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人生初のヒッチハイク!ありがとう、ZZ TOP・・・・カナダ旅行記②
前回の記事の続きです。
(あらすじ)
カナディアンロッキーを見るため、格安航空券で4月末のカナダに飛んだ私と友人M。しかし街もロッキー山脈も雪ばかりで真っ白け。
悔し涙にくれた私たちは、リベンジのため立ち上がった!
翌日再び旅行会社へ行くと、支店の人はローカル観光スポットを教えてくれた。
「グラシーレイクは透明度の高い湖で現地では人気なの。標高の低い山にあるから凍っていないと思う」
そう言って支店の人は、印刷の荒い地図に赤丸をつけた。
私が26歳の頃はスマホなどなく、ネット情報もまだまだ限られていた。
海外旅行へはガイドブックが必須だったし、マイナー観光地の情報は現地でないと知ることが出来なかったのだ。
ところで記事を書くにあたり、この湖を改めて調べてみた。
そして湖の名が「グラッシーレイク」であるとわかった。
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ああ、なんて美しい湖なんだろう!
私も見たかったなあ、生で。この目で。
そう、結論から言うと私はこのグラッシーレイクにたどり着けなかった。
だからヒッチハイクをすることになったのだが。
ちなみにグラッシーレイクについては、こちらをどうぞ参考に。
私たちはすぐにグラッシーレイクのある町へ向かった。
キャンモアはバンフから車で30分ほどの場所にある小さな町。
国立公園の指定から外れたため、メイン観光地にはなれなかったそうだ。
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そして町の人にたずねながら、なんとか湖への遊歩道へ。
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道は凍っておらず、木々にも葉が茂っている。
しあわせ・・・
浮かれた私たちは鼻歌を歌いながら、緑の山を楽しんだ。
そして3時間ほど歩いたところで、これはおかしいと気づいた。
支店の人は「遊歩道の入り口から1時間で着く」と言っていた。
なのに、ずいぶん人影を見ていない。
一本道だというのに、おかしいじゃあないか。
気づいたら急に怖くなってきた。異国の、人のいない山道にいることが。
連絡手段も持たず、軽装備で歩いている事実が。
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何度もいうがスマホはない。
唯一頼りの地図は、手汗でしわっしわになっている。
私たちは3秒で帰ることを決めた。
もう湖なんてどうでもいい。生きて帰れりゃそれでいい。
だが、ここで一つ大きな問題が立ちはだかる。
私たちは疲れてもう歩きたくなかったのだ。
絶対に、一歩も。
ここからまた3時間かけて帰るなんて、死んでも嫌!
でも死ぬのはもっと嫌!
じゃあ、どうすりゃいいの!
するとMが、山道の右側面を見上げてこう言った。
「ねえ、上の方にガードレールがあるよ」
ガードレールがあるなら、そこは車道のはず。
ほんなら車で帰れるやんけ!
ヒッチハイクしたら、ええやんけ!
人間疲れると大胆な行動をとるものだ。
私たちは枝を掴みながら道なき道を登り、ガードレールをまたいで車道に出た。
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いよいよ人生初のヒッチハイクである。だが車の影はまったく見当たらない。
鳥の鳴き声しか聞こえない。
仕方ないので、天に向かって「車きて!今きて!!!」と叫んだ。
だって他にどうしたらいいか思いつかない。
たぶん疲れで、頭がアレになっていたのだと思う。
私たちは誰もいない道路の真ん中で、10分ほど真剣に叫んだ。
すると
本当に車がやってきた。
天に願いが通じだのだ!!!
ただ、4WDの窓から片腕を出して運転しているのは、ZZ TOPそっくりなおじさんであった。
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急に不安になる。
ZZ TOPは安全なの?この人を呼び止めて大丈夫なの?
アレされて、ああなって、BANにならない???
だがよく見ると、彼は赤子を乗せていた。
赤子いるなら信頼できる!赤子がいれば大丈夫!!!
私たちが大きく手を振ると、ZZ TOPは車を止めて乗れよとジェスチャーをした。
天使・・長髭の天使がここにいた。
そして奇跡とは本当に起こるものなのだ。
私たちは彼と天に感謝した。
そして自分たちの日頃の行いに自信を持った。
だが乗って5分もしないうちに、私たちは息苦しくなった。
なぜならZZ TOPが一言も口をきかないからだ。
赤ちゃんのためか、車内には音楽もかかっていない。
ZZ TOPは自然体だから、たぶん気にする必要はないのだろう。
こっちも西洋人のノリとか無理だし。
だけどね、どうにも気まずいの!
日本人の血が沈黙に耐えられないと叫んでるの!
そこで私は赤子に目をつけた。赤子は出会ったときからむっつりしている。
機嫌が悪いのかもしれない。
これでも赤子と幼児には好かれる方だ。あやしの腕には自信がある。
この車内の空気を明るく変えてみせる、自分のために!
私は自信満々で、赤子におどけてみせた。
変顔で伝家の宝刀「いないいないばあ」を繰り出す。
だけど赤子はこれっぽっちも笑わなかった。
私のエゴをくみ取ったのだろうか。
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結局、沈黙のまま車は走り、ふもとに到着。
お礼を言うと片手をあげたZZ TOPは、むっつり赤子と共に去っていった。
なんだかどっと疲れた。
その原因は全部自分たちにあるというのに、なんというダメ人間っぷりか。
私たちはクタクタの体を引きずってホテルへ戻った。
反省は後回しだ。
そしてバンフ最後の夜を、泥のように眠って過ごした。
さて、この旅にはもう少し続きがある。
カナダの都会も見ておくかと、最終宿泊はバンクーバーにしておいたのだ。
バンクーバーはとても暖かく、春の兆しを随所に感じることができた。
都会なのに大自然とも見事に融合している、実に素晴らしい街だった。
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私は思った。
最初からバンクーバーに行けば良かった。
というか、バンクーバーが良かった。
というより、バンクーバーだけで良かった!!と。
そんなわけで、私はいつかカナダにリベンジしようと思っている。
そしてこの白とヒッチハイクの記憶を上書きするつもりだ。
その時泊まるのはもちろん、
バンクーバーと決めている。
*グラッシーレイクとグラッシーレイクへの自然道の写真は、「THE RYUGAKU」サイトよりお借りしました。
長い話にお付き合いいただき、ありがとうございました。
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