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【note版】巨大な白壁7姉妹「嗚呼絶景かな」英セブン・シスターズ
「いいところがあるわ」とスペイン人ママに教えてもらい、一生懸命携帯メモに書き入れた観光地、セブン・シスターズはイングランド南部のイースト・サセックス州にある、イギリス海峡に面した白い崖の連なりです。
「へぇ、そんなきれいそうなところが!」と当時は驚きましたが、いまとなれば「イギリス在住(しかもわりと南部に住んでるくせに)で、知らないのはモグリだよね〜」と言えるほど、よく知られた名所のひとつでした。
蒼い空にエメラルドグリーンの海、そして光り輝く真っ白な崖ー。天気に恵まれれば、これら3色のコントラストを思う存分堪能できるこの場所は、ようやく本格的な暑さがやってきたこの季節にピッタリ。
※以下は他媒体に掲載中の記事から転載(自著)した、過去のものです。noteには私の個人的な記録として一部割愛、再編集(くだけた文調や写真のキャプション、絵文字など)したものをお届けします。フルバージョンの原文はこちらをご参照ください(2020年9月20日執筆分)。
崖の白さはいったいどこから?南部に広がるチョーク層
都会の喧騒から逃れて、気分をリフレッシュさせたいロンドンっ子が多く目指すという「セブン・シスターズ(the Seven Sisters)」は、なんといってもその白い崖がいちばんの見どころですが、岩壁の白さは数100万年もの大昔に水没した際、柔らかな石灰岩が海水で押し流され、側面に付着してできたものだといわれています。石灰岩とはチョーク(chalk)のことで、黒板に使われるチョークの語源でもあります。
別のイングランド南部地方のサリー州では、ブドウ栽培が盛んでワイナリー(関連記事)も点在しますが、これはブドウ作りのカギを握るチョークの地層が多いためです。このことからも、イングランド南部は沿岸部からかなり内陸の方までチョーク層が広がっていそうです。
「セブン・シスターズ」名前の由来
ちょっぴり皮肉屋で、なんでも独自のあだ名をつけるのに長けているイギリス人は、建物やお菓子など、聞いただけでは想像がつかないユニークな名前をつけることが好きです。それに対し、セブン・シスターズという名前の由来は諸説ありますが、一般的に浸透しているのは、海水に侵食されて7つの丘になった崖が「歳の違う巨大な姉妹に見えたから」というもので、意外にシンプルです。
それぞれの丘にはきちんと個別の名前がつけられているのですが、単に「短い丘(Short Brow)」「平らな丘(Flat Hill)」など、姉妹にしては色気のかけらもないネーミングのものもあります。「昔の人って想像力がないわね」なんて言っている現代のイギリス人ライターもいて、やはりそこはイギリス人、時代を超えても皮肉たっぷりな点は健在です。
選べる崖までのルート「備えは万全に」
セブン・シスターズの崖はシーフォード(Seaford)とイーストボーン(Eastbourne)という町の間に位置しており、一帯はサウス・ダウンズ(South Downs)国立公園内にあります。シーフォードとイーストボーンの、どちらの方面からでも崖にたどり着くことができますが、象徴的な7姉妹の全貌を表側から拝むのであれば、シーフォード側から向かう必要があります。
シーフォード寄りに「セブン・シスターズ・カントリー・パーク」というビジター・センターがあります。ここから各方面のトレッキング道路が整備されているということもあり、ロンドンから最寄りの駅まで電車でたどり着いたあとは、バスでこちらに向かい、ここを拠点に崖を目指す人も多いようです。
ただしコースにもよりますが、道がぬかるんでいたり川に阻まれたり、海岸沿いを突っ切って進むつもりが、時間によっては満潮で目の前に崖は見えているのに大きく迂回しなければならない、という状況もあります。そのため足元の装備や服装には十分に備える必要があります。実際、観光客のなかには登山靴にリュックサック、スティックトレッキングポールを携帯したグループをいくつも見かけました。
軽装で楽しめるハイキング地帯「バーリンギャップ」
シーフォード寄り、イーストボーン寄りのどちらにしても、崖までの距離は徒歩のみだとかなりのものになります。急な坂道はどこにもないとはいえ、人によっては崖にたどり着く前に力尽きてしまう可能性もあります。
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そんなときは市バスや観光バスで崖の近くまで移動することをおすすめします。夏季限定ですが、イーストボーンから出ている「Hop on Hop Off Tour」は、終日乗り放題で2階が屋根なしのオープンバスなので、風に揺られてとても気持ちよさそうでした。これならビーチサンダルにワンピースのリゾートルックでも、ラクラク散歩を楽しめます。
■Hop on Hop Off Tour
https://www.visiteastbourne.com/things-to-do/eastbournes-open-top-bus-p1434561
そうして、「バーリンギャップ(Birling Gap)」で下車すると、そこはもう目的地であるセブン・シスターズの崖が!ゆるやかに伸びる丘をひとつ、お好みでその先ふたつや3つと、自分のペースで歩みを進めることができます。
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バーリンギャップはトイレやカフェ、おみやげショップも併設されているので、ここまで本格トレッキングをしてきた人にとってもちょうどいい休憩地点。いわばサービスエリアのような場所です。
丘は勾配がきつくないので、家族に連れられた赤ちゃんから自分で歩ける幼児、ご高齢の方まで老若男女問わず登れます。途中草っ原の地べたに座って、ノンビリしている人たちもたくさんいました。
焦らず探すベスト撮影スポット
バーリンギャップでは、ほんの少し坂を上るだけでもう白い崖を目にすることができます。海、空との対比もすばらしく、すぐに大興奮してさっそく写真をパシャパシャと撮ってしまいがちですが、もし崖を背景に自撮りや記念写真を撮りたいなら、まだまだ、慌てなくても大丈夫ですよ〜。
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一応、この手前のベンチまで上がった方がいいという、ほんのアドバイスです。
石塀があるところはすでに圧巻の景色ですが、その高さだと石塀が写り込んでしまい臨場感が出ません。もう少し我慢して、ある程度登ったところにベンチがあるので、そこに腰掛かけて撮ると、白い崖がまるで絵画のような背景となり、とっておきの1枚が撮影できます。
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周辺にはカモメが飛び交い、この日は見かけませんでしたが、野生のポニーもいるそう。それを裏づけるかのように、丘の草地には小さくコロコロで、ウサギのフンのようなものがたくさん落ちていました。
寄るな危険!「崖の淵には注意」
すばらしい景色は海だけではありません。丘の内陸側にはトゲトゲした葉っぱの茂みが広がり(ハーブが自生するそうなので、ひょっとしてローズマリーやタイムといったハーブの低木だったのかもしれません)、さらにその先の道路側は、見渡す限りの放牧地帯でに埋め尽くされています。
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丘の上にいるとさえぎるものがなにもなく、空を間近に感じます。あまりの気持ちよさに目を閉じて深呼吸したり、光り輝くエメラルドグリーンの海を眺めてウットリしたりと、おおいにリラックス。都会人のロンドンっ子たちが、こぞって訪れるのもわかります。
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きれいな景色に夢見心地になっても、足元にだけは十分気をつけてください!セブン・シスターズの崖は、柔らかいチョークが積み重なってできたものです。元来もろい性質なので、突然崖の一部がはがれ落ちたり、端っこはとりわけ危険です。
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写真を撮ったら移動はなるべく内側を歩いた方が安心です。転落死はけっこうあるそうなので😱
柵もなにもないがゆえに、ダイナミックで美しい光景を楽しめますが、そのぶん危機管理は徹底しましょう。特に小さい子供連れの方は、絶対に目を離さないようにしてください。
ゲストハウスになった、ユニークな元灯台
引き続きビーチーヘッド(Beachy Head)の丘を登っていくと、少し先にひとつめの灯台「The Belle Tout Lighthouse」が見えます。「すべての美しいもの」という名前のこの灯台は、1832年からセブン・シスターズ一帯を見守り続けた歴史ある建物です。
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1902年に灯台としての役割を終えたあとは、第2次世界大戦でほぼ全壊。しかし時代とともに住居や喫茶店として生まれ変わり、50年代に入ってから大幅に改築されました。その当時は公共放送局のBBCが所有していたため、数々の撮影がこの灯台で行われ、イギリスのランドマークとして一躍有名になりました。
2008年からは別の個人に所有権が移り、2年間かけてさらなる改装を施された結果、現在ではゲストハウスとして利用されています。それぞれテーマごとに名づけられた6部屋のゲストハウスはとてもかわいらしく、ラウンジから360度ぐるっと見渡すイギリス海峡やセブン・シスターズなどの眺望は圧巻です。敷地内には飲み物やアイスクリームを出す売店があり、歩き疲れた観光客が喉の渇きを癒していました。
■The Belle Tout Lighthouse
・住所: Beachy Head Eastbourne East Sussex BN20 0AE イギリス
・URL: https://www.belletout.co.uk/
ロケ地としても有名なセブン・シスターズ
ゲストハウスの灯台を越えるとゆるやかな下り坂になり、次の丘の前にもうひとつの灯台が見えます。こちらは地名そのままの「the Beachy Head Lighthouse」という、赤と白の縞模様が愛らしいものです。「まるで絵本から抜け出たよう」と形容され、イギリス人にとっては子供の頃に読んだ絵本を思い出し、ノスタルジーに浸ってしまうようです。
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セブン・シスターズの魅力は、なんといってもあの崖の白さにあります。イギリスには石灰層の崖がほかにもいくつかあり、特にケント州のドーバー(Dover)海峡に面しているものは見た目も似ているので、セブン・シスターズと混同されることがよくあります。
しかし、ほかの地域の白い崖と比べても、セブン・シスターズの崖の白さは群を抜いています。ほかの崖はさまざまな侵食から守るため、過剰に保護されているそうです。そのどこがいけないのかわかりませんが、形状は保たれているものの雑多な草などが表面を覆ってしまい、白さが損なわれてきているのが現状のようです。
一方でセブン・シスターズは、自然の摂理に任せるがまま侵食させているので、年間数10cmは波に削られています。そのため、常にフレッシュな白さが保たれ、あの幻想的な美しさを求めて、映画の撮影にやってくるロケ隊が多いそうです。
実際にこれまで、『ロビンフッド』や英国アカデミー賞などで数々の受賞をした『つぐない』(原題: Atonement)、『ハリー・ポッター』などといった数々の映画作品のなかで、セブン・シスターズが舞台になるシーンが登場してきました。
海岸側から見上げる迫力の白い崖
丘はそのあともまだまだ続き、坂もきつくないのでそのままいくらでも歩けてしまいそうですが、キリのよいところで引き返し、今度は崖を下から仰ぎ見るためにバーリンギャップの浜辺に降り立ちました。
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セブン・シスターズの海岸は、イギリスのビーチに多い岩浜です。岩といっても荒いゴツゴツしたものではなく、河原の小石のように丸くスベスベしています。砂浜と違って足も汚れず、履き物も傷つけないので個人的には好きなタイプです。
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裸足で歩けばツボが刺激されて気持ちイイ〜。石は石灰岩なので灰色や真っ白なものがほとんどで、珍しいです。見たことのないハート型の石も見つけ、水際で遊ぶよりも先に、おもしろい石探しをすることに夢中になってしまいました。
はじめは石に、足と気が取られ下ばかり向いていましたが、ふと顔を上げてみれば、そこにはいましがた歩いてきた丘の崖がドーン!と、とてつもない迫力でそびえ立っていました。
イギリスの自然といえば険しい山などなく、平原の多い牧歌的な風景ばかりだと思っていましたが、セブン・シスターズの崖はそれまでのイメージを覆すほどのたくましい雄姿でした。
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この真っ白な「壁」をバックに撮れば写真映え間違いなしですが、なかにはあたかもロック・クライミングをしているかのような構図で、岩によじ登っている姿を写真に収めている男性陣もいました。見るぶんにはおもしろかったですが、チョークの岩はもろいことをお忘れなく。突然上から崖が崩れ落ちてくることもあるそうなので、撮影時もあまり崖に近寄りすぎないよう気をつけてください。
今回はバーリンギャップを拠点に、セブン・シスターズの崖から眺める絶景を紹介しましたが、逆にセブン・シスターズの全景を写真に収めたい場合は、シーフォード・ヘッド〜カックミア・ヘブン(Chuckmere Haven)のルートがおすすめです。
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シーフォード、イーストボーン間もすべて徒歩で移動することが可能なので、体力と時間を考慮して挑戦してみるのもよいかと思います。その際は6〜7時間はかかるので、歩きやすい靴と服装で無理をせず、休憩を挟みながら行ってみてください。「一生のうちに見ておきたい絶景リスト」に、イギリスのセブン・シスターズを加えるのはいかが?
■セブン・シスターズ(The Seven Sisters)
・住所: South Downs National Park S Downs Way Eastbourne BN20
・URL: https://www.sevensisters.org.uk/
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