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原点に立ち返る〜和田恵秀さんとの出会い〜

高校生の頃、私には就きたい職業がありました。
それは、新聞記者。

きっかけは、学校の図書館で何気なく手に取った、一冊の本でした。

初めて知った原発の実態

初めて目にした原子力発電所の実態と、何も知らずに当たり前のように電気を使っている自分の無知さ。
中でも、原子力発電所を動かすために、作業員の方々の被爆が日常的に存在している、という事実に、十代の私は大きな衝撃を覚えました。

2021年の統計によれば、日本の電力供給量のおおよそ6%が、原子力発電によって賄われている、とのデータが発表されています。

たったの6%?と思うかもしれません。
しかしその6%のために、どれだけの人たちが犠牲になってきたのか、そしてその事実を知らない日本人、あるいは知っていても問題視しない日本人が、どれほどいるのか。

当時の私は、世の中に知られていない真実を白日の元に知らしめるジャーナリズムに、大きな意義を感じました。
そして、世の中の人が知るべき真実を探求し、それを文章という形で世に出す新聞記者の仕事に、憧れを抱いたのです。

ところが大学に入学した私は、人生で初めて感じる「自由」を謳歌しすぎで、勉強はどこへやら😅
いつのまにか「新聞記者になりたい」という夢もフェードアウトしていったのです。

それから二十数年が経ち、私はある方との出会いから、再び原子力発電所が抱える社会問題に、目を向けることになりました。

和田恵秀さんとの出会い

その方とは、和田恵秀わだけいしゅうさん。
数々の著名な俳優さんが所属していた「劇団俳優座」養成所のご出身で、俳優、声優、画家、切り絵作家、シャンソン歌手など、多彩な才能を生かして様々な分野で活躍されてきた恵秀さん。
彼が今、取り組んでいるのが、東日本大震災で爆発を起こした、福島第一原発の真実を伝える朗読劇の上映準備です。

知人を介してFacebookで繋がったご縁から、福島に住んでいる恵秀さんが東京へいらっしゃる際に、お会いする機会がありました。

83歳とは思えない、ダンディーでエネルギッシュな恵秀さんから溢れ出すたくさんのお話。
耳に心地よい低い声と、抑揚のついた語り口で語られるお話は、まさに一つのお芝居を観ているような感覚。
次から次へと展開するお話に、どんどんと引き込まれていき、時間が経つのがあっという間でした☺️
戦争のこと、仏教をテーマに切り絵を続けてこられたこと、東日本大震災のこと、原子力発電所のこと、そしてちょっとスピリチュアルな内容まで、お話は多岐に渡りました。

「怒り」の本質

印象的だったのは、恵秀さんの中から溢れる「怒り」の感情。

戦時派生まれの恵秀さんは、幼い頃、疎開先で風船爆弾がせっせと作られ、飛ばされる様子をすぐ間近で見ていました。

風船爆弾(ふうせんばくだん)とは、太平洋戦争において日本軍が開発・実戦投入した気球に爆弾を搭載した爆撃兵器。9000個余りが放たれて、少なくとも300個程度が北アメリカ大陸に到達したとみられている(Wikipediaより)

最新の殺人兵器である原爆に、紙風船と竹やりで立ち向かった日本人の無知さ、愚かさ。この事実を伝えなければいけない、と、戦争の語り部、朗読の舞台を始めました。

そして戦争中に政府が発表する、当時の日本にとって都合のよい、事実をねじ曲げた報道。全く同じことが、東日本大震災の原発事故でも起きている、と恵秀さんは語ります。

福島第一原発が爆発した後、表面上、政府が発表する事実と、実際に地元で起きている現実とのギャップ、いくら証拠となるデータが突きつけられても、事実を認めようとしない頑強な政府の姿勢。

震災後、いつも通りの生活に戻ったかのように思える地元の人たちは、見えない「放射能」の脅威に怯えながらも、今も不安な思いにかられながら、毎日を過ごしているのです。

実際に、ご自身も震災後、ステージ3の大腸癌を患った恵秀さん。
幸いにも7時間にもわたる大手術の末、命を取り留めることができましたが、ご自分の病気と放射能との因果関係は、決して小さくはない、と考えています。

「何に、誰に対して、一番怒りを感じていらっしゃるのですか?」という私の質問に、少し黙った後、こうつぶやいた恵秀さん。

「人間の終わりなき欲望に、だよね」

自分ができることを

そんな彼は、今、自分ができることはないだろうかと模索した結果、2冊の画集を出版し、その印税を、福島県にある「いわきたらちねクリニック」で実施される甲状腺癌の検査費用のために寄付しています。

その中の一冊である「被災地からのつぶやき」は、一度は知人のつてを伝って兵庫へ避難した恵秀さんが、様々な思いの末に福島に戻り、そこで見た光景、感じたことを、ご自身が作った七五調の詩と、やさしいタッチの絵で綴った絵本です。

被災地からのつぶやき

そこには、東京に住んでいる私には知り得なかった、東日本震災が福島に残した大きな爪痕、名もなき人々の行き場のない思いが、記されていました。

政治的な活動には、一切興味がない、という恵秀さん。
彼は、自分の役割を、福島第一原発の爆発のこと、その後に起こった事実を、日本中のみなさんに伝えることだと、考えています。

加藤就一さんの原作である朗読劇の脚本を読ませていただきました。主役の福一くん(福島第一原発)の一人語りをベースに、様々な登場人物の話から、日本や世界の原発の実情、隠されてきた様々な実態が明らかになっていくストーリーに、引き込まれて行きました。
そして、私の中で、高校生の時に、あの本を読んで感じた様々な思いが、蘇ってきたのです。


加藤就一さん著「ごめんなさい、ずっと嘘をついてきました。」

「知らない」ことは恐ろしいこと。
そして「知ろうとしない」こともまた、同じくらい恐ろしいことではないかと思うのです。

知ったからといって、私たちにできることは限られているかもしれません。
それでも、一人一人がその事実をまずは知り、受け止め、色々な人へと伝えていくことだけでも、価値があるのではないかと思っています。

二十数年ぶりに戻ってきた「原発」の問題。
あらためて、ライターとして自分にできることはなんだろうか、と考えるきっかけをいただきました。


▼和田恵秀さんと、Facebookライブを行います!
劇団時代のお話から、画家や切り絵作家としての活動、戦争のこと、原発のことなど、いろいろなお話を伺おうと思っております♪
ぜひ、Facebookのアカウントから、遊びにいらしてください☺️

<Facebookアカウント>
☘️おくやま・ふみ
https://www.facebook.com/fumi.oku.562

☘️和田恵秀さん
https://www.facebook.com/profile.php?id=100004110274650

▼和田恵秀さんの画集をお求めになりたい方は、こちらをご覧ください。



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