穴 コトノ ハジマリ
私の背中には
大きな穴が空いている
人には見えない
もちろん自分にも
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私は影谷みづき 28歳
駅に向かって歩いていると
いきなり背後から声をかけられた
「あの…すみません」
申し訳なさそうな女性の声に、私は振り向いた。
一見普通の女性。
これから仕事なのか、スーツを着ている。
「はい?」
わたしは返事をする。
すると女性はやはり申し訳なさそうに
「あの…」と言った。
私は次の言葉を待った。
女性はちょっと口ごもりながら
「あの、変な事言ってすみません。
私は変な人ではないです。あ、もう変ですね…」
私はつい笑ってしまった。
「そうですね、変な人ですね。で、なんでしょう?」
彼女は真面目な目をして私を見つめ、こう言った。
「本当に変な事言ってすみません。
あの、あなたの背中に大きな穴が空いてますよ…」
「???」
多分この?が、私の顔に思いっきり出ていたのだろう。
彼女は焦って言葉を続けた。
「本当に、本当にすみません!でも、言わずにはいられなくて…」
彼女は今にも泣きそうな顔をしている。
私は思わず背中に手をまわした。
どこにも穴なんて空いてない。
「あの…何かの勧誘ですか?だったらお断りします。」
私は、その場を離れようと歩き始めた。
「すみません!いたずらでも勧誘でもないんです!信じてもらえないのはわかっています。でも本当に空いているんです…穴が…」
彼女の表情は真剣だった。
だが、信じられるわけがない。
私はこの場をどう凌ごうか考えていた。
すると彼女が一気に話しだした。
「本当に信じられないと思うんです。
不安にさせるだけですみません。
本当にすみません。
でも、気を付けて下さい。
穴が空いたままだと、悪い物が入る事があるので。」
私は話の続きが気になり、黙って彼女を見ていた。
それを彼女は怒っていると勘違いしたのか、また
「すみません!本当にすみません」
と、謝りだした。
「いや、違うんです。続きが気になって…」
「え?」
「続きが気になります。
そこまで言われたら、何で穴が空いてるのか?とか、どうして空いたのか?とか…だけど今日はちょっと時間がなくて。今度ちゃんと聞かせてもらえませんか?」
「信じてもらえるんですか?私の話…」
「信じるまではいってないですけど、興味はあるし、知りたいんです。穴が空いた理由」
という事で、私達は連絡先を交換し、今度の土曜日に会う約束をして別れた。
彼女の名前は
『鈴山実優』
24歳の社会人さん。
私と話していたのは10分程度。
遅刻しなかったかなぁ…と、電車に揺られながら私は彼女を思っていた。
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今日は鈴山実優と会い、背中の穴について色々教えてもらう事になっている。
カフェでも良かったのだか、話が話だし、二人になれる場所という事で、実優と会った駅前のカラオケで会うことにした。
私は早く話が聞きたくて、30分も前に着いてしまった。
15分前。
実優がやって来た。
「すみません、遅くなりました」
「おはようございます。まだ時間前ですよ。行きましょうか」
私は早く話が聞きたくて、カラオケ店へと
実優を促した。
続く
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