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【 noteで学ぶ 世界の名画とアート思考 】 夢と恐怖が交錯する『 サイクロプス 』 — オディロン・レドンが描いた神話と人間の心

= どんなnote? =

このnoteでは、僕自身が学んだ

『 5分でサクッと学べる世界の名画の読み解き方(アート思考) 』

を、僕の備忘録もかねて毎週1つ紹介しています。

みなさまの何か1つのヒントになれば幸いでございます…。ぜひ一度ご覧ください!


= そもそもアート思考って? =

色々と言われてはいますが、

① 過去の状況を理解し、

② その中にある問題点や疑問を発見し、

③ これまでに無い新しい価値観や方法を提案する

思考法と僕は理解しています。ここを意識しての名画を観察すると、“ あ!この名画はこういう観点でアート思考を取り入れているんだ! ”と理解しやすくなるので、おススメでございます。


= 今週の名画:サイクロプス =

孤独な少年の幻想世界が生み出した『サイクロプス』

19世紀末に生まれた幻想的な絵画『サイクロプス』。この作品を手掛けたオディロン・レドンは、幼少期に自然や空想の世界に深く没頭したことが彼の作風に影響を与えました。病弱で孤独な子供だった彼にとって、描く行為は現実を超えた夢の領域への扉だったのです。そして、そんな背景から誕生した『サイクロプス』は、ただの奇怪なモンスターではなく、人間の内面を映す鏡として、多くの芸術家や観賞者に影響を与え続けています。



レドンの世界観と『サイクロプス』が革新とされた理由

『サイクロプス』に描かれる巨大な一つ目の怪物。一般的な神話では恐怖や破壊の象徴ですが、この作品の怪物の眼差しには、驚くほどの「哀愁」と「優しさ」が込められています。暴力的な印象ではなく、むしろ自らの存在に悩むような複雑な感情が伝わってくるのです。

レドンは象徴主義という芸術運動に影響を受けつつも、それを単なる宗教的・神秘的な表現に留めませんでした。彼は夢の中でこそ本当の「自由」を見いだし、従来の芸術が持つ意味やテーマの固定概念を解き放つ革新性を追求しました。この自由な解釈が、20世紀に登場したシュルレアリスムに影響を与え、夢や無意識を探る後進の作家たちの道標となったのです。



技術的にも革新的だった光と色の使い方

『サイクロプス』の芸術的な革新性はその技術にも現れています。レドンは水彩やパステルを組み合わせ、独特な混色技法で生き生きとした幻想的な世界を創出しました。明暗の対比を巧みに操り、怪物の存在感を引き立てつつ、背景の洞窟や森には静謐な雰囲気を漂わせています。

さらに、色彩の選択にも彼の独自性が伺えます。他の19世紀末の象徴主義作家が重厚で暗いトーンを選ぶ傾向にあった中で、レドンは軽やかで鮮やかな色調を取り入れ、夢と現実の境界を曖昧にしました。この技術は、後の世代にも大きな影響を与える美的感覚を育んだのです。



時代背景が作品に込めたメッセージ

19世紀末のフランスは産業革命が進み、科学技術が急速に発展する一方で、精神性や神秘を追求する動きも見られました。その中で象徴主義が興隆し、文学や美術の分野で多くの傑作が生まれます。

『サイクロプス』もこの象徴主義の潮流を受けながら、ただの神話的な再解釈にとどまらず、人間の内なる不安や恐れを描き出す新しい挑戦を行いました。神話的モンスターを通して「未知なるもの」に挑むその姿は、読者や観賞者自身の内面とも深くつながるテーマとなっています。


同時期の巨匠たちとの違いを超えて

『サイクロプス』が誕生した頃、同時代の画家クロード・モネが「睡蓮」を完成させ、自然と光を探究する作品を発表していました。また、ポール・セザンヌの「大水浴図」やグスタフ・モローの「ヘラクレスとヒュドラ」など、象徴主義や印象派の流派で独自性を模索する動きがありました。

しかし、レドンの『サイクロプス』は、それらの作品とは異なり、「内面的な世界」へと踏み込んでいます。モネの「睡蓮」が自然の美や移ろいを視覚的に表現したのに対し、レドンは人間の精神や感情の複雑さを探索し、抽象的ながらも深い物語性を持たせたのです。この内向きの視点こそが、彼の真髄といえます。



今こそ再び注目されるべき『サイクロプス』

『サイクロプス』は現在、個人蔵に所蔵されており一般公開される機会は少ないものの、再びその意義が見直されるべき作品です。この時代、人々がAIやバーチャルリアリティを介して現実と夢を模索する中、レドンが描いた「曖昧で多義的な感情表現」は、非常に現代的なテーマといえます。

読者の皆さんも、この作品から自由な解釈を見出し、自分自身の内なる問いに向き合ってみてはいかがでしょうか?『サイクロプス』は、その曖昧さゆえに、観る人ごとに違う「物語」を語りかけてきます。


終わりに

象徴主義の革新を体現したオディロン・レドンの『サイクロプス』は、内面的な恐れや哀愁を映し出し、観る者に深い余韻を残します。この時代を超えたテーマ性は、今日の私たちにも共感を呼び起こす作品となるでしょう。

(※『サイクロプス』に関する情報や一般公開についての最新情報は、各地の美術館や関連イベントをご確認ください。)


* 引用

イノベーション創出を実現する「アート思考」の技術

「自分だけの答え」が見つかる 13歳からのアート思考

アート思考 ビジネスと芸術で人々の幸福を高める方法


= あとがき =

noteをご覧いただきありがとうございます。

会社員の傍ら、上海で塗り絵本作家になりました、KENTA AOKIと申します。日本・中国を拠点に、個展をしたり、アジアやアフリカの子供たちと塗り絵イベントを行ったり、塗り絵本を出版したり、そういった作家活動を行っております。

作家活動を進める中で、美大卒でもない、若輩者の私は、“ アート ”に関して日々色々なことを学び、そのうえでアート作品を創るようにしております。というのも、“ 美大卒でもない ”というのが結構コンプレックスなんです。

ただ、そんなことを続けていく中で分かってきたのは、

「 アートを学ぶ方法って色々あって、美大の知識は勉強したらつけられるかも!? 」
「 アートって実は科学的かつ論理的で、むしろ理系向きかも!? 」
「 アートを届けるには、ビジネスの知識も必要なんだな 」

でした。

学べば学ぶほど、アーティストだけが“ アート ”を学ぶ・理解するのは非常にもったいないなと思ったのと同時に、もっともっと“ アート思考 ”を応用すると、おもしろいものやサービスが生まれるんじゃないかと思いました。

日々本を読み、実戦しながら、学んでいる僕がこれらを伝えていくことで、よりリアリティを持って、学びが共有できたら嬉しく思います。僕と同じ境遇にある方々に届き、共感頂けたら更に嬉しいです。

今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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KENTA AOKI @ 会社員 × 塗り絵作家 × ビール愛好家
頂戴いたしましたサポートは、インドネシアやタイの子供たちに塗り絵本を送るための活動資金に活用させていただきたいと思っております。 何卒よろしくお願い申し上げます。