マヌヌ2号

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最近の記事

亡霊という言葉の特殊な用法

※本記事は、《死亡遊戯は飯を食う。》1~6巻のネタバレを含みます。未読のかたはご注意ください。    幽霊、あるいは亡霊。これらは現世に残された死者の怨念のことを表します。けれど「亡霊」という言葉には、ときに比喩的な意味が伴うらしく……。実体がないにもかかわらず、現実世界に影響を与える存在。いるのにいないもの。人はそういうもののことも亡霊と呼ぶ、そうです。  鵜飼有志『死亡遊戯は飯を食う。』はデスゲームを題材に取ったライトノベルのシリーズです。本シリーズの主人公である〈幽鬼

    • 弾丸旅行in岐阜

       今年の頭から、○月に旅行に行こう!→あ~もうええわ~家でゆっくりしよ~ の流れを毎月のように延々繰り返しており、さすがに、さすがにもう今月は行こうやと一念発起して、一泊二日の旅行に行って参りました。タイトルのとおり、行き先は岐阜です。一日目に大垣に泊まり、その後は岐阜市を経由して各務原へ行きました。  この旅行が思いのほかたのしくて、また行きたいなと思ったので、未来の自分が当時の自分を懐かしめるように、旅行の記録としてnoteを残しておきます。どうだ、おれよ、うらやましいだ

      • 空想家の点つなぎ

        物心つく前の、子どものころに読んでいた本なんてほとんど覚えていません。けれど、ここさいきん、ある一冊を思い出しました。点つなぎで絵を作る本。たしかこんな本でした。最低限の背景に無数の黒い点が打たれていて、それぞれの点の近くに数字が書かれている。1の点から2の点へ、2から3へ……と、若い順から点を線でつないでいくと、ひとつの絵が完成する。ぼくはどんな絵を見たんだっけね。  さいきん読んだ小説の影響で、点つなぎの本のことを思い出しました。連想が働いたんでしょう。その小説は『象と

        • 2024年の抱負、進捗

           この記事で当アカウントは2024年の抱負発表ドラゴンになりました。うそです、おれは人間です。  あれから半年、あの目標たちはいま、どのような進捗を産んでいるのでしょうか。今回の記事では、目標たちのその後を見ていきましょう。 ①出不精改善! どっか旅行する!  ……えー、進捗ないです。  これに関してはほんとうにおれという人間のずぼらさが遺憾なく発揮された結果となっており、残念でもなく当然といった感じ。ただ宿を取るという行動すらできないのはなぜなのか。その原因を調査するた

          追って追われて、また追って

           少し前に『冬期限定ボンボンショコラ事件』を読み終えました。今年に入ってから《小市民シリーズ》を読み始めた新参者なりに、美しい着地だったなと、一抹の感慨を得られた、いい読書となりました。そこで今回は、読後の感想めいた文章を、備忘録がわりに残していくことにしました。  ぼくは《小市民シリーズ》のことをキザな作品だと思っています。けれど嫌みったらしいとまでは思っていない。それなりに気取っていて、しかしその気取りゆえに痛い目にも遭い、常に世界と折り合いをつける場所を探している、そ

          追って追われて、また追って

          ポメラで文字を打つ

          インターネットの皆さんいかがお過ごしでしょうか。おれの住まう地域では桜の花もすっかり青葉に移り変わってきており、季節の移ろいをしみじみと感じています。いまくらいの気温が寝苦しくなくてたすかるので、このへんの温度帯を保ってほしい。まぁ確実にそうはいかないんですが。この先は暑い日が続くでしょうね。  今回の記事は、小説だの映画だのの話をするわけでもなく、マジで日記です。内容はシンプル。先日、中古品のポメラを購入しました。じゃーん。  なんでポメラを買ったかっていうと、長文をこ

          ポメラで文字を打つ

          テレパシーなんてなくても

           第26回電撃大賞金賞として『豚のレバーは加熱しろ』が出版された当時、正直なところ、ぼくはこの作品にあまり興味を持っていませんでした。「なんで豚?」とちょっと思ったくらいで、まぁ一発ネタだろうと内心侮りながら手を出す気になっておらず、そこから2年ほど、このシリーズを思い出すことはなかった記憶があります。  ぼくがこのシリーズを意識したのは、『豚のレバーは加熱しろ(6回目)』が刊行されたときでした。あらすじを見てみると、ヒロインが異世界で起きた殺人事件を捜査するとあり、しかもツ

          テレパシーなんてなくても

          錬帯

           Aが遺した手記が発見された。その一部には、錬帯について知っていると考えられる記述があった。当時、錬帯は発見されていなかった。Aは生涯妻子を持たず、Aの手記の存在を知るものは、Aと親睦の深いBのみであった。そのため、少なくない数の人間が、手記のなかの錬帯についての記述は、Aの死後にBにより追記されたものであると考えていた。Aが亡くなると、BはAの手記について多くの質問を受けるようになった。彼は、長年の間「自分はAの手記に携わっていない」と答えていたが、数年前に前言を撤回して「

          2024年の抱負

           を書いておこうと思い立ち、PCに向かったところでふと「抱負」って、「抱」はなんとなく意味がわかるけどなんで「負」って字が使われているんだろう……と思って検索してみたら、「負」が「負ける」ではなく「負う」の意味で使われているそうでした。心に「抱く」思いを発信することで「背負う」と考えると、なるほどしっくりくる熟語だなぁと思います。普段なんとなく使っている言葉も、成り立ちとか背景の知識を知ると、より身近な存在になるような気がしてくるので不思議なもんです。  ついでに抱負について

          2024年の抱負

          2023年度新刊ミステリ雑感

           昨年度はサボったんですが今年度は書く気になったので。内容はタイトル通りっす。なお、今年はあんま手が回らなかったので、ぼくが今年読んだ新刊ミステリ小説はぜんぶ国内で発刊されたものになっております。海外ミステリのおすすめがあれば教えてください。30%くらいの確率で読みます。じわれは結構当たるのでお気軽に(とはいえまぁnoteにコメントする数奇者はいないと思いますが……)。  以下につらつらと新刊ミステリの雑感を書いていきます。既読の新刊は太字で書きますね。  今年の新刊でいち

          2023年度新刊ミステリ雑感

          安藤直樹シリーズを読んだよ②

           鵼の解体ショーに付き合ったり、キタカミの地を縦横無尽に駆け回ったり、あとなんか普通にダラダラしてたら更新が遅くなりました。仕方ない。というかなんでキタカミ地方ではそこら辺の田んぼにハサミギロチン打ってくるザリガニがいるんですか。こわすぎるでしょ。試される大地じゃん。  閑話休題。続きものである本記事では『とらわれびと』『記号を喰う魔女』『学園祭の夜』『透明人間』の4作についての所感を書きます。ちなみに、ヘッダーに『とらわれびと』と『記号を喰う魔女』しか映ってないのは、電子書

          安藤直樹シリーズを読んだよ②

          安藤直樹シリーズを読んだよ①

           ここ半年くらい(もっと長期間か?)、小説などの活字本を読んではいるものの、感想を書くなどの出力行為をめっきりしなくなっており、そろそろTwitter(現X)での字数制限以上の文字数の文章を書けなくなりそうなので、リハビリがてらに最近読んでよかった小説のことをつらつらと書いていこうと思います。  ちなみにいまはオカルトめいた事件をめちゃめちゃ正気の神父が解決する短篇集と物語冒頭から女学生たちが河童について50ページくらい談義する長篇を併読しています。どちらもたのしい。  閑話

          安藤直樹シリーズを読んだよ①

          『平家物語 犬王の巻』と『犬王』のはなし

           前置きから。  筆者は数ヶ月前に『平家物語 犬王の巻』を読みまして、「なんだこの超絶傑作小説は」ともんどり打ち、『犬王』は絶対観に行こうと心に決めておりました。んでんで1週間くらい前に行っていたのですよ。いやー素晴らしかった……で終わるのも味気ないので、ふたつの物語のおもろかったところと、ふたつの作品のズレ(主に、結末の迎えかた、および友魚の在りかた)について、整理も兼ねて言語化しておこうかとおもいます。当然のように『平家物語 犬王の巻』および『犬王』のネタバレを含みます

          『平家物語 犬王の巻』と『犬王』のはなし

          手遊び(文舵 練習問題①〈文はうきうきと)

           お前も文体の舵を取らないか?  問1:一段落~一ページで、声に出して読むための語り(ナラティヴ)の文を書いてみよう。その際、オノマトペ、頭韻、繰り返し表現、リズムの効果、造語や自作の名称、方言など、ひびきとして効果があるものはなんでも好きに使っていい――ただし脚韻や韻律は使用不可。  遊ぶのだ、そう誰かから言われたとする。私がその言葉を受けてすぐに何でどのように遊ぼうかと思って身の回りのものから遊び道具を探し出すほどの積極性を持ち合わせた人間であれば手持ち無沙汰になるこ

          手遊び(文舵 練習問題①〈文はうきうきと)

          2021年度新刊ミステリよかったやつ10作(後編)

           本当は前編を書いた日の午後にでも書こうと思っていたのですが、だり~な~と小説読みながら先延ばしにしていたら1週間経っていて、自分の怠惰さにびっくりしました。超ウケる。前置きをダラダラ続けてもしょうがないので、さっそく続きを書いていきましょうか。 ◆◆◆ 三津田信三『忌名の如き贄るもの』 刀城言耶シリーズの長篇8作目。もうそんなに続いているのか……と謎の感慨がありますね。意味深長極まりない“忌名”の儀礼と、儀式を続ける一家・尼耳家、そして儀礼に纏わる不可解で非現実的な数々

          2021年度新刊ミステリよかったやつ10作(後編)

          2021年度新刊ミステリよかったやつ10作(前編)

           1年くらい前にtwitterでこういう放言をしたことがずっと頭の片隅にあり、 まぁ言ったからにはやるか~ってことで今年は例年よりよく新刊を読みました。おれが読む小説の多くはミステリというジャンルにカテゴライズされてることが多いので、今年読んだ新刊もたぶんだいたいがミステリだと思います。せっかくこんだけ新刊読んだんだし、よかったやつについて備忘録がてらに所感をざっと書いておきます。十進数に脳を毒されているのでキリよく10冊ピックして書きます。読んで「ほーん」くらいに思えて貰

          2021年度新刊ミステリよかったやつ10作(前編)