平泉寺白山神社から永平寺へ②〜煩悩・坐禅物語〜
こんにちは、ぷるるです。
8月初めに行った福井への旅。2日目のメインは永平寺です。
10年ぶりとなる今回の再訪を、私はとても楽しみにしていました。
永平寺は1244年に道元禅師により開かれた、禅宗寺院です。
現在進行形で現役僧侶が坐禅修行しているなんて、本当にすごいですよね。
観光客の多くはまず、「七堂伽藍」を見学するかと思います。
伽藍とは寺院の建物のこと。
七堂とは僧たちが修行をする主だった7つの場所を指すんです。
通用門を経て東司(お手洗い)、僧堂(坐禅・食事・就寝の場)、仏殿(ご本尊のお釈迦様がいらっしゃる場)、承陽殿(道元禅師のご真廟)、法堂(朝の勤行や法要の場)、大庫院(食事を作る場)、浴室(お風呂)、山門(THE修行ゲート)をゆっくりと巡ります。
どうして修行箇所にお手洗いやお風呂が入ってくるのか・・・
それは禅が「生活即修行」という精神に根ざしているからでしょう。
禅について一般的知識しかない私ですが、この考えには惹かれてやみません。
特に食事作りに重きを置く教えには、命への深い敬意を感じます。
机上の論理ではなく、『生きている宗教』。
永平寺の魅力は、そんなところにあるのかもしれません。
またここを訪れるにあたり、私はYouTubeで1977年放映のNHK特集「永平寺」を見てきました。
そのため美しく磨かれた回廊を歩いていると、若い僧侶たちが朝から力一杯拭き掃除をする姿が心に浮かびます。
あの番組に出ていた若き修行僧たちも、今では還暦を過ぎているはずです。
もしかしたら故郷のお寺で、ご住職になられているかもしれません。
そして彼らのご子息が今、ここで修行をされているのかも。
国、人、伝統の流れ。歴史とはその積み重なり。
ここでも過去から現在、そして未来へつながる道を感じ、私は胸がいっぱいになりました。
つながりの灯火を絶やさないよう、ささやかでも努力していきたいなあ、なんて。
ところで。
永平寺では、午前と午後に坐禅修行が体験できます。
ちょうどタイミングがあったので、私も参加してきました!
現役僧侶が、やさしく指導してくださいます。
ちなみに坐禅は専用部屋で組むのですが、実際に僧侶たちが修行する場を完全に模しているんですって。
その体験時間は50分!
「持つのか・・・?」と怯えたけれど、内訳は説明40分、坐禅10分でした。
じゃあ何を40分も説明するかというと、坐禅に対する心構えや、作法などです。(足がつったりしないように)、ストレッチも入念に行います。
ちなみにカッコ書きは私の想像ですので、念の為。
坐禅の説明内容は、曹洞宗のサイトで見ることができます(図入り!)。
ご興味ある方はぜひ!
そして説明の後半には、視線の指導もありました。
「目は薄く開いて、下方を見てください」
なるほど、半眼というやつですね。
それって、つまりあの方の視線ですよね?
そう、弥勒菩薩!!
広隆寺の弥勒菩薩像・・・
その穏やかな慈愛の眼差しを前にすると、涙が出るのはなぜでしょうか。
こちとら煩悩の徒。そのような眼差しには程遠い存在です。
でもその気になりやすい資質だけは、豊富にありました。
御姿を思い浮かべていると、弥勒菩薩の御顔が自分と重なります。
それに比すように、心はどんどん静まっていきました。
私が仏像か、仏像が私か。
思い込みの勝利。このまま坐禅に入れたら・・・。
そう思っていた時、僧侶がこうおっしゃったのです。
「ところで警策ですが・・・」
警策だって!?
かねてから警策に興味を持っていた私は、一気に心乱されました。
「皆様がご自身で心の乱れを感じた時、首を左に傾けてください。その時に打たせていただきます」
なんと!
現代の警策は「おねだりシステム」だった!
コンプライアンスの遵守に努めた、ということでしょうか。
さすがの永平寺も、時の流れには逆らえない部分があるのですね。
でも、問題はそこではありません。
問題は、その言葉で、私の煩悩が全開になったという点です。
「う、打たれてみたい・・・」
震えるぜ、ハート!!!(by ジョジョの奇妙な冒険)
好奇心が、エセ弥勒の仮面を引き剥がした瞬間です。
やはり坐禅といえば、警策。
アレのおかげで場が締まる。アレのおかげで皆、真剣に。
それに普段、僧侶に喝を入れてもらえる機会などない。
この願いはごく自然なものではありませんか?
もちろん坐禅の場で心乱せば、叶うことでしょう。
でも向こうから「お前、乱れとるやないか!」と叱られるのは、なんか嫌だ。
その点「おねだり警策システム」ならば、そんな葛藤は不要。
こちらの望んだ時に、喝が与えられるのです!
警策本来の意図に沿っているかはともかく、私はとてもワクワクしました。
こりゃ、警策ってもらうしかあるまい。
残る問題は、どのタイミングでおねだりをするかです。
開始早々はちと恥ずかしい。やはり気が熟した中頃が妥当だろう。
でも中頃かどこかわからない。よし、50を数えたら頼むか・・・
いつしか私は、完全に警策煩悩に飲み込まれておりました。
そんな中、僧侶の合図で坐禅がスタート。
心静める風を装いながら、カウントダウンを始める私。
そしてちょうど5つを数えた時でした。
「ピッシー!!!!」
物音ひとつしない部屋に、突如響き渡る破裂音。
警策です。
なんと開始(多分)1分もしないうちに、誰かが首を傾けたのです!!
えーっ、早すぎない?
まず己で心静める努力をしたら?
それとも、私と同じ願望を抱いていた?
この時すぐ、首を傾ければよかったのかもしれません。
でも私は、あの鋭い警策音に、すっかり怯えてしまったのです・・・
だって、ものすっごく強い音したから!あれ絶対に痛いはず。
いや、音ほど痛くないって噂は聞いてるし。
でも実際叩かれた人に聞いた話じゃないわけで。
いつしか心は、エンドレス問答に突入。
傾けるか、傾けないのか。
打たれるか、打たれないのか!
行きつ戻りつしているうちに、時は流れ・・・
僧侶の穏やかな「はい、終了です〜」の声で、我にかえりました。
そう、貴重な10分を煩悩まみれに過ごしてしまったのです!
なんということでしょう・・・・
冗談めかして書きましたが、終了後はとてもしょんぼりしました。
横で夫が充実の表情を浮かべているのも、憎い。
肩を落として伽藍を出れば、木々の間から陽が差し込んでいました。
そして真剣な面持ちでカメラを構える外国人観光客の方がひとり。
坐禅直後の私よりも、彼女の方が無の心でいるみたい。
集中による美が、彼女から発散していました。
正面に見えるは、山門に入る手前の「唐門」です。
門の手前に置かれた「立入禁止」の4文字は、今の私を象徴しているようでした。
確かにこの山門をくぐる資格、私にはなかろう。
ならば今すべきは「反省」の2文字。
私は永平寺からの帰り道、心中で誓いました。
これからは煩悩に惑わされぬよう、日常生活という修行に努めます。
そして次にこちらを訪れるときは。
絶対に警策体験をいたします、と。
それが良いのか悪いのか・・・・
今後の人生が、先行きを導くことでしょう。
神聖な場を続けて訪れることができた、実に良き福井旅でした。
再びこの地を訪れるのが、本当に楽しみです。
一旦、完
<どうでもいいおまけ:他の観光地3点>
行ってよかった、福井の名所!ご参考までに駆け足でご紹介を。
①一乗谷朝倉氏遺跡博物館
織田信長とも渡り合った戦国武将「朝倉義景」を中心とした、博物館です。
展示の工夫が面白く、当時の世相や朝倉氏の栄枯盛衰を知れます。中でも朝倉館の原寸再現は、見応えがありました。
予約すれば、衣装体験も楽しめますよ〜
ちなみにここから車で5分ほどの、「朝倉氏遺跡」も良いです。
当時の侍や農民の暮らしの再現が、地味なんだけどリアルで。
私は朝倉義景というと、大河ドラマ「真田丸」でのユースケサンタマリアの印象。故に、ずっと彼の顔が浮かぶのにはほとほと困りました。
だってかなり性格がアレの役だったから。表情がこれまた嫌な感じで。
ユースケ・サンタマリア、若い頃は可愛かったのになあ・・・
②福井県立恐竜博物館
福井は恐竜化石の一大産地!
だけど私は恐竜にとんと興味がないので、ここ飛ばしたんです。
でもでも!!
後からリンクさんの記事を読んで、とーっても後悔しました。
博物館は新しいし、展示は工夫いっぱいで面白そうだし、こりゃ老若男女楽しめそう。
行けばよかった。
行けば、よかったー!!!
なのでこれから福井旅行される方は、私と同じ轍を踏まないように。
ぜひぜひ、訪れてみてくださいませね!!
③蟹かに亭 水仙ランド店
福井といえば蟹だけど、当然夏には関係がない。
だから越前海岸をドライブ中に、ここへ入ったのはほんの気まぐれ。
蟹かにという、ふざけた店名。
水仙ランドという、ピンとこない支店名。
まったく期待していなかったのですが、実にお刺身、美味しかったそうです!
新鮮で、味がしっかりしていて、ご飯おかわり自由に大興奮してました。
この時期は、イカ刺しを押していて、こちらがまた美味いとのこと。
また口コミにもありましたが、接客がとっても良い。
飲食店の娘としては、接客の態度が気になるんです。本当に客足を左右しますからね〜。
越前海岸を一望できるロケーションといい、当たりのお店でした。
ちなみに・・・味の感想が間接的なのは、食べていないからです。
私はソースカツ丼を注文したんで。
ソースカツが好きというより、海産物が苦手なんですよね。
これ本当に損ですよ、日本に生まれといて。
個人的にはここのソースカツ丼、あまりお勧めしないです。
味は美味しいんですけど、「柔らかカツ」なんですよ・・・
ソースカツ丼は、薄くても硬くカリッとしていないと!
あ、柔らかカツ派の方には良いのか。余計なお世話でした。
それに普通はお魚選びますよね。全く余計なお世話でした・・・
GOMENーNASAI
本当の、完
ご精読ありがとうございました。
(*)マークのある写真は、写真ACさまよりお借りしました。どうしても撮るの忘れちゃうんですよね・・・困ったものです。
真実の、完