UBC留学体験記〜Term1振り返り〜
12月12日を以てTerm1のexamがすべて終わり、いよいよ冬休みが開始しました⛄️!今回はTerm1に履修していた3つの授業について、それぞれレビューを書いていこうかなと思います。え?3つ?少ない?課題のworkloadが日本の授業の3倍くらい(+英語)なので、日本にいた時と同じくらいの勉強量だよ☆何なら留学先の方が勉強大変だよ☆
①Political Geography (Geography)
地政学または政治地理学と訳されます。リアリズムの再来(または新しいリアリズムの出現)が唱えられている近年において、地政学はホットトピックです。朝、目が冴えている時間帯に授業があるので、この授業が一番集中して聞いていました笑
この授業ではfinal examの代替として、グループプレゼンという名の個人プレゼン(エッセーと同じトピック)がありました。私が選んだグループのトピックは「中国が支配する世界は平和的になるか否か(実際の問いでは仮定法wouldを使用)」というものでした。私は結論部を担当したので、個人パート3分+結論1分の計4分を話しました。正直かなりセンシティブなトピックの上、個人的な政治観やバイアスに影響される可能性がかなり高く、さまざまな立場や状況のクラスメートたちがいたので、内容には悩みました。結局問いに対する答えとしては、明確にYes/Noを示さず、視点によるという無難な結論で締めくくりました。しかし、それは問題に正面から挑まず、逃げの選択肢だったのではないか、もっと深く追究できたのではないか、と今も悶々とした気持ちを抱えています。
普段の授業では軽いディスカッションがこまめにあり、個人の経験や感想を共有し合うのが面白いと感じました。たとえば、アメリカ大統領選挙及び連邦議会選挙に関する回では、アメリカ・カナダ・日本(私)と、それぞれの出身地での選挙の影響について話し合いました。アメリカ人(カリフォルニア出身)のクラスメートは共和党でも民主党でもない少数政党に投票しており、二大政党制では影が薄くなりがちな少数政党の存在について、改めて思い出されました。このように、インターネットや新聞記事などの二次情報ではなく、問題に直接関係する当事者から一次情報(やや不正確な言い方ですが)を得られたことは、大きな学びだったと思います。
②Modern Middle Eastern History (History)
近現代中東史に関する授業です。こちらも、2023年秋から激化したイスラエル-パレスチナ紛争やジェノサイド、シリアのアサド政権崩壊など連日ニュースをoccupyしている話題です。この授業にはグループワークはなく、課題はすべて個人のエッセーによるものでした。
この授業の内容は個人的に大変興味深く、意義深かったと感じています。'modern'という概念に着目し、中東の人々にとって’modern’とは何を意味するのか、modernizationの過程の中で中東の人々はどのような葛藤を抱いたのかについて、歴史的な文脈で考察しました。この問いは、中東を、紛争が絶えず、前近代的なイスラム教を信奉し、男尊女卑が激しい地域だとする西洋中心史観に疑問を投げかけます。
欧米出身のクラスメートも多い中、中東史について議論を重ねる中で、日本についても再考する機会を与えてくれました。日本は植民地化は免れましたが、「開国」を機に江戸幕府は倒幕し、大政奉還がなされ、明治政府が発足しました。1956年の国連加盟の際、重光外相は演説の中で、日本は「東西のかけ橋(a bridge between the East and the West)」だと言及しました。以後、この方針が日本外交の底流にあります(おそらく)。
中東と東アジアは、同じ非西洋・非白人であり、西洋という「外圧」によって近代化(西洋化?)を迫られた歴史を共有しています。中東のmodernizationの過程と、清朝の「中体西用」や日本の明治維新と比較して、共通点と相違点が見出されました。共通点は、上意下達の改革手法です。改革の内容は工業化や官僚制など、物質的な側面では近代化を図ったものでしたが、そのやり方は封建的な階級システムに依拠していました。一方、大きな違いはやはりイスラム教と植民地化(保護国化含む)の影響です。東アジアと比べて中東は地理的に欧州に近く、植民地の統治方法がより直接的なもので干渉の度合いが高く、それが火種となって現在に至るまで紛争が続いています。
また、中東におけるフェミニズムの発展について注目してみると、興味深い事実が観察されます。イスラム・フェミニストはイスラム教の教義、すなわち聖典『コーラン』やイスラム法『シャリーア』などに厳密に則れば、イスラム教は男女平等を支持していると主張します。フェミニストたちはイスラム教の枠組みの中でナラティブを形成し、時の政府を説得しようと試みたのです。このように地域の特色に合わせて、思想が独自の形態で発展したのは面白いですね。
③Death of Democracy? (Political Science)
民主主義の後退が叫ばれている昨今、民主主義とは何か、民主主義の後退の原因は何か、それに対してどのように対処すべきか、というテーマについて取り扱う授業です。直近では韓国の尹錫悦大統領による戒厳令宣布、及び議会における弾劾案可決などが話題となっています。
近年の研究では、民主主義の後退の原因の一つとして、polarization(分極化)がよく指摘されます。これは私自身、交換留学中の大学生として、耳が痛い話です。さまざまな価値観やバックグラウンドを持つ人と交流して視野を広げたい、というambitionを抱いて大学に入学したり、留学したりする人は大勢います。しかし、実際はサークルやバイト先など安定したコミュニティを求めて、結局は自分にとって居心地の良い空間に閉じこもることはよくあります。多様性を尊重しようと口では簡単に言えても、実際に態度や行動で示すことは難しいです。
民主主義は政治の世界だけでなく、身近な人間関係においても発生しています。家族、友達、恋人、部活やサークル、学校のクラスや職場など、あらゆる人間関係には力関係があり、常に緊張状態を孕んでいます。たとえば旅行の計画を立てる時、目的地や宿泊先を決める時の意思決定プロセスはエリート政治だったり、権威主義(≒独裁主義)だったりします。
東アジアで民主主義に関して記憶に新しい出来事は、2019-2021年頃にかけて発生した香港における抗議デモです。どれだけ苦難の道を歩んで民主化を達成したとしても、どれだけの努力を積み重ねて民主主義を維持したとしても、民主主義はいとも簡単に崩れ去ります。国際情勢を見ると、民主主義がいかに脆く崩れやすいかについて、骨身に染みて感じます。
まとめ
Term1で履修した科目はすべて300番台(3年生向け)だったので、内容と英語力の両面で指数関数的に成長できたように思います。UBCは冬休みが2~3週間と短く、そろそろTerm2の履修を考えなければいけない時期に差し掛かっています。Term2では、言語学や文化人類学など、一橋では履修が難しかったり、UBCで有名な学問などを(門外漢ですが)履修してみようかなと考えています。
読んでくれてありがとう❣️arrivederci🇮🇹