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月経のデザイン1〜月経と開発体験〜
エロくない下ネタシリーズ。
私は限界インハウスUIデザイナー。開発体験を上げるには、何を改善すれば良いかを考えたいたときに、月経の存在に思い至った。
個人の幸福ではなく生産性を目的に見ていくので、表現が無機質になっている。(お約束とはいえ)Twitterで感情的な言い合いを見て嫌になっていた所なので、ちょっと引いた目線で書いてみる。
生産性の低下
月経と開発体験
IT業界には「開発体験」という言葉がある。
開発者にとって働きやすい環境や組織文化があり、担当するソフトウェア(システム)を気持ちよく開発・保守できるかどうか
よくある、開発体験が低い状態の要因は以下。
長年の技術的負債によって改修コストが増加
最新のドキュメントが揃っていない
意思決定ルートが妥当でない
コミュニケーションが希薄で、心理的な安全性が担保されない
フラストレーションが溜まることで早期離職が相次ぐ
これらに加えて、月経の体験向上も、生産性向上の大きな伸び代になり得ると思った。
月経の症状の例
生理前や生理中に感じる症状は、「腹痛」(71.3%)が最も多く、次いで「腰痛」(55.8%)、「イライラ感」 (55.6%)、「頭痛」(45.9%)、「眠気」(44.4%)
人材の選択肢が広がる
月経のせいで生産性が落ちる人を、そもそも人材として採らなければ月経について考えなければ良いのではないか?公には出来なくても、実際そういう採用をする企業も当然いると思う。
ただ、月経は若年層の人間の半数近くが該当する問題なので、欲しい人材が月経を抱えている可能性は大いにあるだろう。人材の選択肢が広がった方が企業にメリットになるのではないか?
心理的安全性が損なわれる
生理痛やPMSで辛いときに、周りの人に伝えるかと聞くと、49.8%と約半数が「伝えない」と答えました[図2-1]。
伝えない理由は、「症状やその辛さを表現しにくいから」(27.9%)、「相手にわかってもらえないと思うから」(26.5%)など“伝えにくさ”を理由とした回答…
「月経について周りに伝えない」という行動を生産性の観点で考えると、心理的安全性の懸念が考えられる。
心理的安全性が高い状況であれば、質問やアイディアを提案しても受け止めてもらえると信じることができ、思いついたアイディアや考えを率直に発言することができます。例えば、旧来の手法への提言や革新的なアイディアについてオープンに話し合える雰囲気がある組織は、心理的安全性が高いといえるでしょう。Googleが「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」との研究結果を発表したことから注目されており、心理的安全性を高めることで個人や組織の効果的な学習や革新につながると期待されています。
社会的意義
今更語るまでもないが、少子化が深刻化している。労働力として人間を見たときに、その約半数が月経によって生産性を低下させているとしたら、社会として無視できない課題になってきそうだ。
また、はじめて月経を迎える年齢は、12~13歳が平均であり、当然、学校教育にも影響する。今の私たちが子供たちの月経にどう向き合うかが、将来の生産能力を左右すると言っても過言ではない。(過言か?)
月経の影響範囲
課題を見つけたとき、その課題について考えるかはその重要度による。目に付いた課題をいちいち深く考えていたら寿命が足りない。月経について考えるか否かの判断材料として影響範囲を考えてみよう。
生産性に影響が出ている人
月経に関する症状には個人差がある。重い症状の人、軽い症状の人それぞれで、月経の課題を解決した際の生産性の高まり方は異なる。
しかし、症状が重いか軽いかは主観になってしまうので、月経を体験する人のうち、何割の人が特に重い症状を抱えているのかが見えにくい。そしてその症状を、当事者自身が客観的に把握する事ができない。
生理痛やPMSに対する捉え方を聞くと、 「生理に伴う症状の重さが正常なのか異常なのかがわからない」(67.5%)、「自分の症状の程度が客観的にわからない」(67.1%)、「他の人の生理痛やPMSがどのような症状・辛さかはわからない」(65.4%)という回答が多いことがわかりました。自分自身の症状の程度が客観的に把握できていない、他の人に対してもわからないという状況
同調査で、主観的な重さの割合はこんな感じ。あてはまると回答した人の割合
「座っていれば、仕事・勉強・家事は何とかこなせる」66.3%
「薬を服用しなくて済むくらい」50.7%
「動けないほど痛かったり辛いことがある」40.8%
「痛み止めは生理のたびに服用する」39.9%
「一日中横になっていることがある」36.9%
「症状が辛くて予定をキャンセルすることがある」35.2%
どうやって集めてきた人たちなのかが分からないので、正確なことは分からないが、「一日中横になっていることがある」「症状が辛くて予定をキャンセルすることがある」人が、自分と同じチーム内に居たら生産性はかなり下がりそうだ。
あくまで主観を回答したアンケートだが、
生理の影響で 75%の人が「仕事の効率低下」を感じ、
〜中略〜
仕事の生産性は 64%に低下
どの調査でも、月経がある人のざっくり「半分強」くらいが生産性の低下を主観的に感じている。
また、特に重い症状は、医療機関で「月経困難症」と診断される場合がある。
機能性月経困難症は、月経の血液を排出するために子宮を収縮させる物質であるPG(プロスタグランジン)の分泌が多すぎて子宮が収縮しすぎることや、頸管(子宮の出口)が狭いことが痛みの主な原因です。大部分の月経困難症がこれにあたり、初経を迎えた2~3年後から起こることが多いです。
生産性に影響が出る時間
人の次は時間について。
1 回の生理で平均 4.85 日、年間で約 60 日影響を受けている。
この話を見て、「4.85 日 × 12ヶ月=58日」と計算してしまいそうになるが、以下、いくつかの罠がある。
まず、(一般的に)月経の周期は30日ではない。
月経周期とは、月経開始日から次の月経の前日までの日数ことをいいます。
一般的な教科書では28日とされることが多いですが、正常な月経周期は25~38日です。
28日周期の人は、12回ではなく13回月経が来ている計算になる。
「365日 / 28日周期 × 4.85 日=63 日」
また、月経期間の前にも月経前症候群(PMS)と呼ばれる症状があるので、月経の日数以上に影響を受けている時間は長い。
月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経開始とともに軽快ないし消失するものをいいます。
〜中略〜
精神神経症状として情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下、睡眠障害、自律神経症状としてのぼせ、食欲不振・過食、めまい、倦怠感、身体的症状として腹痛、頭痛、腰痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどがあります。とくに精神状態が強い場合には、月経前不快気分障害(premenstrual dyspholic disorder : PMDD)の場合もあります。
以下、アンケート
「毎回感じる」61%
「たまに感じる」34.6%
「感じた事がない」3.8%
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000124.000002943.html
症状は、いつ頃から感じはじめますか?
「感じた事がない」3.7%
「20日〜17日前」1.4%
「16日〜14日前」6.6%
「13日〜10日前」13.6%
「9日~6日前」29.9%
「5日~3日前」29.2%
「2日〜直前」15.6%
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000124.000002943.html
おおむね、3〜10日という話と合致はする。ただし、月経前症候群も月経と同じく個人差が大きい。
3〜10日の間を取って6.5日だとすると、月経前症候群の影響を受ける時間は
「365日 / 28日周期 × 6.5 日=84 日」
月経63日/年、月経前症候群84日/年を合計すると、月経の影響を受けている日数は、だいたい147日/年となる。
参考
女性特有の月経随伴症状による労働損失は4,911億円と試算
ほえ〜…ちょっと額が大きすぎて、妥当な数値なのか改善できるのか分からん。
改善された状態とは?
月経の個人最適化
症状に個人差があり、経済的・人間関係的・情報的さまざまな要因から構成されている環境にも差異がある。その中で、個人個人に最適な月経との付き合い方を見つけて、改善していけるとより良い体験から、より良いものを生産できるようになりそう。
※次回詳細に扱う
心理的安全性が守られたコミュニティの構築
企業、家庭、学校、社会…で心理的安全性が守られている状態でないと、「月経への理解」なんて到底無理な話だと思う。以下の不安を感じない状態で、自由に発言・議論できる空気感を作っていかないと状況は好転しないと思う。
■エドモンドソンの「4つの心理的安全性を損なう要因と特徴行動」
(1)無知だと思われる不安(Ignorant)
(2)無能だと思われる不安(Incompetent)
(3)邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)
(4)ネガティブだと思われる不安(Negative)
固定概念に振り回されない
私の耳に入る話はどれも「女性」「男性」という属性にこだわり過ぎだと思う。再三書いたが、症状には個人差があるので「女性」を主語にしてしまうと、問題の本質を見失う。「私だって我慢しているのに、病気なんて言うのは甘えだ」と言って同性で足を引っ張り合うのもくだらない。
生産性を考えれば、病気なら病気という状況を把握し、治療をした方が良い。我慢・放置して良いことはない。
また、「女性」だけを重視するのは、全体最適にはつながらない。個人の思想は色々あるだろうが、属性関係なく個人がパフォーマンスを発揮できる状態を目指すのが、その集団の生産性という観点で見るとあるべき姿だと思う。
次回:月経の個人最適化
追記
厚生労働省の資料を見つけたので引用
② 国内における高校生を対象とした PMDD リスク因子調査の結果から、PMDDの約 4 割が月経前症状により学校を欠席していた。
日本人女子高校生を対象とした調査(解析対象 901 例、仙台の 15 歳~19 歳
の女性高校生、2009 年 10 月)において、3.1%(28 例)が PMDD であり、うち 42.9%(12 例)が月経前症状により学校を欠席したことがあると報告している【要望書文献 2】。
③ 国内における就労女性を対象とした横断研究から、就労女性の 45%が PMSや月経随伴症状により仕事のパフォーマンスが半分以下になると自覚し
ている。
調査会社のパネルのモニターである全国 18 歳~49 歳のフルタイムの正規社
員・職員およびフルタイムの契約社員・職員、派遣社員・職員女性 2,000 名
に対し、2018 年 2 月 2 日~8 日、インターネットによる調査を実施した。PMSや月経随伴症状といった、月経周期に伴う心身の変化による仕事のパフォーマンスの変化を比較したところ、元気な状態の仕事を 10 点とした場合、半分以下になると回答した人が 45%であった【要望書文献 3】。なお、調査対象はPMDD とは限らないものの、PMS で精神症状が主体で強い場合は PMDD と呼ぶことから、本根拠に含めた。
p2〜3