【交換記】Unit-X 高速化計画「タイヤ交換」【解説】
Unit-Xのタイヤ交換記です。ついでにチューブレス化の手順も解説します。
Unit-Xの目を引くのは艶やかなフレームではなく、まずその雄々しい大径タイヤです。
Unit-X 2021の標準タイヤは「WTB Ranger TCS 29x2.6"」。
セミファット寄りのタイヤで、通常の舗装路はもちろん、林道やちょっと荒気味の山道であっても、そのボリューム感と凸凹ノブによって安心して進むことができます。
一本で定価¥9,200-もする、中々のタイヤです。
確かに走行安定性はピカイチなのですが、万能タイヤではありません。具体的には「舗装路で走っているとゴリゴリ過ぎる」「舗装路ばっか走っているとノブがすぐ削れる」をデメリットとして感じることがあります。
走行距離3000 km程度で、センターノブが半分以上無くなっている。
「そりゃ本来の使用目的とは違うからね」と言ってしまえばそこまでですが、やはりUnit-Xを購入する層といえば自分のように「バイクパッキングしてみたいな〜。でもちょっと八ヶ岳林道みたいなもの気になるな〜」という方が多いはず。
必然、舗装路を走る割合が増えてくると「もう少し街乗り寄りなタイヤに変えてみようかな〜」という気持ちが湧いてきます。
実際、「Unit-X タイヤ」などで検索すると、グラベル寄りの少し細いタイヤに交換している方をチラホラ見かけます。
タイヤの候補
タイヤ交換の原則は以下の2点です。
①リム(ビード)直径(=タイヤ内径)が同一のものを必ず使用する。
②タイヤ幅を極端に変えない。
上記①②は「市販されている初期状態の標準タイヤと比較して」です。
リム直径とタイヤ幅はETRTO規格の数値を見ましょう。
ETRTO規格は「タイヤ幅(mm)ービード直径(mm)」で表示されます。
Unit-X標準タイヤの「WTB Ranger TCS 29x2.6"」はETRTOで「66ー622」です。
つまり①ビード直径が622 mmで、②タイヤ幅が66 mmから極端に変化しないタイヤが候補となるわけです。
わけですが、選択肢はとにかく少ないです。そもそも29インチタイヤの選択肢が少ない無い。加えて世界的な自転車用品の供給不足。「あっ、これ良さげ!」となっても、国内在庫を探すのは最初から諦め気味で行きましょう。
Unit-Xのタイヤ探しのポイントを挙げるとすると、MTBタイヤで探すよりも「グラベル」向けのタイヤで探した方がいいでしょう。
新しい分類なだけあって新製品が多く、流通在庫もそこそこあります。また標準タイヤからの乗り心地や走破性の変化も極端に変わらず、違和感を感じにくいと思います。
シュワルベ ジーワン・オールラウンド・パフォーマンス
というわけで遠路はるばるネーデルラント(オランダ)から半月かけてやってきたのがこちら。「SCHWALBE G-ONE ALLROUND performance ETRTO 57-622(29x2.25)」です。
ドイツ・ラルフポール社が製造販売する「シュワルベ」ブランドの中で、グラベル向けに分類されます。卓球ラバーのような小さなノブが特徴的です。
ETRTOは57-622。標準タイヤからタイヤ幅が9 mm小さくなります。
選んだ理由は「シュワルベのブランド力(安心感)」「ジーワンはいいぞ、というクチコミ」「TLE(チューブレスイージー)対応」などなど。
では早速、換装していきましょう。
チューブレスタイヤ⇨チューブレスタイヤの交換
標準タイヤは既にチューブレス化しており、また新しいシュワルベも当然チューブレス運用します(チューブ買うのが面倒なのもある)。
必要なものは次の3点です。
①シーラント
②チューブレスバルブ(バルブコアが外れるもの)
③コンプレッサーまたはブースター
まずはタイヤを外します。
Unit-X標準タイヤはとっても外しやすく、まず空気を抜きます。
次にタイヤに体重を掛けて、片側に「グイッ」と押してやると、片方のビードが外れます。
片側全周のビードを外したらタイヤをリムの外側に出し、もう片方のビードを外します。この時、内部のシーラントで周囲が汚れるので注意。
青いドロドロがシーラント(フィニッシュライン)。
はい、外れました。タイヤはまだ使えるので、後で洗っておきましょう。
次にリムの清掃です。リム内部に残った古いシーラントを完全に除去します。この時、「ビード部分」を特に念入りに清掃してください。ビードに異物が残っていると、この後チューブレス化した際に空気抜けの原因となります。
次に新しいタイヤを取り付けます。タイヤのビード部をまず片側だけリムに装着し、続いてもう片方のビードも取り付けます。
人によっては「片方のビードを取り付けた時点でシーラントを入れる」方もいます。特に「バルブコアを取り外せないチューブレスバルブ」を使用している場合は、このタイミングでシーラントを入れなければなりません。
一方で、「もう片方のビードも取り付ける」際は意外に苦戦することもあり、その際にシーラントが周囲に溢れて面倒な目に遭う(遭った)ので、基本的にはバルブコアの外せるバルブを使用して、後からシーラントを入れたほうが楽です。
次に「ビード上げ」をします。要約すると「タイヤをリムに固定する作業」です。チューブを使用する場合は「チューブがタイヤ内部から外側に膨張してくれる」ので、チューブによってビードを嵌めることができます。
一方チューブレスでは「空気を保持するチューブ」が存在しません。ではどうやってビードを嵌めるかというと、「瞬間的に大量の空気を送り込んでタイヤを膨張させる」ことでタイヤとリムを固定(ビード上げ)します。
「瞬間的に大量の空気」を送り込むには、通常のフロアポンプではほぼ不可能です。そのため機械的に空気を送り込む「圧縮機(コンプレッサー)」や「ブースター(インフレーター)」を使用します。
今回はシュワルベのタイヤブースターを使用します。
「通常のフロアポンプ(仏式)→ ブースター → バルブコアを外したバルブ」と接続します。
ブースターには弁が付いており、ここを閉じておくとブースター内に圧縮空気を溜め込める構造です。
今回はブースター内に120 psiまで圧縮しました。うまくいくと、動画のように「パコンッ!」みたいな音がしてビードが上がります。
ブースターを使用する際の注意点は「無闇に高圧にしない」ことです。空気を沢山圧縮するほど確かにビードが「パンパン!」と上がっていきますが、「タイヤ損傷」のリスクが上がります。特にビード近くの「ビードライン」の部分が負荷を受けやすいようで、瞬間的にタイヤの規定空気圧を超えるとビードライン周辺に亀裂が生じます。多少はシーラントが埋めてくれるとはいえ、空気漏れのリスクは上昇します。ブースターはなるべく低圧から試すようにしましょう。
ビードが全周に渡ってしっかり嵌まっているかどうかは、「ビードライン」を見て確認します。緑矢印の指す「凸ライン」がそれで、これが「見えない」or「途中で途切れている」場合はその部分のビードが上がり切っていないことを意味します。
ビードが上がり切っていることを確認したら、ブースターを取り外して空気を抜きます。次はいよいよシーラントの充填です。
バルブコアを外したバルブから、シーラントを注いでいきます。今回は定番シーラントの「STANS NO TUBE」を70 mL程度入れました。
小っちゃいバルブにシーラントを入れるので通常は針なし注射器(シリンジ)などを使用しますが、慎重にやればそのまま注ぐことも可能です。シリンジを用意するのが面倒だったからじゃ無いです、本当です。
シーラントを入れ切ったらバルブコアを取り付け、タイヤを揺らしたり転がしたりして内部にシーラントを馴染ませましょう。その後、タイヤ規定空気圧の最大値(今回の場合は58 psi)まで空気を入れて、数時間放置します。
シーラントを入れた直後はビード周辺からシーラントがちょっとだけ漏れ出ることがありますが、これは異常ではありません。このシーラントが乾燥・造膜してタイヤの密閉性を高めてくれるので、少量であれば拭き取らずにそのまま放置しておきましょう。
数時間静置したら空気圧をチェックします。この時、タイヤが「べにょんべにょん」になるほど空気が抜けていたら、何かしらの異常です。「ビードが上がり切っていない」「リムのビード部の汚れ等がある」「バルブ部の密閉性が低い」などが挙げられます。
空気圧が若干下がっている程度なら正常です。再度タイヤ規定の最大空気圧まで空気を入れ、一晩放置します。
チューブレス化するとチューブラーよりも空気圧の低下は早くなります。「1週間放置して10 psiしか下がっていなければ相当優秀」と考えていいでしょう。その感覚をもとに空気圧の減少具合をチェックして、許容範囲にあればタイヤ交換&チューブレス化成功です。
右が標準のWTB。左が今回交換したシュワルベです。タイヤ径がひとまわり小さくなりましたね。
タイヤ幅の変化はマイナス9 mmですが、並べて見るとタイヤ幅も感覚的にはかなり小さくなった気がします。
ここ数日雨雨雨雨......でまだ本格的に乗れてはいません。
明日は晴れるようなので、渡瀬遊水のあたりでも走ってきて、乗り心地を確認してようと思います。