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小さな彼2

 わたしの彼の家にはテレビかなくて、防音シートに囲まれた真っ黒なラバーの壁で囲まれています。話す声が下のカトマンズの夫婦にも聞こえないほど遮音されていています。二万円の賃貸のその後部屋では大音量のロックがかかってます。
 その中でわたしはIKEAのパンダのぬいぐるみを抱きしめて、「私に不似合いなこんなこと場所にもイバショってあるもんだなあ。」と感じました。(ただし、狭い空間の為、うろうろしすぎると、いろんなものにぶつかり、彼がそっとそこに置いてある大事なものが落ちたり無くなったり、かろうじて刺さっていた壊れかけの家電のコンセントも、触るだけで抜け落ちて大変になりました。)
 調理器具とエレキギターを、同事に使うとブレーカーが落ちるので使えません。そんな時の彼は、理路整然とした声色で、顔色一つ変えず、「さわるなと言ってますよね。」と言います。(触ってないんだけどね。)(怒っていないと言っていますから、注意されていると思うようにしています。)
 また、年間通して水風呂です。私が行くときだけ、ガスを通して欲しいと頼みました。だけど、訪ねた冬の1月にガスの払いを忘れで水しか出なかった時には。あまりの寒さに泣いてしまいました。
 シルベスタースタローンをまねて、一年中彼は、水風呂らしいです。だから、お泊まりするときは、わたしも水風呂に入らなければいけません。
 おそらくわたしとは違う教育を受けた彼は、大学には行かず、好きなものを追い求めて高校生を卒業して夢追い人になりました。音楽の道に夢いっぱいで進んでいます。
 不器用で清く、シニカルで賢く、お金がないけど、ケチでなく、天使のような笑顔で、残酷に正しいことを話し、依存という気持ちを知らず、悪に対しては瞬時にひねり潰します。
 尊敬しています。毎日心の中で、泣いていましたから彼に会えたことを感謝もしています。

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