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【サウナ】フレッシュエアーを得るための換気計画

こんにちは。サウナが好きすぎてサウナの調査、分析、研究、そして設計をしているPUSAI, inc. の手塚です。

以前の記事で、サウナ室における「フレッシュエアー」の大切さについてお伝えしました。狭い空間では二酸化炭素濃度が高まりやすく、適切に換気しなければすぐに不快で息苦しい空間になってしまいます。ここではフレッシュエアーを得るための換気計画の方法について解説していきます。

電気 or 薪で変わる換気計画

まず初めに大事なことをお伝えしますと、ストーブの熱源によって換気の計画が変わります。薪ストーブであれば、燃焼により自然と空気が循環するため考え方はシンプルです。

一方、電気ストーブの場合はヒーターエレメントが熱くなるだけなのでそれ自体に空気の流れがありません。熱と空気の立体的な動きをイメージしながら換気計画をする必要があります。

換気計画の共通事項

電気でも薪でも、基本的に以下の3つが必要です。

  1. 給気口

  2. 排気口

  3. 換気口(メンテナンス用)

まず1つ目の給気口。これは新鮮な外気を室内に取り入れるために必要です。基本的にはストーブの近くに設置します。ストーブの種類によって位置が変わります。

2つ目が排気口。呼吸により発生した二酸化炭素や汗により汚染した空気を屋外に排出します。これはベンチ下に設置することが推奨されています。

3つ目が換気口。これはストーブから一番離れた位置で、天井から15〜20cmほど下の壁に設置します。サウナ利用時には閉鎖したままにしておきますが、サウナの利用が終わった後、空気を入れ替えるためにに開放しておきます。

対流ループを作る必要性

フレッシュエアーを取り入れること以外にも、換気計画の重要性を物語る上で重要な要素がいくつかあります。

1つは、足元と上半身でできるだけ温度差を作らないこと。温められた熱は自然と上昇します。空気の動きがなければ天井付近に熱が溜まり、上下で温度差が発生します。体全体が包み込まれるように温まるのが理想的なので、対流のループを作るための換気計画が必要です。足元と頭の温度差の許容値については、以下のトランプキンのメモを一部参考にさせていただきます。

足の温度差が頭の温度差より 13 ~ 15% 以内であれば最も快適で快適ですが、20% までなら問題ありません。約 20% の温度差があると、人々は「足の冷え」を感じ始め、約 27% の温度差になるとほぼ全員が足の冷えを感じます。

https://localmile.org/saunadynamics/

室内の上下温度差について語る上では、ベンチや天井、ストーブとの高さ関係を適切に設定する必要がありますが、それについて別の記事でまとめています。

もう一点、CO2やその他汚染物質を排出するために換気が重要です。汚染された空気を吸い込んでしまうのは健康的ではありません。また、風通しが悪いとベンチやスノコなどに雑菌やカビが繁殖しやすく、交換サイクルが短くなってしまう恐れもあります。

では次に、電気ストーブを採用した場合の換気計画について解説します。

1.給気口の位置

電気ストーブの場合、給気口はストーブの上の壁に設置します。高さはサウナストーブ(ストーンの上)より50cmぐらい上、もしくはストーブから天井までの高さの中央ぐらいまでの間が推奨されています。位置は厳密に示されているわけではありませんが、ストーンとの位置関係が近いとロウリュした蒸気とうまく混ざらないので、50cmよりは上方にした方が良いでしょう。

この位置に給気口を設置する理由

ロウリュをすると蒸気が上昇し、給気口から入ってきた新鮮な空気と混ざり合います。それがまさにフレッシュエアーです。そのフレッシュエアーが人の体を包み込むことで最高の体験となります。給気口から流入する新鮮な空気とロウリュの蒸気を混ぜ合わせるために、給気口の位置はストーブの上である必要があります。

NGな給気口の位置

ストーブの背面近くの低い位置に給気口が設けられているケースがよく見受けられます。そこに設置すると床付近の低い位置に冷たい空気が流れ込みます。先程お伝えした通り、電気ストーブ自体は空気を引っ張らないため、ロウリュの蒸気とは混ざり合いません。フレッシュエアーが得られないだけでなく、上下の温度差が大きくなることで不快感が増すなどのデメリットがあります。

薪ストーブの場合は燃焼により空気を引っ張るので低い位置に給気口を設置することは問題ないのですが、電気ストーブは薪ストーブと空気の動きが全く異なるということを理解する必要があります。

2.排気口の位置

排気口はストーブからできるだけ遠くのベンチの下に設置します。上昇した空気が身体の付近に達し、汗や二酸化炭素などの汚染空気が発生。それをベンチ下の排気口から排出します。具体的には、フットベンチと同じかそれより下の高さに設置します。

NGな排気口の位置

日本ではベンチよりも上(天井に近い位置)に設置されていることが多いようです。一般的な居室の考え方では給気は低い位置、排気は高い位置にという基本的な考え方があるのでそれに準じているのかもしれませんが、サウナでは考え方が変わります。高い位置に排気口をに設置すると、せっかく温められた空気が排出されてしまうのでエネルギー効率が低下してしまいます。

3.換気口の位置

メンテナンス用の換気口はサウナ利用時には閉鎖しておき、利用後に空気を入れ替えるために解放します。温まった湿気の含んだ空気は天井付近に溜まりますので、これをストーブから離れた位置で、天井から15〜20cmほど下の壁に設置します。これはストーブが電気でも薪でも考え方は変わりません。

日本ではあまり見かけませんが、フィンランドではサウナの内装に合わせて木製の引き戸になっている換気口があります。壁の仕上げに合わせてオリジナルで作るのも良いでしょう。

まとめ

まずは基本的な換気計画の考え方についてお伝えしました。給気、排気、換気(メンテ用)の3箇所が必要で、設置位置の違いで体感が変わってしまうということがお分かりいただけたでしょうか。サウナの設置条件や規模によっても換気の考え方は変わってきます。例えば自然換気 or 機械換気のどちらが良いのか、換気口の大きさはどうしたら良いのかなど、細かく検討すべき内容は盛りだくさんです。ここでお伝えしたのは全てのベースになる内容ですので、今後はさらに情報整理して考察を深めていきたいと思います。

参考文献

Local Mile


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