「セーヌ川の水面の下に」 ~このぶっとんだ映画を観よ
この映画程タイトルから内容を想像するのが難しい映画はそうないだろう。
英語の原題は「Under Paris」。実はこの原題のほうがこの映画の内容を上手く表している。ラストシーンを観ればこのタイトルの意味が実感できる。
最初のエピソードを観て思う。よくある主人公に訪れる苦難のエピソード、そして「ジョーズ」でもおなじみの危機の到来と権力者の無関心。ところがここから予想される展開は結果的にすべて裏切られる。こんな展開を誰が想像できようか。そうこれはディザスター映画なのだ。「ジョーズ」の正統的な後継者と言ってもよい。「ジョーズ」を初めて観た時の「イッちまった」感をこの映画で感じることができた。
あれから半世紀近くである。「ジョーズ」から50年近くたち、多くの映画に感性を揺さぶられている以上、不感症になった観客は多少の過激さでは満足できないだろう。ところがこの映画の「イッちまった」感は生半可なものではない。それはスプラッター映画のようなドギツさ、グロさという意味ではない。ゴダールの伝統を継いだ知的に観客にショックを与えるという意味である。
「ジョーズ」以降サメ映画はたくさんのB級映画や「ディープ・ブルー」や「ロスト・バケーション」等佳作を経て、「MEGザモンスター」に見られるようなアクション映画等に至っているが、この映画はそれらと一線を画す「イッちまった」映画なのだ。
ここで出てくるサメの名はリリスである。聖書の偽伝で出てくるイブより前の女であり、いろんな物語で登場する悪魔の女である。悪魔の女王、魔女がサメの名なのだ。それが一体何を意味するのか、この映画でじっくり味わっていただきたい。
フランスでよく起きる環境テロリストの話も皮肉めいたエピソードで語られるのも面白い。やはり常識あるフランス人は「そんな奴は喰われてしまえ」と思っているのかと思いきや、最後には環境、自然の復讐がテーマだと気づく。
とにかくぶっとんだ映画を観たい方にお勧めである。「MEGザモンスター」1や2のようにジェイソンステイサムがカッコよく巨大サメを退治するのもスッキリするが、そういった予定調和に飽き飽きした方向けである。
私はラストのあまりの展開に笑うしかなかった。本物のセーヌ川で、こんな大規模なロケをして。
パリオリンピックを開催するフランスが作る映画か?
「MEGザモンスター」1・2も大好きであるが、こういう「イッちまった」映画も大好きである。忘れられないと言う意味では言うまでもなくこういう「イッちまった」映画のほうであるが。