inquire代表・モリジュンヤさんに聞く、「これからのメディアの可能性」【前編】
こんにちは。カンバセーションズの原田です。
以前にnoteでも書いたように、カンバセーションズは、コンテンツ配信メディアから、共創のプラットフォームになることを目指してリニューアルしました。
その辺の経緯については、過去ポストをご覧頂きたいのですが、この投稿の最後に、
「カンバセーションズ」が「共創のプラットフォーム」になる方法とでも題して、ヒントを与えてくれそうな方たちにお話を聞きに行くという"裏カンバセーションズ"的な企画を、このnoteで配信してみるのも面白いかなーと思っています。
ということを書きました。
そして今回、早速そんなヒントをもらえそうな知人にお話を伺ってきました。
その人物は、inquireの代表として、さまざまなメディア運営などに携わっているモリジュンヤさん。
noteやTwitterなど、フォローしている方も多いかと思います。
モリさんと僕の出会いは、2012年頃。
当時、「PUBLIC-IMAGE.ORG」というWebマガジンの編集長をしながら、地域関係のプロジェクトにも関わり始めていた僕は、
地域をテーマにしたメディアやプロジェクトの可能性について、知人の編集者/デザイナーたちと話をする機会があり、
そこで当時greenz.jpから独立してまだ間もなかったモリさんと初めてお会いしたと記憶しています。
その後のモリさんのご活躍は多くの方が知るところかと思いますが、僕にとってもその動向が常に気になる編集者仲間であり、
僕が運営する「カンバセーションズ」や「◯◯と鎌倉」といったメディアプロジェクトに関しても、
メディアやSNSで紹介して頂く機会があり、貴重な応援者だと勝手に思っていた次第です。
そんなモリさんなら、きっと新生カンバセーションズに有益なアドバイスをしてくれるんじゃないかという期待を抱き、
8月の酷暑の東京のカフェで、1時間半ほどお茶をしながらお話をさせて頂きました。
まずは、改めてモリさんのプロフィール。
inquire Inc.代表取締役、社会をアップデートするクリエイティブポータル『UNLEASH』編集長、ライティングスキルの共有化を目指す『sentence』オーガナイザー。『greenz.jp』『THE BRIDGE』『soar』『マチノコト』など、様々なメディアブランドの立ち上げや運営に関わる。IDENTITY Inc.共同創業、NPO法人soar副代表、NPO法人マチノコト理事など。
では早速、そもそもなぜモリさんが、メディアや編集の仕事に携わるようになったのか、その辺りから聞いてみたいと思います。
モリ:学生の頃は、メガバンクの説明会とかに行っていたんです(笑)。
でも、当時はリーマンショックが起きた直後で、あえてこの時期に金融系にいくのもどうなのかというのと、
もっと小さい単位で、一緒に働く人たちを選べるようなベンチャー企業などをリサーチするようになりました。
やがてモバイルに特化した広告代理店などの存在を知り、
当時盛り上がり始めていたスマートフォンなどのテクノロジーや、ソーシャルメディアを活用したコミュニケーション領域に興味を持つようになったんです。
ただ、自分が興味を持てない分野の仕事はできないと思っていたので、
広告代理店などで働くよりは、ジャーナリストやメディアの仕事が合っていそうだなと考え、
自分の関心や趣向に近かったgreenz.jpで1年間働くようになり、SNSの運用やライターさんとやり取りしながら記事を制作していく仕事などをするようになりました。
1981年生まれの僕は、ちょうど雑誌からWebへとメディアの主戦場が移行する時期に編集者として活動してきましたが、ざっくり
雑誌編集者→コンテンツ、メッセージ重視型
WEB編集者→コミュニケーション、コミュニティ重視型
という特性があるように感じています。
もちろん個人差はありますが、編集者に求められるスキルもまた、メディアの変遷とともに大きく変わってきています。
そうした意味で、greenz.jpからキャリアをスタートさせている1987年生まれのモリさんもまた、編集者への入口は後者だったと言えそうです。
モリ:2008年頃に、コバヘン(小林弘人)さんが『新世紀メディア論』という著書の中で、「メディアの価値はコミュニティにある」と書いていて、面白いなと思ったんです。
ソーシャルメディアを使うとコミュニティをつくることができ、関心ある人たちと繋がりやすくなると言われていた時期だったこともあり、
WebメディアもSNSなどを上手く使ってコミュニティがつくれると、もっと色々なことができるんじゃないかと考えていました。
やがて、フリーランスになったモリさんは、自らが関心を寄せていたソーシャルセクターや社会起業家の多くがシリコンバレー発の人材やテクノロジーと密接に関係していたことから、
テクノロジーやスタートアップ界隈に活動領域を広げていったそうですが、当時は編集者としての自分の役割をどのように認識していたのでしょうか。
モリ:greenz.jp時代に、会社を立ち上げた知人などからメディアで取り上げてほしいという連絡をよくもらっていました。
彼らの取り組みや熱意を拾って届けられるといいなと思いつつ、当時はgreenz.jpの枠にはまらないものを紹介するのは難しかったんです。
やがて、もっと色々なテーマやメディアに横断的に関わりながら、自分がハブ的な存在になっていくことで、
取り上げられるべきものを適切な場所にアウトプットしていけるようになるんじゃないかと考えるようになりました。
個人がメディアになると言われる時代において、モリさんは領域やメディアを横断する媒介役になることで、文字通りそれを体現してきたわけですね。
そんなモリさんが、inquireを立ち上げたのは、2015年の秋頃だったそうです。
モリ:自分の名前だけで仕事をするのではなく、もう少し記号性を高めて、会社としてのブランドや信頼性を育てていかなければ、
これ以上、仕事の幅が広がらないかなと感じるようになったんです。
自分が関わっているプロジェクトを成長させたり、新しいことをやろうとした時に、
コアの部分のパワーを高めていく必要性を感じて、チーム化という道を選んびました。
inquireという会社名は、モリさんが編集者として掲げているふたつの活動テーマに由来しているそうです。
1.問いの投げかけ
2.テーマの探求
メディアの編集からインタビューまで、一貫してこれらのテーマを追求しているというモリさんですが、
ここでは、メディアを通してこれらを実践する意味について聞いてみました。
モリ:まず、「問いの投げかけ」という観点から言うと、
メディアというのは、現場のプレイヤーたちに対して、
こんなこともありえるんじゃないか? というスペキュラティブデザイン的な問いを投げかけ、考えてもらうきっかけをつくる役割が果たせるのではないかと。
また、「テーマの探求」に関しては、プレイヤーたちは情報収集よりも実践にリソースを当てていることが多いので、自分たちメディアが媒介役となり、関連する領域の周囲の動きなどを共有することもできるかなと思っています。
モリ:さらに言うと、メディアが日頃から行っているリサーチ自体にも価値があると思っています。
例えば、リサーチ専門の会社は、フィールドワークやインタビューなどに1、2年を費やしてレポートを作成することがあります。
移り変わりが早いこの時代に、それだけ時が経てば状況は大きく変わってしまし、せっかく面白い情報が集まっても外に出せないケースも多い。
だからこそ、メディアを運営する立場としては、
いかにプロセスを共有し、コンテンツ化していけるかという観点は常に持っておきたいし、それが大きな価値になると思っています。
一般的にメディアに求められているものは、さまざまな情報を収集し、適切な形で編集し、広く伝達していく媒介としての役割です。
ただ、メディアの運営に携わっていると、こうした役割以外の価値や可能性が見えてくることがあります。
例えば、いまモリさんが話してくれたプロセスの共有やコンテンツ化、あるいはリサーチャーとしての役割です。
そして、これらはすべてカンバセーションズが今後実践していこうと考えていることともピッタリ合致します。
さあ、いよいよ核心に近づいてきました。
が、だいぶ話が長くなってしまったので…、この続きは、次回後編でお届けしたいと思います!