「サウナの建設に関するトランプキンのメモ」を見つけてテンションが上がった話
最高のサウナ体験をしたい。そして、そのサウナ体験がどんな場所でも再現できるようなサウナ室の設計をしたい。そういう思いが沸々と湧いてきて、私の頭の中は常にサウナのことで頭がいっぱいでした。知床のサウナは最高の体験でしたが、もう少し定量的に、そして科学的、物理的にサウナを突き詰めて研究したい。そう思ってここ数週間いろんな文献を見たりWEBで情報収集をしていました。その中でも特に興味深かったのが北米在住のWalker Angellさんという方がまとめられているこちらの記事でした。
Local Mile
記事を読むとかなり専門的な内容になっていたので、サウナの研究者?設計者?なのかと思っていたのですが、どうやらそうではないようです。
サウナ以外にも、家、バイク、アスペルガー、カフェなどの記事もあり、それぞれがかなり専門的かつマニアックな内容になっています。驚かされるのがそれぞれの情報量と知見の深さです。特にサウナに関しては内容ごとにカテゴリ分けされていないこともあってか、一つのページに膨大な情報が詰まっています(ちなみに、アスペルガーの記事があることからも、自身でADHDだということを自認しています)。
冒頭ではアメリカのサウナと、フィンランドやヨーロッパにあるサウナの違いについて語られています。アメリカで言われているサウナ設計の常識と、フィンランドやヨーロッパで推奨されている内容の違いに気づき、それについて独自にまとめた内容です。
この他にもバレルサウナやキットサウナのレビュー、測定機器などの記事もあります。この中でも中心になっているのが3つ目の「サウナの建設に関するトランプキンのメモ」です。ここにはサウナとは?という話から、熱や空気、ストーブ別の換気計画、ベンチや天井の高さなどなど、サウナを作る上で必要な情報が盛りだくさんです。
彼はサウナの専門家ではないものの、VTTという技術研究機関の論文なども引用されていますので、その内容の多くは信頼できるものだと思います。また、記事の中で度々登場するのがラッシ・リッカネンの「フィンランドサウナ設計の教科書」です。この本は野田クラクションべべーさんから教えてもらった本でもあり、サウナを設計する上で必読書と言っても過言ではないでしょう。日本語に翻訳された本は比較的新しく、2024年4月に発売されています。
やや話は逸れますが、こちらの「サウナをつくろう」という書籍もサウナを設計する上で必読書です。換気の方法はもちろんのこと、床壁天井や建具、窓、ベンチの作り方など設計者として知っておきたい情報が満載です。出版したのは1992年と結構前ですが、今も変わらない基本的な情報が網羅されています。
「フィンランドサウナ設計の教科書」は私の愛読書?でもありますが、正直な感想としてLocal Mileのサウナの記事はそれをさらに上回る詳細な内容が記載されています。
これについては、私が強く共感しているところです。珍しく彼がここの部分だけ太字で記していることからも、本当に気持ちの良いサウナ体験を共有したいという想いがこの記事に詰まっています。また、アメリカに「サウナっぽいもの」が溢れていることに対する危惧の念が滲み出ているようにも感じられます。どこに所属している人でもなく(スポンサーもなく)このような発信をしているため、間違っている教えについてはやんわり否定しているところも好感度が高いです。
まとめ
というわけで、Local Mileというブログの、「サウナの建設に関するトランプキンのメモ」についての簡単な紹介でした。自分自身が疑問に思っていたことの答えがここにまとめられてたりしたので、この記事を見つけた時は一気にテンションが上がりました。是非とも書籍化してほしいぐらいの内容です。
これはあくまでもフィンランド式サウナ2000年の歴史における、知識と経験、技術の積み重ねをベースに本格的なフィンランド式のサウナを再現したい場合に参考になりますが、商業的な観点からこれを日本のマーケットにどう取り入れるかという点においてはまた別の話です。このような技術や知見を歴史から学んだ上で、それを日本でどう表現していくかについては設計者の手腕が試される部分だと感じております。
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