〜絶対売らない100枚〜 No.4
Sound On Sound / Bill Nelson's Red Noise
元ビ・バップ・デラックスという肩書などもはや不要な程に現在までソロキャリアを重ねたビル・ネルソンは驚くほどの多作家である、年に2〜3枚のソロアルバムのリリースと並行しつつ、6枚組の未発表音源集を平然と投下してくる辺り、一体何がどうなっているのやらという感じだ、凄いというよりもはや病的、おまけにそのペースは2020年現在も維持されているのだからいやはや驚異的である。
ソロアルバムに関しては私はその膨大なディスコグラフィーの中のたまたま見かけた数枚を買って聴いているに過ぎず、歌もの、アンビエント風なもの、とことんアブストラクトな音響ものとまぁ色々とあるが一貫してスペーシーでSFチックで、そのくせ耽美なサウンドはユニークではある、その立ち位置は日本で言うところの平沢進に近いものがあるかもしれない。しかし、器用貧乏と言うべきか、あまりにも我が道を行き過ぎているからかはよく分からないが、ソロに関してはどうも押し並べてまあまあぐらいの感想しか持てていない、悪くはないがというところだ。
だが、ネルソンがビバップ解散後に始めたバンド、Bill Nelson's Red Noiseの唯一のアルバムである「Sound On Sound」、これはもう問答無用の名作である。1979年という、本流のパンクが徐々にその熱を失いつつあった時代にネルソンが少し遅れて自分流のパンクロックを好き放題やりたい放題やった、実際のところどうだか知らないが、この解釈はあながち間違いではないように思っている。
ビ・バップも後期はニューウェーブ的なサウンドを多く取り入れた方向性へとシフトしていたが、それを受け継いだ上でのレッドノイズでのハードなブチ切れ感、思いつく限りの事をやり散らかしたような奔放さ、それでいて創意に富んだ曲のアレンジ。私の言わんとするところ全て一曲目の「Don't Touch Me(I'm Electric)」を大音量で聴いてもらえばなんとなく分かってくれると思う、初めて自宅のオーディオで流した時の衝撃は今でも忘れられない。
私にとってビル・ネルソンと言えばなにはなくともこの一枚である、逆に言えばこの一枚だけあれば他の何かは全てオマケなようなものに過ぎない。理知的にコントロールされ落ち着いた何かではなく、こんな暴走に近いような何かをまたやってくれないだろうか、流石に無理か。
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