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生成AIからデザインシステム、Think N1まで! Changing Perspective by Figma イベントレポート

おはようございます!こんにちは!こんばんは!

家計簿プリカB/43を運営する株式会社スマートバンクでプロダクトデザイナーをしているputchomです。

先日Figmaが主催している『Changing Perspective』というイベントに参加してきたので今回はそのイベントレポートをお伝えしようと思います。

Changing Perspective のイベントバナー。2024年7月4日 / 16:00-21:00 観世能楽堂 at GINZA SIXと書いてある。

いまだかつてないほどの変化が、デザインの世界にも訪れています。短期的な成果が求められるなか「イノベーション」を紡ぎ続けるにはどのような発想が必要なのでしょうか。本セッションでは、Configで発表したFigmaの最新のイノベーションのほか、ビジネス、AI、Design Systems、Teamによるプロダクトづくりなど様々な視点から「革新を生むデザイン」を生み出すためのヒントを紐解きます。

今回は約700年の歴史を持ち、ユネスコの無形文化遺産にもなっている「能」の舞台にて行います。茶道や華道、歌舞伎などにも大きな影響を与えてきた「能」がどのように革新を紡いで現代まで受け継がれてきたのか、その舞台とのコントラストもお楽しみください。

『Changing Perspective』のWebサイトより引用

能舞台とプロジェクションマッピング

会場はGINZA SIXの地下にある観世能楽堂で、通常このようなイベントでは使われないようなFigmaらしいユニークな会場となっていました。

能舞台の上に司会の人が立っている。その横に巨大なディスプレイがあり、Changing Perspectiveというイベントのタイトルが映し出されている。
能舞台の横にディスプレイはなかなか見ない布陣。サイバーパンク感がある。
手にFigmaと書かれた団扇を持っている写真
会場の雰囲気にぴったりの団扇。粋なデザインですね。
手にFigmaのロゴが描かれたどら焼きを持っている写真
お土産はFigmaロゴ入りのどらやき。とってもおいしかったです。

また、能舞台にはプロジェクションマッピングが行われていて、登壇者が入場する際の演出を際立たせていました。

さらに撮影はできなかったのですが、開演時には囃子方(笛方、小鼓方、大鼓方、太鼓方)の皆様による演奏もあり、とても厳かな雰囲気の中イベントがスタートしました。

それでは各セッションを紹介していこうと思います!


Keynote

FigmaのCPO山下 祐樹さんによるオープニングキーノート。先日のConfig 2024で発表されたAI機能についての設計思想の解説や実際の機能のデモが中心でした。

「示唆が得られる」、「探索する空間を拡張」、「単純作業からの解放」とかかれたスライド。
FigmaのAI機能の方針。「示唆が得られる」「探索する空間を拡張」「単純作業からの解放」。
ドーナツの写真がヘッダーに挿入されたドーナツ店のアプリのモックアップがFigmaの画面に配置されている。その下には「作業中」というAIが作業していることを示すダイアログが表示されている。
生成機能で銀座のドーナツ屋さんのアプリケーションを作成するデモ。テキストフィールドに「銀座の和風ドーナツの店のアプリ」と入力するだけでこのようなモックアップが瞬時に作成される。
「あなたのクラフトこそが差別化要因になる」と書かれたスライド。
AIを使って単純作業から解放された結果、クラフトに力を入れることができるようになる。そのクラフトこそが差別化要因となるというメッセージ。

イベント後の懇親会では、山下さんと直接交流する機会をいただき、今後のFigmaでAIの機能を提供するにあたって考えたことや、これまでに試行錯誤したこと、今後Figmaがどこを目指しているかについて深くお伺いできてとてもよかったです。

Figmaはコミュニティを大切にしているので、イベントに足を運べばプロダクトデザインのキーマンにもカジュアルに話を聞けるのがいいところですね。

BANI時代の未来創造

続いてのセッションは本田技術研究所の澤井 大輔さんによる「Building products」をテーマとした「BANI時代の未来創造」というセッション。

未来をデザインするためにどのように生成AIと付き合っていくかという内容でした。

こちらはクオリティの高い冒頭の動画。生成AIを用いて通勤電車の中で数時間で作ったというから驚き。

BANI。Brittle(脆弱性)、Anxiety(不安)、Non-linear(非線形性)、Incomprehensible(不可解)。組織や個人が直面するものとして定義と書かれたスライド。
BANIというのはBrittle、Anxiety、Non-linear、Incomprehensibleの頭文字をとったもの。未来学者のJamais Caisco氏がVUCAに変わる新しい世界を表す言葉として定義した。
澤井さんがホワイトボードに書いたラフスケッチをもとに生成AIが4枚のイラストを生成したことを表したスライド。
澤井さんはAIというよくわからない存在に恐れおののきつつ毎日触れることにしたそう。車が専門でバイクをデザインしたことないが、まずはホワイトボードに書いたバイクのラフスケッチをもとに、精緻な書き起こしができるか実験。
Positive Hallucination Approach 生成AIは仕組み上、もっともらしい嘘をつく まだ起きてない未来を語ることができると書かれたスライド。
生成AIがつくもっともらしい嘘(ハルシネーション)は未来をデザインする自分がやっていることと一緒である。ハルシネーションを逆に「未来を語っている」とポジティブに捉えることが重要。

特に印象に残ったのはPositive Hallucination Approachで、未来をデザインする際に、生成AIに一見嘘に見える未来を語らせて、それを人間側が実装していくという考え方は目からウロコでした。

クリエイティブコーディングからはじめる世界制作

続いてのセッションはクリエイティブコーダーの高尾 俊介さんによる「Development & Code」をテーマとした「クリエイティブコーディングからはじめる世界制作」というセッション。

ネルソン・グッドマンの『世界制作の方法』を参照しつつ、自身のものづくりに対する姿勢をライブコーディングで示しているのが印象的でした。

たくさんのジェネラティブアートのサムネイルの上にMORE VERSIONS...と書かれたスライド。
ネルソン・グッドマンの『世界制作の方法』では「世界はバージョンによって作られている」としている。バージョンが正しければ世界は正しいものになっていく。
IDEALと書かれた下にプログラミングのif文が記述されている。REALITYと書かれた下にwhile文が記述されている。
世界は作ったものが正しければうまくいくし、そうでなければうまくいかないといったif文のようなものではなく、何回もためしてやっとうまくいくwhile文のようなものである。
p5.jsのブラウザのエディターを使ってライブコーディングをしているところ。
高尾さんはこういった自分の世界を表現するために日記のようにプログラムを書いているそう。当日会場では実際にライブコーディングで作品を作っていく様子を紹介。

能楽堂でライブコーディングを見る体験は新鮮で、最近自分の世界を表現するようなものを日常的に作る時間を取れていないので、日記のように自分を表現するものを何か作ってみたいと思えるようなセッションでした。

デザインシステム再考 2024 - Changing Design Systems Perspectives

続いてのセッションは株式会社シークレットラボの佐藤 伸哉さんによる「Design Systems」をテーマとした「デザインシステム再考 2024 - Changing Design Systems Perspectives」というセッション。

デザインシステムによくある幻想と成熟モデルを示しながら、2024年現在各企業に共通して行うアドバイス(金言集)が印象的でした。

本日の提言「デザインシステムは作ったら終わりではなく、維持して運用できる体制を組織の中に創ること」と書かれたスライド。
本日の提言「デザインシステムは作ったら終わりではなく、維持して運用できる体制を組織の中に創ること」
デザインシステムの成熟モデル 自社の体制 × 自社の対象サービス 適切な自社のデザインシステム成熟モデル = 組織としての運用/予算化計画と書かれたスライド
自社の体制と自社の対象サービスのかけ合わせで適切な自社のデザインシステム成熟モデルが決まる。それがすなわち組織としての運用/予算化計画になる。
デザイン原則は、自己満足するな。部外者が理解でき粒度で書く。と書かれたスライド。
共通で行うアドバイス(金言集)その1『デザイン原則は、自己満足するな。部外者が理解できる粒度で書く。』

その他の「共通で行うアドバイス(金言集)」

  • デザイン原則は、自己満足するな。部外者が理解できる粒度で書く。

  • 全てをゼロから作ろうとしない。

  • あるものはどんどんそのまま使う。体力がないなら無駄に独自開発しない。

  • 全てを今解決しようとしない。後継者や未来に託す。

  • 番長&大臣制度。現場の決め事は番長が独自で決定、社内政治や調整は大臣の役目。

  • 現場の意思決定機能は早めにローテーションして後継者を育てる。

  • 間違いを恐れない。判断が間違っていたら未来に託す。

  • 未来の余白(ゆとり)を意識して意図的に拡張しておく。

  • 特定のアプリやアプリの独自機能に依存しすぎない。

  • デザインシステム開発の目的を見失わない。一貫性と運用効率。

  • 正解はない。大事なのは継続できる身の丈にあった進め方、作り方、成果物。

  • 早い段階からエンジニア(開発チーム)を巻き込む。

  • 社内よりも社外。社外への布教活動や勉強会に力を入れる。

自分も自社のデザインシステム設計を担当している身としては、共感しすぎて首がもげるかと思いました。特に提言の「デザインシステムは作ったら終わりではなく、維持して運用できる体制を組織の中に創ること」というのは真理であり、デザインシステムは組織的な維持運用体制をつくることが一番大事だよなと改めて思いました。

価値を生み出し、届けるための“文脈”のデザイン

続いてのセッションは株式会社スマイルズの蓑毛 萌奈美さんによる「Design × Business」をテーマとした「価値を生み出し、届けるための“文脈”のデザイン」というセッション。

スマイルズが運営する「PASS THE BATON」や「文喫」の例を示しながら、自分の関心事を社会や誰かの関心事と接続し、届くべき人にサービスを届ける方法を紹介されていました。

スマイルズが大切にすることという見出しのスライド。「マクロ動向」「出し手都合」「プロダクトアウト」というキーワードが左側、対照的に「市場迎合」「顧客視点」「マーケットイン」というキーワードが右に書かれている。真ん中には「N=1 生活者としての自分が起点」とあり、そこに矢印が向けられ、「生活者としての自分はそれを受容しうるか、なぜそれを買い求めるのかを精緻に捉えること」と記述されている
スマイルズの価値づくりは生活者としての自分(N=1)起点。生活者としての自分は本当ににそれを受容しうるか。なぜそれを買い求めるのかを精緻にとらえるえること。
「文脈には二つの方向が存在する」という見出しのスライド。左側に「出し手、やる必然性:N=1の背景、やりたいこと:トキメキ、浮かぶ情景:妄想」とあり、対照的に右側には「受け手、背景への共感:N=2,3...、自分にとっての存在意味、浮かぶ具体的利用イメージ」と書かれている。それぞれから真ん中に「出し手の文脈」「受け手の文脈」という矢印が伸ばされ、真ん中にはBRAND SERVICEと記述されている。
独りよがりにならないためには自分の関心事を誰かや社会の関心事と接続することが重要。出し手の文脈と受け手の文脈を接続させる。
「Great Excuse(いいいいわけ)」という見出しのスライド。左側には黄色の正方形の中に「建前の価値:誰しもが共感加担しうる司会価値 日本の倉庫を空っぽにしよう!」と書かれている。対照的に右側には青色の正方形の中に「本音の価値:自分の関心事 BtoCの蚤の市(market)」と書かれている。その二つの正方形を掛け算した結果として下部に「自分の"スキ"の背中を押してくれる」と書かれている。
PASS THE BATONの受け手の文脈を示した「いいいいわけ」。建前の価値と本音の価値を組み合わせて”スキ”の背中を押すような設計になっている。

弊社スマートバンクもThink N1をバリューに掲げています。私もインタビューなどでユーザーの声を聞く中で「自分が本当に使うかどうか」を見失ってしまうことが度々あるので、自分の関心事を誰かや社会の関心事と接続するという考え方は今日からサービスづくりを考えるときに実践していきたいと思いました。

生成AIが再定義する創作と創造性

続いてのセッションはDJやアーティストのバックグラウンドを持つQosmoの徳井 直生さんによる「Innovation & AI」をテーマとした「生成AIが再定義する創作と創造性」というセッション。

冒頭で生成AIで生成した楽曲を紹介しながら、生成AIは「それっぽさ」への高速で低コストなアクセスをもたらすので、「すべての人をDJにする」と紹介されていました。

「創造性の列島改造論」という見出しのスライド。現在の「生成AI」がもたらすもの:「それっぽさ」への高速で低コストなアクセス、(人の過去の創作物の)既知の表現の領域の中での探索・組み合わせの効率化、国土の隅々に高速道路や新幹線を張り巡らせる=日本列島改造論的?と書かれている。
生成AIの「生成」はウソ。生成AIはもっともらしさ/それっぽさを再生産する仕組みである。それっぽさへの高速で低コストなアクセスをもたらす。
「創造性の分類」というスライド。組み合わせの創造性:ピーナッツ・ジェリー・バター・サンドイッチ、探索的創造性:モーツァルト「音楽のサイコロ遊び」パラメトリック・デザイン、変革的創造性:キュビズム デュシャン「泉」、ヒップホップと書かれている。
創造性は3つに分類される。組み合わせの創造性、探索的創造性、変革的創造性。生成AIはこの中の決められた枠の中を探索するタイプの創造性を加速させる。
「生成AIの持つ創造性 聴取・消費の新しい形態としての音楽生成AI」という見出しのスライド。組み合わせの創造性は持ちえそう、著名アーティストの楽曲を無断で学習(×法律/倫理的に???)2024年6月Sony MusicやUniversal Musicなどが訴える、音楽生成AI=作曲行為ではなく音楽の聴取消費の新しい形態そう捉えた上で権利者への補償、リミックスなどの創作行為を考えるべきと書かれている。
音楽生成AIは作曲行為ではなく音楽の「聴取」「消費」の新しい形態。生成AIはすべての人をDJにする!

かつて自分もDJをやっていたことがあり、DJとデザイナーという職業は「再現や解釈によって印象を作り上げていく」という点で似ていると感じていたので、デザイナーが生成AIを手にしたことで、その行為を加速していくと言い換えると、とても腹落ち感がありました。

まとめ

今回のイベントに参加して、あらためて2024年のデザインシステムについて確認することができたし、デザイナーが今後付き合っていくことになる生成AIの解釈の仕方が広がりました。また、弊社スマートバンクのバリュー「Think N1」に対する自分の中の解釈も拡大し、まさにChanging Perspectiveといったイベントだったなと感じました。

余談ですが、Figmaの新しい生成AIの機能もさっそく試してみました!(すごい)

気付きをいただけた登壇者の皆様はもちろん、すばらしいイベントを開催してくださったFigmaの皆さんありがとうございました!

それでは!

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