【note版】バーンズ・サパーに欠かせないスコッチを「本場の蒸溜所で飲み比べ」てみた
先月1月25日は、スコットランド詩人のロバート・バーンズの生誕を祝う、イギリスで毎年恒例の「バーンズ・ナイト(関連記事)」があった日でした。バーンズの詩を朗読しながら親交を深める、こちらの伝統行事に欠かせないアイテムといえば、スコットランド郷土料理のハギスとスコッチ!
ということで、今回は本場スコットランドの蒸溜所で試飲してきた様子をレポートします。ちなみにタイトルの「バーンズ・サパー(Burns Supper)」とは、このバーンズ・ナイトの日に出される食事のことで、バーンズ・ナイトそのものを指す(別名として)場合もあります。
スコットランド、日本、アメリカ、アイルランド、カナダのウイスキーは、「世界5大ウイスキー」と呼ばれていますが、なかでもスコットランドのものはスコッチ・ウイスキーといいます。
「ウイスキー」の語源はスコットランドで話されている言葉のひとつであるゲール語で、「生命の水」を意味する「ウシュク・ベーハー(Uisge Beath)(出典:“The Water of Life: Single Malt Scotch Whisky” Horizon Beverage February 2017.)」だといわれています。
ウイスキー愛好者から「聖地」と呼ばれているアイラ島など、離島にあるスコッチ蒸溜所も魅力的ですが、交通の便で躊躇してしまいそうです。その点、「グレンキンチー蒸溜所(Glenkinchie Distillery)」は首都のエジンバラから東に20kmほどのロージアン地方に位置しており、シャトルバスも市内から出ているので気軽に訪れることができます。
プライベート・ツアーで学ぶグレンキンチーの歴史
朝11時、ツアー参加者11人全員が受付に揃ったところで、鐘が鳴らされました。この日の案内人は、タータン・チェックのベストを粋に着こなしたスコットランド紳士、ウィルさんです。
驚いたことに、彼は参加者全員の名前をきちんと覚え、随所でそれぞれに呼びかけてくれました。サービス業の鑑ともいえ、こういったところが大型観光施設では味わえない魅力のひとつであり、「小さな差異が大きな魅力」となることをつくづく実感しました。
ツアーが始まり、まずはグレンキンチー蒸溜所の歴史や業務内容についての講義を受けます。ひとつめの部屋に入って真っ先に目にするものは、世界的に有名なスコッチ・ブランド、「ジョニー・ウォーカー」の創始者であるジョン・ウォーカー氏の像です。
シルクハットに手をやり、燕尾服でステッキを片手にさっそうと歩く姿が、ブランドのアイコンとしてウイスキーのラベルになっています。エジンバラ市内でも町のあちこちで看板や壁絵などを頻繁に見かけましたが、像、それも黄金色とは珍しいです。
ジョニー・ウォーカーは、複数の蒸溜所の原酒を混ぜて作られるブレンド・ウイスキーであり、グレンキンチーはその原酒を提供している蒸溜所のひとつです。
1825年、農民であったレイト兄弟は原点となるミルトン蒸溜所を建て、1837年に現在のグレンキンチーに改名しました。途中、売りに出され一時は関係のない製材所になるなど紆余曲折を経ましたが、1880年にはグレンキンチー蒸溜所として復活、第二次世界大戦中、ほかの蒸溜所が操業停止に追い込まれるなか、影響を受けずに操業を続けることができました。
現在はイギリスの大手酒造企業であるディアジオ社の傘下にあり、その主力製品で世界でもっとも普及しているスコッチ、「ジョニー・ウォーカー」のブランドを支えています。
製造工程の見学「強烈な刺激臭」
社史を頭に入れたあとは、実際にウイスキーを作っている現場の見学です。スコッチといえば、香りづけに使われる泥炭「ピート」が欠かせません。上を向くと麦芽を置いて下からピートを焚く天井が、当時のままに残されていました。こちらは現在使われておらず、展示用とのことです。
ウイスキーの原料は麦芽、モルト。途中まではビールの工程と同じだとウィルさんが説明してくれました。麦と水を混ぜて糖化、ビール状になった麦汁を発酵させ、そのもろみをポットスチルと呼ばれる銅製の蒸溜機に入れます。それを2度蒸溜し、最後は樽に入れて熟成させます。
実際にこれらの過程をすべて見学することができるのですが、いちばん始めの麦芽に湯を投入し、糖化させている糖化槽(Mash Tun)、そして発酵エリアに1歩足を踏み入れると、強烈な臭いが鼻を突き抜けました。
これまで嗅いだことのない……正直、クサい……。
巨大な蓋つきの発酵槽(Washback)の見かけは、日本酒を作る木桶と似ています。ビールの糖化槽もいく度か見学したことがありますが、どれもこのような強い臭いはなく、驚きました。
こちらのウェブサイトには「ゆですぎたブロッコリー(出典:“GLENKINCHIE DISTILLERY” SCOTCHWHISKY.com.)」のような臭いが発生する、と書かれていますが、そんな生やさしい臭いではありませんでした。
軟水を使うことが一般的であるなか、グレンキンチー蒸溜所は地元で湧き出る硬水が使われているそうですが、それが原因かどうかは定かでありません。ウイスキーが納豆と同じ、発酵食品の1種であることを思い出させてくれるコーナーです。
熟成樽「魅惑の香り」
ツアー最後の締めくくりは、ズラリと並んだ熟成樽の見学です。ウイスキーは新品の木樽、あるいはバーボンやワインなど、すでにほかの酒を熟成するために使われた樽を使用し、それによって味の個性が生まれます。
糖化時の臭いとは違い、こちらの暗室では甘い「よい匂い」が充満しています。ウィルさんが樽の蓋を開けて、ひとりずつ順番に匂いを嗅がせてくれました。
お待ちかねの試飲タイム
伝統的なビクトリア朝の赤レンガ造りが特徴のグレンキンチー蒸溜所は、2020年に巨額を費やし内部を全面改装しました。そのおかげで館内は、受付から飲食できるバー・エリアまでどこもモダンでピカピカです。
複数ある試飲ルームもオレンジ色の照明に包まれ、おしゃれで落ち着いた雰囲気です。各席にはそれぞれグラスに入った3種のウイスキーが注がれ、運転者には持ち帰り用の小瓶が、子供にはジュースが提供されます。
正面の壁には「フルーティー」、「スパイシー」などと書かれたカラー・チャートならぬ円型の味覚表が掲示され、はじめはロックで、次に水を数滴垂らしてどのような変化が味に起こるか、皆で自由に話し合います。
ツアーも終盤。名ガイドのおかげで参加者とも和気あいあい、楽しいひとときを共有できました。そのあとはバー・エリアに移り(試飲中のドリンク持ち込み可)解散です。
蒸溜所限定ウイスキーや、グッズが買えるみやげショップ
グレンキンチー蒸溜所のスピリッツは、ジョニー・ウォーカーなどほかのブランドに原酒として提供されることがほとんどで、シングル・モルトとしての販売はごくわずかです。
一般的に流通している公式ラインアップは12年もののみですが、受付横のショップでは年数表示がないほかの種類や、6000本限定リリースの小瓶など、蒸溜所でしか入手できないものも置いてあります。
イニシャル・ロゴ入りのトートバッグや衣服、小物なども上質で洗練されたデザインです。原酒を自分で瓶に詰めて持ち帰るサービスもあり、ウイスキー好きにはたまりません。
今回参加したツアーは1時間半で3種類を試飲するものでしたが、倍の6種類を試飲できるコースもあります。冒頭でも触れたとおり、スコットランドのウイスキー蒸溜所といえば、北部の離島までフェリーで苦労して行くなど、たどり着くだけでもたいへんな場所もあります。一方でグレンキンチー蒸溜所はエジンバラから日帰り、短時間で参加することができ、たいへん便利です。
蒸溜所の内部は全面撮影禁止のところも多いなか、写真が撮り放題な点もうれしい限りです。ご当地ならではの、スコットランドらしい体験をされたい方にもいち押しの観光施設です。
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