ってつながっていくことで、思いもしなかった絵が浮かんでくるように。
- 以下ネタバレあり -
感想
まず、作者が元芸人でおそらく世代が同じなのか出てくるミュージシャンがドンピシャ。
尾崎にジュンスカとか高校時代を思い出す。
それぞれの証言を組み合わせていくとだんだんと坪井が神様ではなく、悪魔のように見えてくる様はまるで白色優勢だったはずがどんどん黒色に変わっていくオセロのようで疑心暗鬼になっていく。
それを寺島が探偵の如く解き明かし、黒色を白色に変えていく時、心に坪井を疑った罪悪感を抱えることになる。
さらに、最後の最後に、え?そうだったの!?会話をしていた人数がおかしかったことに気づく。そして、そこには本当の悪魔がいたことがわかった時には、作り込まれているなぁ。と感心した。
なんとなくこのままでは終わらないだろうなとは思っていたが、その犯行というよりも、晴美と友美が・・・と言うところに気づけなかったと言うところに見事にだまされた。
そして、この作者の他の作品も読みたくなったのだった。