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10年目の3.11

 3.11から10年。言葉が出てこない。東京から札幌へ移住して10年目。震災と原発は、私を大きく変えた出来事だった。もちろん、日本中がそうだったと思う。でも、今。どう変わったのか。それを考えると、手が止まる。私も。世の中も。確かに、変わったのだと思う。変わったけれども。

 震災は、人間にはどうしようもない。アイヌの人々のように、謙虚に畏れるしか無い。その謙虚さを問われると、また言葉を失うけれど。去年のコロナでは、もう一度そのことを考える機会を与えられた気がしている。

 でも、原発は震災とは違う。人間が作ったものだ。原発を作った以上、使用済みの核燃料が残り続け、私たちが生きている間に無害にすることすらできない。10年という人間にとってはある程度長い時間が過ぎて、心のどこかで(もうそろそろ解決して欲しい)と思っていたことに気がつく。そして、原発は10年という単位で考えられることではないんだと、改めて思う。そういうものを作り、動かしていること。この無責任さを受け止めて、考えて、生きてゆくしかない。

 東京から札幌に移住してから、ずっとどこかに罪悪感があった。何かできることをしたい、と思い展覧会に参加した。絵本を描いている私に唯一できることだと思った。当初は札幌で。3年前から、旭川のこども冨貴堂で『3.11』展をさせてもらっている。

 3年前、『パーマネントライフを探して』という映画を観て、ままならない現状の中にも希望の種がたくさんあると感じた。そこからイメージして、希望の種が世界中に飛んでゆくイメージを絵にした。

8年目の3.11

 そして、去年。それぞれが自分自身の大切なものを優しく抱きしめ、あたためるようなイメージが浮かんだ。大切なものの象徴には、大きな木。私は木が好きだ。本当に木に触れて抱きしめると安心する。夢の中のような世界で、みんなが自分の木と一緒にいる。安心できる時間がゆっくりと続いていく。

夢の木

 今年は、芽吹きはじめたその種を、それぞれの土地で育ててゆくイメージ。私は、ここ北海道の地で。ここに生きる人や動物たちと一緒に。小さなことでいいと思う。おおざっぱな私なので、できるだけ丁寧にしよう。そうして、楽しく。楽しいことは大切だと思う。すごく、大切だと思う。だから今年は描きすぎないようにした。完成を求めないというか。楽しさや、うきうきした気分を残したかった。そんな風に、前に進んでいきたい。

かとうまふみ

こども

女の子

男の子


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加藤真史
ありがとうございます。うれしいです。 楽しい気持ちになることに使わせていただきます。 また元気にお話を書いたり、絵を描いたりします!