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【技術ショート】混沌からの脱出せよ~データOSの物語

今回もIT専門外の方でも理解いただけるよう技術ショートをお送りします。

私の専門であるデータエンジニアリング界隈では様々なツールやプラットフォーム、サービスが乱立しています。
これらをどう統合すればよいか―解決のための一案であるデータOSについての物語です。

ご意見・ご感想・ご質問 何でもおよせください!


佐々木は溜息をついた。
目の前のコンピューター画面には、彼には理解できない数字やグラフが並んでいた。
「どうしたんだ? また新しいツールの使い方で躓いているのか?」
振り返ると、上司の田中が心配そうな顔で立っていた。

佐々木は申し訳なさそうに頷いた。
「はい...どうも上手く使いこなせなくて」
田中は優しく笑った。
「気にするな。誰もが同じ問題を抱えているんだ」

田中は佐々木の隣の椅子に腰掛けた。
「実はな、この問題、データ分析の世界全体で大きな課題になっているんだ」
佐々木は驚いた顔で田中を見た。
「全体で、ですか?」

田中は頷いた。
「ああ。新しいデータ分析ツールが次々と生まれているんだ」
「それは良いことじゃないんですか?」と佐々木。
田中は首を傾げた。
「一概にそうとも言えないんだ」

田中は立ち上がり、ホワイトボードに向かった。
「こう考えてみてくれ」
彼はマーカーを手に取り、図を描き始めた。
「君のスマートフォンには、何個くらいアプリが入っている?」

佐々木は少し考えた。
「うーん、50個くらいでしょうか」
田中は頷いた。
「そうだな。でも、それらのアプリを使うのに苦労していないだろう?」

佐々木は首を横に振った。
「確かに。スマホは使いやすいです」
田中は笑顔を見せた。
「そう。それはなぜだと思う?」

佐々木は考え込んだ。
「えっと...全部のアプリが同じような操作方法だからでしょうか」
田中は指を鳴らした。
「それも一因だが、もっと重要なものがある」

田中はホワイトボードに大きな枠を描いた。
「スマートフォンには、OSという基本ソフトが入っているんだ」
彼は枠の中にいくつかの小さな丸を描き入れた。
「このOSが、様々なアプリを管理している」

佐々木は理解し始めた顔つきになった。
「つまり、OSがあるから、アプリ同士が上手く連携できるんですね」
田中は満足げに頷いた。
「そう、その通りだ」

田中は再び席に戻った。
「でも、データ分析の世界には、そんなOSがないんだ」
佐々木は驚いた表情を浮かべた。
「え? それじゃあ...」

田中は続けた。
「そう、バラバラのツールを自分たちで何とか連携させようとしているんだ」
佐々木は困惑した顔で言った。
「それは大変そうですね...」

田中は深刻な表情で頷いた。
「ああ、本当に大変なんだ」
彼は窓の外を見やった。
「でも、この問題を解決しようという動きが出てきている」

佐々木は興味深そうに聞いた。
「どんな動きですか?」
田中は再びホワイトボードに向かった。
「大きく分けて3つのアプローチがある」

田中は3つの円を描いた。
「1つ目は、一つの会社がすべてを管理しようというものだ」
彼は1つ目の円に「中央集権」と書き入れた。
「これは簡単だが、柔軟性に欠ける」

佐々木は頷いた。
「確かに、一つの会社だけだと、新しいアイデアが生まれにくそうですね」
田中は同意した。
「その通りだ」

田中は2つ目の円に「完全分散」と書いた。
「2つ目は、みんなで話し合って共通のルールを決めるというものだ」
佐々木は首を傾げた。
「それって、上手くいくんですか?」

田中は苦笑した。
「正直、難しいだろうな」
彼は3つ目の円に「ハイブリッド」と書いた。
「そこで出てきたのが、3つ目のアプローチだ」

佐々木は興味深そうに聞いた。
「ハイブリッドって、どういうことですか?」
田中は説明を始めた。
「これは、中央と分散のいいとこ取りをしようというものだ」

田中は再び席に戻った。
「でも、どれも完璧な解決策とは言えないんだ」
佐々木は少し落胆した様子だった。
「じゃあ、結局どうすればいいんですか?」

その時、部屋に新しい人物が入ってきた。
「失礼します」
声の主は、若くて賢そうな印象の男性だった。
田中が立ち上がって彼を迎えた。

「ああ、来てくれたか。佐々木くん、紹介するよ」
田中は新しく来た男性を指さした。
「こちらが、ITコンサルタントの山田さんだ」

山田は丁寧に頭を下げた。
「はじめまして、山田です」
佐々木も慌てて立ち上がり、挨拶を返した。
「佐々木です。よろしくお願いします」

田中は二人に座るよう促した。
「山田さんは、データ分析の問題に新しいアプローチを提案している人なんだ」
佐々木は興味深そうに山田を見た。
「へえ、どんなアプローチなんですか?」

山田は微笑んだ。
「データOSという考え方です」
彼はゆっくりと説明を始めた。
「さっき田中さんが話していたスマートフォンのOSをイメージしてください」

佐々木は頷いた。
「はい」
山田は続けた。
「データ分析の世界にも、同じようなOSが必要だと考えています」

田中が口を挟んだ。
「つまり、様々なデータ分析ツールを管理する中央システムということか」
山田は頷いた。
「その通りです」

佐々木は少し混乱した様子だった。
「でも、それって1つ目のアプローチと同じじゃないんですか?」
山田は首を横に振った。
「似ているようで、少し違うんです」

山田はホワイトボードに向かった。
「データOSは、ツールを管理はしますが、支配はしません」
彼は図を描きながら説明を続けた。
「各ツールの個性を活かしつつ、互いに連携できるようにするんです」

佐々木は少しずつ理解し始めた。
「なるほど...」
山田は佐々木を見て微笑んだ。
「簡単に言えば、通訳のようなものです」

田中が興味深そうに聞いた。
「具体的には、どんなことができるんだ?」
山田は嬉しそうに答えた。
「例えば、異なるツール間でのデータの受け渡しを自動化できます」

佐々木の目が輝いた。
「それができたら、すごく便利そうですね!」
山田は頷いた。
「ええ、そうなんです」

田中が疑問を投げかけた。
「でも、そんなシステムを作るのは難しいんじゃないか?」
山田は真剣な表情で答えた。
「確かに簡単ではありません」

山田は深呼吸をした。
「でも、既に似たようなことをしているツールがあるんです」
佐々木と田中は驚いた顔で山田を見た。
「本当ですか?」

山田は頷いた。
「はい、そのツールを発展させれば、データOSが実現できると考えています」
佐々木は希望に満ちた表情で聞いた。
「それが実現したら、私たちの仕事はどう変わるんですか?」

山田は優しく笑った。
「具体的な例を挙げて説明しましょう」
彼はホワイトボードに向かい、図を描き始めた。
「例えば、あなたが小売店の店長だとします」

佐々木は興味深そうに聞き入った。
山田は続けた。
「今まで、売上データ、在庫データ、顧客データをそれぞれ別のシステムで管理していたとしましょう」

田中が頷いた。
「ああ、よくあるケースだな」
山田は図に矢印を書き加えた。
「データOSがあれば、これらのデータを自動的に連携させることができます」

佐々木が尋ねた。
「それで、具体的に何ができるようになるんですか?」
山田は嬉しそうに答えた。
「例えば、ある商品の売れ行きが急に伸びたとします」

山田は図に新しい要素を書き加えた。
「データOSは、売上データの変化を検知し、自動的に在庫データと照合します」
「在庫が少なくなりそうだと判断すると、自動的に発注の提案をしてくれるんです」

佐々木の目が輝いた。
「それは便利ですね!」
田中も感心した様子だった。
「確かに、これなら業務効率が大幅に上がりそうだ」

山田はさらに続けた。
「それだけではありません」
「顧客データと連携させれば、どの顧客層にその商品が人気なのかも分かります」
「そのデータを基に、ターゲットを絞った販促活動もできるようになるんです」

佐々木は驚いた表情で言った。
「すごい...それなら売上アップも見込めそうですね」
山田は頷いた。
「その通りです」

田中が口を開いた。
「他の業界でも使えそうだな」
山田は嬉しそうに答えた。
「ええ、例えば製造業なら、生産ラインの稼働データと受注データを連携させて、最適な生産計画を立てられます」

佐々木が興味深そうに聞いた。
「医療分野ではどうですか?」
山田は真剣な表情で答えた。
「患者の診療データ、検査データ、薬の効果データなどを連携させれば、より精度の高い診断や治療法の選択ができるようになります」

田中が感心した様子で言った。
「つまり、あらゆる分野で意思決定の質が向上するということか」
山田は力強く頷いた。
「その通りです」

佐々木は希望に満ちた表情になった。
「それが実現したら、私たちの生活も大きく変わりそうですね」
山田は微笑んだ。
「ええ、例えば街全体のデータを連携させれば、交通渋滞の緩和や災害対策の強化にも役立ちます」

田中が疑問を投げかけた。
「でも、そんなに大量のデータを扱うと、セキュリティの問題も出てくるんじゃないか?」
山田は真剣な表情で答えた。
「その通りです。それが現在の大きな課題の一つです」

佐々木も心配そうな表情になった。
「個人情報の扱いも難しそうですね」
山田は頷いた。
「はい、プライバシーの保護は最重要課題の一つです」

山田は力強く言った。
「ですが、多くの専門家がこれらの問題の解決に取り組んでいます」
「技術的な対策だけでなく、法律や倫理面での整備も進んでいます」

佐々木は少し安心した様子で聞いた。
「じゃあ、実現はもうすぐそこまで来ているんですね」
山田は微笑んだ。
「そうですね。ただし、完璧なシステムができるまでには、まだ時間がかかるでしょう」

田中が口を開いた。
「我々にできることは何かあるのか?」
山田は嬉しそうに答えた。
「はい、とても重要なことがあります」

山田は二人を見た。
「新しい技術やシステムに対する理解と受け入れる姿勢です」
「どんなに優れたシステムでも、使う人々が理解し、適切に活用しなければ意味がありません」

佐々木は決意に満ちた表情で言った。
「分かりました。私も勉強して、新しい技術についていけるよう頑張ります!」
田中も同意した。
「そうだな。我々にできることから始めよう」

山田は満足げに笑った。
「素晴らしい。そういう前向きな姿勢が、よりよい未来を作るのです」

その日の夕方、佐々木は新しい希望を胸に抱きながら帰路についた。
データを活用した新しい世界は、彼が想像していた以上に身近で、大きな可能性を秘めていた。
彼は、その世界の到来に備えて、しっかりと準備をしようと心に決めた。

明日からの仕事が、少し楽しみになった佐々木だった。


参考


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Puuuii | 伝える技術と心理学で戦うデータエンジニア
え、チップくれるん? ありがとうなぁ! この恩は3日ぐらい忘れへんから🫡