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怖い話【 下水道 】

※ 初めてのお読みの方は【はじめに】をお読みください。


町の地面の下には水道のパイプが張り巡らされてる。

飲み水が走っているのが上水道。

台所、洗濯機、お風呂、そしてトイレの水は下水道というパイプを流れてる。

家から出たパイプは最初は小さいですが、たくさんの家のパイプが集まると太くなる。

さらに町から出るとさらに太くなり、最後の下水処理場の近くになると高さ7mの太いパイプになる。

これくらい太くなるとマンホールから降りていって、人が通れるくらいになる。

下水を管理する人たちは、たびたび地下に降りて行って、修理をしたり、状態を調べたりする。

みんなは知っているか分からないけど、地下には有毒なガスがたまったりする。

年間に数人ですが、下水のパイプの中で作業員が死んだりしている。

また家の中で人を殺した時、死体をバラバラにして細かくし、トイレに流すなんてこともよくある。

だから、下水処理場の手前あたりはよく幽霊が出ると言われている。

その中でも働き始めたばかりの新人作業員は、それがよく見える。

〇 その1

これは新人作業員Aさんのお話し。

5人のチームになって、下水道の検査に向かった。

マンホールから降りて行って、パイプの中に入るとそれぞれ点検や修理にはいる。

しばらくすると、下水の奥からパチャパチャパチャと足音がした。

そして向こうの方から、誰かが声をかけてきた。

「あのー、すいませーん。こっちの作業が手間取っているので一人来てもらってもいいですかー。」

Aさんが気がついて見てみると、自分たちと同じような作業着を着ている人がいる。

真っ暗なせいか、ヘルメットが影になっているのか、顔がよく見えない。ボヤっと黒くなっている。

なぜかライトは持ってなくて、全身が青白く見える。

「あのー、だれかヘルプに来てくださーい。」

声が聞こえているのに、先輩たちは何も反応しない。

Aさんは(あれ?)と思いながら、先輩に話しかけた。

「すいません。別の班だと思うんですが、ヘルプを欲しがっているみたいです。」

そう言うと、先輩は、

「ああ…。」

と言って、また作業に戻ってしまった。

仕方なく、Aさんも無視して作業を続ける。

しばらくすると、班のリーダーが

「上に上がって昼飯にするぞ。」

と声をかけた。

マンホールを上がり外に出ると、さっきの先輩が声をかけてきた。

「お前、さっきなんか見たか?」

「はい。」と答えると

「今日はここには俺たちの班しかいないから。これからも、こういうことあると思うけど、無視していいよ。」

と教えてくれた。

下水道の中に現れる、顔が黒い作業員とはなんだったのか…。

〇 その2

次は新人作業員Bさんの話し。

Bさんは地下での作業を終え、みんなで梯子を上っていた。

なんのいたずらか、後ろの人がBさんのズボンのすそを引っぱってくる。

チラッと下を見ると作業員がいる。

(えっ?なんなの。)

と思いながらも地上に上がる。

地上に上がっても、後ろから来ていた人がなかなか上がってこない。

変だなと思って、マンホールをのぞき込むと作業員が梯子につかまっていた。

まったく上に上がろうとしていない。それどころか、雰囲気がおかしい。

見た目は作業員だが、顔がまっくらで誰なのかよく分からない。

そうしているうちに、先輩がマンホールのフタを閉めようと、「よいしょ」とそれを持ち上げている。

おどろいたBさんは、

「ちょっと待ってください。下に人がいます。」

それを聞いた先輩は、マンホールの中をちょっとだけのぞき込むと、そのままフタをガコっと閉めてしまった。

Bさんは(えっ!?)と思ったが、先輩がこう言った。

「あれな、人じゃねぇから。」

〇 その3

次は下水管作業員Cさんの話し。

Cさんは実家暮らしで、お父さん、お母さん、そしてCさんが暮らしていた。

お父さん、お母さんは仕事に出ていたが、Cさんは風邪をひいてしまいベッドで寝込んでいた。

お昼前くらいに、誰かがギシッ、ギシッと階段を上がって、2階の自分の部屋に向かってくる音がする。

足音でなんとなくお父さんじゃないかと感じた。

たぶん、風邪をひいた自分の為にポカリスエットやゼリーなどの食べ物を、わざわざ仕事を抜け出して来てくれたのだと思った。

ギシッ、ギシッとその足音は自分の部屋の前で止まる。

そして「お~ぃ、入っていいか~。」と声がしたので、「いいよー。」と返事をした。

しかし、「お~ぃ、入っていいか~。」と言われる。

(あれ、聞こえなかったのかな?)

と思い、もう一度はっきりとした声で「いいよー。」と言う。

しかしまた、「お~ぃ、入っていいか~。」

そんなやりとりが4回5回と続くうちに、

(これ、お父さんじゃなくね。)と思った。

おそるおそる部屋の扉の方をのぞき込む。

その部屋の扉は横にスライドするやつで、少しだけすき間が開いていた。

その隙間からは目が見えた。

しかし、その目は縦にふたつ並んだ目だ。

しかもばっちりと目が合った。

お互いの目が合うと、扉の向こうのそれは「あぁ…、間違えた。」と言った。

幽霊は人間の顔を作って来たはずが、目を縦に作ってしまった。

そして、ギシッ、ギシッと階段を降りて行く。

玄関から出て行くならバタンと音がするところだが、次に聞こえてきたのは、

キィ、パタン…

というトイレの扉の音だった。

Ⅽさんは1度だけ下水作業中におかしな作業員を見かけたことがある。

きっと下水管をたどって、Ⅽさんの家まで追いかけてきたに違いない。

あなたの家のトイレも、幽霊が出る下水管とつながっている。

おしまい

【 元ネタ: オカルト探偵 吉田悠軌氏 】

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