新たな地獄のはじまり
それから私は絶好調期に入り
はじめて「人生って楽しいな」とか
「自分って結構いけてるな」と思えるようになった。
会社では、通常業務に加えて部長秘書に推薦され、
部長にいつもかわいがってもらっていた。
ただ、仕事はとんでもなく忙しかった。
私は配属面談で
「一人暮らしだから、どんなに忙しくてもいいから残業代もらえる部署がいいです」
とふざけた希望を伝えて(当時は至って真面目に)
まさしくその通りの
部署に配属されたのだ。
うちは商社だったから、
市場を見てサプライヤーとバイヤーの需給バランスを考えていくのが
仕事なのだけど
どんなに計画を立てても
どこかで材欠を起こしたり
反対に在庫が余りまくって転売先を探すことに
いつも血眼になっていた。
(材欠=死刑 くらいのイメージ)
鉄鋼関係の古い業界のおじさん相手に仕事するから
怒鳴られることもあったし
あまりにもどうしようもない状況では辛すぎて泣いてしまうこともあった
毎日なにかがどこかで炎上しているみたいなそんなイメージ。
だから、ミスることが許されないのだ。
私は営業事務だったから、
営業からの指示を受けて基本的に動くのだけど
その指示がミスっていると、自分の仕事が台無しになるから
営業からヘマされるたびに
「コミュ障かよ!」とか
「お前がやれよ!」とか
「そんなんで私の2倍も給料もらってんじゃねぇよ」とか
そんな悪態を心でつくようになった。
特にヘマする営業には
「仕事できないやつ」レッテルを勝手に貼りつけ
仕事終わりに
その人の「遅延している to doリスト」をずらっと書いたものを
ペッッッとデスクトップに貼り付けて
ハイヒールをかつかつしながらオフィスを出ていっていた。
そんなことを繰り返しているうちに
いつも心がトゲトゲしていくことをなんとなく感じていたし
人の良いところを見つけることが自分の得意だったはずなのに
いつの間にか人の悪いところしか見えなくなって
「どいつもこいつもしょうもない」と感じるようになっていった。
私はまだ気づいていなかった。
この言葉たちが実は自分に向けられていたことを