うどん一杯2,077円⁉︎ 「博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか」
福岡はラーメンよりうどん県?
福岡、博多ときくと多くの方が思い浮かべる麺料理は
「ラーメン」それも「豚骨ラーメン」であると思います。
しかし地元では「ラーメンよりうどん」と、うどんが愛されており、ソウルフードであり、より身近な存在であることを知る人はまだ多くはないでしょう。
本日は「博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか」という本を通して、福岡のうどんについて考えてみます。
ただし本書は「博多うどん」といっていますが、福岡は博多に留まらず、幅広くうどんが根付いているので、あえて「福岡うどん」と呼びたいと思います。
広まらない福岡うどん
表題の「2,077円」は、都心にて福岡うどんを食べるとして、著者によって試算された価格です。
「福岡はラーメンよりうどん」
このように語る地元の方は少なくありません。
しかし実際にこの事実が人口に膾炙していない理由として、
福岡のうどんを食べられる機会が現地以外において、非常に難しい
ということが挙げられます。
例えば、国内外のあらゆる料理店がひしめく東京都心という環境においても、残念ながら(過去には存在していたようですが)、福岡うどんを食べられるお店は数少ないようです。
なかなか広まらない理由として例を挙げると、
1.福岡のうどん麺は讃岐うどんのようにコシのあるものではなく、時間も30〜40分程度は茹でるので、それに適した麺を作る必要がある。
2.もし製麺からの設備投資をすれば8億円ほどの資金が必要となる。
3.またラーメンのような強固なビジネスモデル(麺やタレ、厨房機器メーカーなど)が成立しておらず、博多ラーメンを出店するようなワケにはいかない。
上記の様な理由に加え、店舗の賃料、人件費等を考えると、
現地では300〜400円代で食べられる一杯が2,000円を超えてしまうという。という表題のような価格になってしまうのが著者による試算です。
そのような事情から著者曰く、福岡のうどんは二つの意味で「来ない」
一つは福岡うどんのブームが「来ない」
もう一つは東京にもお店が「来ない」
すると他の都市にも当然「来ない」ということになるでしょう。
福岡うどんとは
写真は、福岡筑後地方のうどんです。ごぼう天のトッピングは人気があり、さらに甘辛く煮た牛肉がのった「肉ごぼう天うどん」は、肉の煮汁がダシと相まって美味です。
また多くの方は鶏肉の混ざった「まぜめし」も同時に注文します。
その福岡のうどんですが、特徴として「麺がとても柔らかい」ことが挙げられます。コシが強い讃岐うどんの対極といってもよいかもしれません。
なぜ「麺がが柔らかいのか」それには幾つかの説があるようです(https://www.nakagawaseimen.co.jp/mennituite19.htm参照)。
1.福岡はうどんの発祥の地だが、承天寺を開き、うどんとそばを日本に伝えた聖一国師が伝えたうどんはもともとやわらかいうどんであったという「うどん発祥の地」説
2.福岡はだしに、鰹節や昆布、あご(飛魚を乾燥させたもの)などを使用しておいしいだしをとり、だしと一緒にうどんを食べるためやわらかいという「だし重視説」
3.博多っ子はせっかちで店で注文して食べるまでに時間がかかるのを嫌うため、茹で置きにしておいたやわらかい茹でうどんを使うのが一般的になったという「博多っ子せっかち説」
どれも可能性としてありそうです。
福岡のうどんをラーメンから考えてみると
ところで話は少し逸れますが、
いまや全国的な認知度となった博多ラーメン。
その特徴といえば皆さん御存知のように細麺で、替え玉をするということですよね。
ではそもそもなぜ替え玉をする文化があるのかというと、
麺が細麺なので、伸びやすいから少量提供して、さらに追加で麺を提供する。
のが理由であるとされていますが、
それでは
そもそもなぜ「細麺」なのだ?
というと、
福岡の人の気質がせっかちで、茹で時間が長いのを待ちきれない。
と一説にはいわれています。
九州ラーメンはそもそも久留米が発祥とされており、
九州を福岡から鹿児島まで縦断する国道3号線を南下しながら各地へ伝わって行き、また各地で少しずつモディファイされながら広まっていったという説があります。
その際にラーメンを広げるのに貢献したのが、国道3号線を走るトラック運転手であるといわれており、いかに早く食べられるかが重要視されたことも理由とされています。
その結果、茹で時間が短い細麺になったというのです。
このラーメンの歴史から考えるても、福岡うどんの麺が柔らかい謎の理由の一つ「福岡人せっかち説」は説得力が増しますね。
【まとめ】
福岡のうどんは、現地に足を運ばなければ食せないローカルフードの一つという存在であることから、そのどこででも気軽に食べられない不便さこそが、またその価値を高める良さなのかもしれません。
というわけで、福岡のうどんを食したことのない方は、福岡へ行かれた際に是非召し上がって戴きたいと思います。
【参考資料】
書名:博多うどんはなぜ関門海峡を越えなかったのか
著者:サカキ シンイチロウ
出版社:ぴあ
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