拒絶~「保つ」ための受容と拒絶~⑥

第2節 カフカの「変身」から考える食の拒絶と死

 私たちは食べることを当たり前のこととして普段生活しているが、時折、食欲がなくなり、食べ物を体が受け付けなくなる場合があるとこれまでに述べた。

グロテスクなものを観たとき、眠いとき、下品とされる言動を聞くもしくは見たとき、嫌なことがあって落ち込んでいるときなどが挙げられる。

これは先ほど述べたように食べるということは生命を取り込むことであるという件と大きく関連があるのではないかと考える。

しかしどうしてそれが食の拒絶につながるのか理解するのは難しい。
よって、このことを具体的に考えるため、食の拒絶について緻密に描写されている書であるカフカの「変身」を用いてより詳しく考察をしていく。


この物語は、主人公がある日突然巨大な虫に変身し、会社の人に見放され、途中までは面倒を見てくれた家族にも徐々に拒絶され、最終的には死に至るといった内容のものである。

主人公のグレゴール=ザムザは人間と同じ食べ物を受け付けない体になり、腐ったものを好むようになる。

その後徐々に食を拒むようになり、死に至る。

グレゴールは起こる出来事と共に徐々に食を拒むようになるが、それは彼が世界にいる意味を成り立たせていた職場の人間や家族が互いに拒絶しあったことが要因であると考える。

家の中、家の外といった物理的な外と内とは別に、グレゴールの内部にある「内」と「外」と置き換えられると考える。

彼は家族以外の人間を信頼しておらず、家の外の世界を拒んでいた。

しかしグレゴールは虫になる前はしかし彼は自分の内の世界である全てであった家族とも互いに拒絶しあうようになる。

これらのことを、身体的な死とは別の「死」と置き換えて考える。具体的には、社会的な「死」、家族関係の「死」である。

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