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怖い話【 新聞部 】

※ 初めてのお読みの方は【はじめに】をお読みください。


これはある中学校の話。

そこには新聞部があった。

新聞部と言うのはクラブのひとつで、学級新聞のようなものを作り、それを廊下などに貼り出す。

そして、全校生徒に見てもらおうというクラブだ。

1学期も終わり、夏休みに夏合宿を学校でしようということになった。

7月の後半にみんなで学校に集まる。

夏休みと言っても登校日が3日ほどあるので、その時に読んでもらう新聞を作ることになった。

その中の記事の一つに怖い話を書こうという企画が持ち上がる。

そして、夏合宿初日の夜に新聞部のみんなが部屋に集まった。

集まったのは女の子ばかり12人。

みんなそれぞれが怖い話をひとつしていって、おもしろかったものを3つ記事にする。

テーブルを真ん中において、ロウソクを4本立てる。

電気を消すと辺りは薄暗くなり、みんなの顔はよく見えなくなり、体だけがボヤっと見えるくらい。

そして、ひとりずつ怖い話をしていった。

最後から2番目、11番目にお話をしたのは中学2年の富子さんだった。

「この話、話すかどうか迷ったんだけど…」と話し始める。

「わたし1年生の時、しばらくお休みしてた時があるでしょ。

半年くらいだったと思うけど。

実は心臓の病気で、お医者様からもう助からないって言われてたの。

助かる方法としては心臓移植しかないって。」

富子さんは、心臓を提供してくれる人を病院でずっと待っていた。

「みなさんもご存じかと思うけど、去年多佳子さんが事故で亡くなったでしょ。」

多佳子さんの家は車通りの多い道路に面していた。

ある日、猛スピードのトラックが多佳子さんの家に、ドーーーんッ。

家は崩れ、その時たまたま多佳子さんが家にいた。

多佳子さんは即死。

のどの所に柱がゴンっ!と直撃した。

すぐに人が集まって来て、多佳子さんは救急車で病院に運ばれた。

その病院は富子が入院している病院だった。

両親もすぐにかけ付けたが、お医者さんは「残念ですが…。」と切り出す。

そして両親にある提案をした。

「偶然にもこの病院に心臓移植を待っている患者がいます。もしよろしければその方に心臓を提供できないでしょうか。」

両親も悩んだが、少しでも多佳子の体がこの世で生きていけるなら、と心臓移植を申し出た。

そして、多佳子と富子は手術室に運ばれる。

多佳子の心臓を富子に移植して、手術は無事に終わった。

「今、わたしの中にある心臓は、多佳子さんのものなの。」

そう言うと、まわりの女の子たちは「えー、ホント!」「本当に多佳子さんの?」と言って、驚いた。

「それじゃ最後、B子さんね。」

声をかけられたB子さんは、話し始める。

「じつはわたし、富子さんのお話、もっと詳しく知ってるの。」

多佳子さんの家にトラックが突っ込む。

家が崩れて、多佳子さんは首にゴン!と柱が落ちてくる。

「でも多佳子さんはその時死んでなかったの。」

柱でのどがつぶされてしまって声が出せなかった。

背中をはげしく打ち付けて全身が麻痺してしまって、手足を動かすことができなかった。

幸いにもすぐに助け出されて、救急車に乗せられた。

病院に到着する。

多佳子さんは(なんとか助かりそう。)と思い安心していた。

しかし、なかなかお医者様は来ないし治療も始まらない。

かなり時間がたってから、ようやく手術室に運ばれた。

(よかった。)

と多佳子さんが思っていると、なぜか富子さんも運ばれてきて手術が始まる。

医者は即死だと思っているから、麻酔をしない状態で多佳子さんの胸にメスを入れる。

(ギャ―――――――!)

多佳子さんは大声を上げるが、のどがつぶれているので声にならない。

手足を動かそうとするが、麻痺していて動かない。

さらにブスっ!ブスっ!と多佳子さんの胸にメスが突き刺さる。

(助けて―!!ギャ―――――――!)

胸を切り裂かれた多佳子さんから心臓が取り出される。

そして血管が外される。

「多佳子さんはそこではじめて死んだのよ。」

まわりの人たちはブルブル震えている。

「B子さん。ど、どうしてあなた、そんなことを知ってるの?」

B子さんは服のボタンを外し始める。

服を開くと胸にはぽっかりと穴が開いていて、ドロリと内臓が出ていた。

「だって、あたしが多佳子なんですもの。」

おしまい

【 元ネタ: 楳図かずお氏「うばわれた心臓」より 】

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