働かないふたりが平凡な作品になりかけている気がして懸念が出てきているっていう話
働かないふたりを最新刊まで(33巻まで)読んだ。
が、なんというかちょい物足りなさを感じてしまい
非常に今恐れている。
前回の記事で、働かないふたりがいかに名作だったかという点についてアレコレ記したが、ちょっと雲行きが怪しくなってきた。
長い連載漫画にありがちだが、キャラクターが段々と死んできてしまう漫画がある。
具体的には今のワンピースや末期のこち亀などが挙げられる。
何というか、キャラクターが生きたキャラクターではなくただの記号的存在になってしまうのである。
ワンピースの例で言えば、元々はそれぞれがそれぞれの信念を持って作品の中で躍動しており、だからこそ彼らの冒険が楽しく、またさもその物語がどこかの現実であるかの様に没頭できるのである。
が、正直今のワンピースのキャラクターにはその魅力が皆無と言っていいほど失われている感がある。
ルフィは何というかただ騒がしいだけの存在になったし
ナミやウソップはマジでやかましいモブキャラが如くの振る舞いしかなくなってきている。(アラバスタの時のウソップの信念あふれる戦いがすげー好きだったのに、、)
そうなるともはやその物語は我々が没入できる世界ではなく
ただのフィクションとしての印象を強く感じる様になってしまう。
そしてひとたびその物語がフィクションで偽物の世界だと感じてしまうと
急激にその作品に対する熱が失われてしまうのである。
働かないふたりも初期(25巻前後まで)は
キャラクターがそれぞれ生きていて、こんな二人が本当にいたらなあと感じる程に輝いて見えた。新しく出てくるキャラクターもみんな魅力的で、そこから紡がれる物語一つ一つが本当に現実の世界を見てるかのようにのめりこめたものである。
が、正直25巻以降からはちょっとキャラクターの記号化が進みすぎて
なんかリアリティがなくなりつつあるのを感じてしまう。
まず最初に感じたのは倉木さんの春子化で表情もそうだが、振る舞いもほぼ春子のような感じになってしまい、初期の頃の二人の雰囲気に憧れつつも社会人としてのスタンスを維持していたという差別化がなくなりつつある。
無論二人と過ごす時間が長くなったことで徐々に自分もそうなっていくという変化については理解できるのだが、それにしてもこれだと働かないふたりが働かないさんにんになっているだけで物語に広がりがなくなってしまうように感じるのである。
キャラクターの平坦化だけならまだ許容できなくもないのだが
一番気になるのが、物語の進行スピードが極めて落ちている事である。
25巻位までは少なくとも3巻ごと位に物語内での大きな変化が常にあった気がする。
最初は素性もわからなかった守が実は漫画の才能が有ったり
かつては働いている時期があったり、本のブロガーとして実は結構有名だったりなど徐々に実は、という展開があったため物語を読み進めて常に新鮮な驚きと発見があったものである。
春子も春子で過去編が徐々に明らかになる事で昔から春子は優しい性格でそれが故に、瀬野さんや友晴との友情が築かれた事がわかっていく
その過程は当初から二人に感情移入していた読者にとっては、自分の応援していたキャラクターが報われる瞬間を見るが如く優しい喜びを感じられる瞬間になったように思う。
その後25巻に至るまでそういった徐々に物語が進んでいく様を常に感じる事が出来る。
個人的にお気に入りだったのは守と戸川さんの関係や、二人と倉木さん、丸山との日常だったのだが、25巻を超えたあたりからそこら辺の物語の進展が全くと言っていいほど感じられないのよね。
いくらニートの日常を描くといっても、これだけ代り映えのない日常を見せられるのは流石にしんどい。
ホントにニートの日常を描いているみたいになっちまう。
ニートは毎日変わらないのである。(自験談)
そしてそれをガチで描いても退屈極まりない。
この物語はニートでありながらニートではない所にこそ面白味があったように思うのだが、その良さがなんだかなくなってしまいつつある様に感じる。
何というか、この物語のよさって、ニートというか、働く事の意味って何だろう、人生の幸せって何だろう的な部分を問いかける所にあったような気がするのよね。
ただ働く事だけが、普通と呼ばれる生き方をする事だけが幸せじゃないという本質的なメッセージを教えてくれる作品だと勝手に認識してたんだけど
それがただのニートの日常を描く作品になっちゃうと流石になんか普通に心配になる。これでいいのかって普通に思っちゃう。
それこそニートというテーマにこだわりすぎずにやんわりと社会復帰する過程を描いてもいいんじゃないと思う。
事実時折挟まれる数年先の未来みたいなエピソードでは守が漫画家として大成している姿などが描かれている訳だから、本編でもやんわりとその過程を描いちゃってもいいんじゃないと思う。
初期の頃守が漫画に応募して入選して賞金貰ったり
そしてその漫画が戸川さんが心から嫉妬するくらいの才能の片鱗を見せる作品であったりなど、将来の発展性を予想される展開が描かれていて、これからどうなるんだろう!?という期待感が持てたものである。
が、今のふたりは正直ホントに何も変わらんまま作品内で3年くらい過ぎているし、ホントにこのままで大丈夫??ってなっちゃう。
守がひきこもりの友達と一緒にインドに行って更生させる話とかもすげー好きだったのに。
春子が占いでちょっと成功する話とか、戸川さんの小説が少しずつ評価される話とかキャラクターが前進している姿を流石に見たい。
というかサザエさん時制っぽいけど作中ですでに何回もお正月イベントやってる気がするんだけど、キャラクターの年齢は動いてないの???
物語序盤はおそらく二人は20代前半位と推測したけど、今最新刊はぼちぼちアラサー位に一応なってるって事よね??
いや現実問題としてアラサーで春子のあのムーブメントは流石に見てられない感じになっちまう。見た目が変わらんのでまだ救いがあるけど、流石に20代前半ならまだしもアラサーで1万歩散歩して10円貰って喜んでる春子の姿はキツイて。
あと倉木さんも初期の頃すでに20代中盤くらいだと思ってたんだけどもう30オーバーって事??
それも流石になんかマジでキツイと思っちまう。
現実問題としてアラサーでニートの家に入り浸って何も変わらない日常を何年も見せられるのは流石になんか素直に楽しめなくなっちゃう。
ここでなんかちょっと胸がざわざわしてしまうのはまだ私が社会を捨てきれていないためか。
なんかそういういらん心配をなくす為にも、ある程度の進展が欲しいのよね物語内に。
いや別にそれが働くとか社会的に成功するとかそういうんじゃなくてもいいからさ。
何というか二人の素朴な感じを生かした、例えば飯塚さんたちとの関係見たく、町の中でちょっとした名物的存在に徐々になって、少しずついろんな人に認められるようになるとか、ちょっとした有名人になる的な感じでニートという立場を維持しつつ主人公組が少しずつ世間に認められる様を見てみたい。
じゃないとホントにお母さんみたく、大丈夫かなこの二人の将来という心配が先だって素直に作品を楽しめなくなっちまうのである。
いやこの作品すげー好きだったからホントにうまい事着地してほしい。
そもそも何巻まで続ける気なんや???
物語が動かないんならこのままダラダラ続けるよりはどっかで着地させてこのまま名作のまま終わってくれ頼む。
晩節を汚して最初は面白かったのに、、という作品をこれ以上見たくない。
ダラダラ続けようと思えば続けられたあずまんが大王やエンジェル伝説がキャラが生きていたタイミングですっぱり終わったように、この漫画も美しい思い出のまますっぱりフィナーレを迎えてほしいものである。
さもなくばもう少し物語を動かしてほしい。
就活まで行かないまでももう少し二人が社会的に前進する姿を見てみたいものである。