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乳がん治療中の性交痛—化学療法による影響と適切な治療法


乳がん治療中の性交痛

40代のヨーロッパ系の美しいご夫婦が、性交痛の問題で受診されました。奥様は2年前に乳がんの手術を受け、術後には女性ホルモンを抑える化学療法を続けているとのことです。

実は、乳がんサバイバーの多くが性交障害に悩んでいることが報告されています。具体的には、乳がんサバイバーの63.7%〜100%の方が何らかの性交障害を経験しており、その中でも化学療法を受けている方の13.3%には性交痛が出ていると言われています。

化学療法による化学的閉経による性交痛

化学療法によって引き起こされる化学的閉経が原因で、性交痛が発生することがあります。これにより、女性ホルモンが低下し、腟や外陰部の粘膜が萎縮して乾燥するため、痛みが生じるのです。

この患者さんには、まずフェムゾーンの保湿ケアと腟レーザー治療を行いました。腟レーザーは、腟の健康を改善し、痛みを和らげるのに役立ちます。適切な治療を続けることで、通常は3〜6ヶ月で性交が可能な状態まで改善されます。


治療法の選択肢

性交痛に対する治療方法にはいくつかの選択肢があります。

①フェムゾーンの保湿
②腟拡張のためめ腟ダイレーターの使用
③理学療法士や運動療法士による骨盤底リハビリテーション
④腟レーザー
⑤腟ボトックス
⑥生活習慣の改善(ストレス緩和など)
⑦三環系抗うつ薬の内服
⑦SEXカウンセリング

また、海外ではDHEA腟錠剤などが使用されることもあります。


乳がん既往の方の治療について

乳がんを治療された方には、局所ホルモン療法(例えば、女性ホルモンの腟錠など)は慎重に行うべきです。絶対に禁忌というわけではありませんが、乳がんの担当医から反対されることが多い治療法です。

性交痛には精神的な要素も強く関わっています。この患者さんも、乳がんの手術を受けた大学病院でのコミュニケーションに問題があり、英語診察で有名な病院に転院された経緯があります。異国での癌治療は本当に大きなストレスを伴いますよね。

乳がん化学療法による性交痛

LUNAクリニックの女性性機能外来にも、30代〜50代の若い年代の患者さんが多く来院されています。特に乳がんの化学療法が原因で、化学的閉経による性交痛に悩む方が増えています。化学的閉経により、女性ホルモンが低値になると、フェムゾーン(外陰部や腟)の粘膜が萎縮し乾燥してきます。この状態は、以前「萎縮性膣炎」や「老人性膣炎」と呼ばれていましたが、現在は**GSM(閉経関連泌尿性器症候群)**と呼ばれています。


乳がん治療後の性交痛は、十分に治療とケアが可能です。患者さんの状態に応じた適切な治療を行うことで、生活の質が大きく改善することが期待できます。性交痛で悩んでいる方が、治療法の選択肢を知り、安心して治療を受けられるようになることを願っています。

性交痛で悩まれている方は
女性医療クリニックLUNA 性機能外来受診も検討してくださいね。
https://www.luna-clinic.jp/fsd/

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