記憶

女の子は小学校に通っていました。

まだ物心もついておらず、いろんなことに興味があり、いろんなことが不安でたまりませんでした。

けれど、一生懸命に生きていました。


朝。

お家を出たら、天井よりもずっと広い空が広がっていて、

気持ちのいい空気が体を包み込んでくれました。

風が導いてくれるようで、女の子は軽い足取りで学校へ向かいます。

「今日もすてきな一日になりますように。
           笑顔でいられますように。」

そう天にお願いするのがその子の日課でした。



お昼休み。


女の子は、毎日校庭に行きます。     

教室を出て、玄関に行き、靴を履いて、扉を開ける。

お空にある、大きな太陽から溢れ出る光が、大好きでした。

眩しくて目も開けられないくらいの光には、しあわせの粒がたくさん含まれていて、校庭で遊ぶ子どもたちを、やさしく包み込んでいました。

その光を全身で感じることが、女の子の しあわせ でした。


帰り道。

いろんな生き物が、常にそばにいてくれます。

虫や植物とお話しながら帰るのが女の子の毎日でした。



そんな毎日の繰り返し。

けれど、毎日通る同じ道が、女の子にとっては、
毎回別の世界のように感じていました。


女の子にとって、すべてが しあわせ でした。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?