本

スケッチ「読書」

小説は「どこでもドア」に似ている。
そのドアを通れば、扉の向こうの見たこともない風景や情景、見たこともない人々の悲喜交々を読者は「物語の中」から見聞きしたり追体験できる。

ただし、その「どこでもドア」には鍵が掛かっていて、同じ形の鍵を手に入れた人しか、そのどこでもドアを開くことは出来ない。

1ページの1行目で手に入ることもあれば、読み終わるまで手に入らないこともある。もちろん途中で諦めることも。

小説という「どこでもドア」は、人と時を選ぶのだ。

その鍵は、色々な形で小説のどこかに隠れている。
例えば、舞台だったり、キャラクターだったり、思想だったり、ジャンルだったり、句読点の打ち方、物を見る角度、言葉で説明できない『何か』

著者との『共通点』という鍵を見つけた瞬間、目の前の「どこでもドア」は開いて読者は著者が「思い描いた世界」に招待されるのだ。

ただ字面を追って内容を頭に入れるだけでは「読書」とは言えない。
本の中に隠された鍵を見つけて「どこでもドア」を通ってからが本当の「読書」なんだと僕は思う。

だって「読書」は「体験」で「冒険」で「経験」なのだから。

だから僕は、新たな「読書」を求めて本屋に向かう。



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