気がつけばカフェの女房〜妻としてどう在る〜
飲食素人の夫が始めたパンケーキカフェの物語。
もっと飲食素人の妻からの偏見で書いていきます。
店舗を契約したら夫がイキイキし始めた
店舗が決まり、夫は店舗で過ごす時間が増えました。
それまでは、自宅の部屋にこもってYoutubeか
同じく悠々自適仲間と一緒にゴルフか
という生活だったので、俄然イキイキし始めました。
人って、毎日行く場所がある、やることがある
やりたいことがある!
って、生きる上でとても大切なことなんだなぁと痛感させられます。
かくいう私も、夫と再婚する前は
お金には困らず、仕事らしい仕事もせず、ひとり暮らしで
24時間365日を自分のためだけに使う生活を2年ほどしていました。
時々海外に1ヶ月単位で出かけたり、友達とのランチも忙しく
暇を持て余すということはなかったのですが、とかく
「やりがい」「生きがい」という点では、不足感ばかりでした。
この時に起業らしいことをしっかり学び、
事業を確立できていればよかったと思うし
実際に起業コンサルタントをお願いしたり
自己分析をしたりと、それなりに時間も労力もお金もかけたつもりでしたが
結局形にならなかったのはおそらく、
起業をしなくても困らない状況にあったからではないかと
今になって振り返っています。
誰かの役に立っている実感が欲しい。
誰かに「ありがとう」と言われたい。
これが当時の私の切なる願いでした。
そして、この切なる願いが私を起業ではなくて再婚へと動かしたのです。
(この時のことはまた、あらためて書こうと思います)
私のこの頃の不足感、欠落感が感情の痕跡として心に残っているので
夫がカフェを開業することで人を喜ばせたい
自分も充実感を得たい、と感じる気持ちはすごくよくわかります。
一方で、経理事務職、システムエンジニア、生命保険営業職を経験して
アルバイトですら飲食業の経験がないばかりか
料理に時間をかけるぐらいなら他のことをしたい!という私にとって
飲食業はまったく未知の世界でした。
立ちっぱなしの仕事も、今の私の体力ではできる気がしませんでした。
そして懲りずに起業の途にいる私は、自分のことを優先させるのか
夫のサポートをするのか、迷うところです。
妻としてどうあるべき?私はどうありたい?
もちろん夫をサポートすれば、良い妻、できた妻ということになって
見栄えが良いのだろうな、周囲は評価してくれるのだろうとは思いましたが
いかんせん気持ちが乗りません。
気持ちが乗らない大きな要因は、夫との関係にあったと思います。
ここは私のnoteなので私からの偏見で書いていますが
夫とコミュニケーションをとるのは、すごく大変。
後でわかるのですが、おそらくADHDとアスペルガー症候群のミックスだと思われます。
もしくは、夫は私と再婚前に脳梗塞、心筋梗塞を患ったので
その後遺症なのかもしれません・・・。
言うことがコロコロ変わる。
冷静に話していたはずなのに、突然豹変しキレる。
そして私の人生では経験したことのないような言葉で罵る。
整理整頓が極端に苦手で、失くしものはしょっちゅう。
話の筋も通らないので、指揮命令者には向かない。
「ワケわかんない」と思うことが多く、関われば関わるほどしんどいです。
ただ表面的な付き合いだと、愛想は良いし見た目もハンサムなので
「素敵なご主人ね〜」と言われます。
再婚から6年かけて、徐々に夫のこんな姿に気づいてきた私は
一緒にカフェやってもいいことはないだろうな、と思っていました。
なまじ起業塾に入って学び、頭でっかちな私。
実際の経営経験だけがすべての夫。
カフェ開業の全責任を負うのは夫ですから
周囲は夫の指揮命令に従うことになります。
私も完全に従えればいいのでしょうが
私は従業員ではないという意識もあるし
そばで見れば見るほど意見を言いたくなる自分でもあります。
もっとこうすればいいのに、ああすればいいのに、と。
でもそれで無用にキレられ、罵られるなんて絶対にイヤでした。
とはいえカフェの成功は、私たち夫婦の将来の生活にも影響大ですし
どうにか成功させてほしい!という切なる願いもありました。
飲食コンサルタントとの出会い
そんな葛藤を感じていた頃、救世主が現れます。
飲食コンサルタントをしている女性で、私の幼なじみです。
ここではNさんとします。
私の夫が開業するという話を知って、Nさんは
「手伝えることある?」と連絡をしてくれました。
まずは私とNさんの二人で会い、私の心中にある不安を吐露しました。
私が不安に感じている、夫の行動あれこれ。
それは飲食コンサルタントの彼女から見ると、
やってはいけない、タブーだらけなのだそうです。
やっぱり・・・。そうだよな。薄々は気づいていたけれど。
そして、Nさんは席数や提供する食事内容、家賃なども考慮して
1日の売上目標もサッと計算してくれました。
他にもメニュー開発、キッチン内の動線、仕入れ先選び、仕込みなど
多岐にわたる飲食業の裏側をすべて、机上の理論ではなく
彼女の実体験や他店舗をコンサルティングした事例から教えてくれて
利益が出るようにサポートできる、とオファーしてくださったので
夫に受けるよう勧めました。
私はNさんに任せていれば安心!と思い、本当に気持ちが楽になりました。
でも、本当に大変なのはここからでした。
私が大船に乗った気持ちでNさんに任せて以来
私は私のやりたいことを進めていました。
5人目ぐらいの起業コンサルタントさんに個人コンサルをお願いして
ワークもたくさん出されていたし、考えることは山のようにあります。
視聴するべき動画、静かに自分と対話をするために必要な時間、
友達とのランチもしたいし、ピアノも弾きたい。
私には、自分のこうした時間をすべてパンケーキカフェに捧げる覚悟は
なかったのです。
事件が起きるまで
Nさんと夫は契約をして、コンサルが始まったかのようでした。
近隣の大学生向けにランチを出したいという夫に
手軽で見栄えのするメニューの提案、
そのために必要な器具のアドバイス、メニュー用の写真撮影など
やることはいくらでもあります。
Nさんが可能な限り時間を作り、夫とコミュニケーションをとって
着々と前に進めてくれているもの、と私は信じて疑いませんでした。
一方で、遅れる店舗の内装工事。
さほど手を入れることはない、とはいえ
厨房の中は片付かず、器具が散乱しているように見えます。
この状態では、調理から盛り付け、提供までの無駄な動作が多すぎて
お客様をお待たせし、不満が出る。
飲食の動線設計は、客として見る以上に緻密に計算されており
厨房での1秒の無駄な動作が、お客様への提供を1分遅らせることもある
さらにお客様が混み合ってくるとそれは、何十分にもなり得るのだ
とNさんはこんこんと私に言っていました。
Nさんと夫の間でやりとりして欲しいのに、私に言われたので私から
そのことを夫に言うと「内装工事が入らないから仕方ない」と言います。
では内装工事がいつ入るのか?というと、オープン予定日の1週間前だと。
は?1週間前?
開いた口が塞がらないとはこのことです。
どうやら夫も4社ぐらいに「もっと早くできないか」打診したそうですが
おりしも内装工事業者さんは、どこも大忙しで
大工さんたちの都合がつかず結局、自宅のリフォームをお願いした業者さんが空くのを待つしかない状況でした。
Nさんによると、内装工事が終わってからが動線づくり。
動線ができて初めてトレーニング。
トレーニングができて初めて開店。
とのことでした。素人の私が聞いても、ごもっとも。
夫は、飲食とは無縁の前職での経験を持ち出してきて
内装工事さえ終われば、自分なら一晩で整理整頓はできる。
だから大丈夫だ、と言い張ります。
でも、そもそも内装工事でさほど大きく変える箇所なんて
なかったんです。
居抜きで借りた店舗だし、厨房も客席もほぼそのまま使う。
今から考えれば、動線づくりが進まないのは内装工事のせいでは
なかったように思います。
そして、内装工事をしてもらえる日はさらに伸び
開業予定日3日前になっても、未完成。
そして、事件発生。
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