見出し画像

【書評】サはサイエンスのサ〔完全版〕 / 鹿野司さんの著作について

こんにちは。
読書の秋という訳ではありませんが、少しお高い本を購入しました。
まだ読了していませんが、フレッシュな内に感想を投稿してみました。


どんな本?作者は?

投稿のタイトル通り、下記の書籍となります。

刊行はつい最近の24年9月。早川書房さんです。お値段は4,840円と安くはありません。紙媒体と電子書籍があるようですが、値段は同じです。

2022年に逝去された科学系ライターである鹿野司氏が「SFマガジン」誌に連載していた全てのエッセイをまとめた物です。

2010年に刊行されていた同名の書籍〔通常版〕に未収録分を追加した物が、今回紹介する〔完全版〕です。なお、紙媒体版のレイアウトは、雑誌掲載時のものを踏襲しているとの事。

完全版の名に相応しく追加部分の方が元の通常版よりずっと多く、値段相応のボリュームとなっています。

紙を挟んでみた。
左側が通常版。
右側が追加された部分。


お気に入りのライターさんなのです

皆さんは好きな作家や文筆家と言うのがありますか?
私は子供の頃に、鹿野氏が書いたエッセイを読んで以来お気に入りで、氏の著作が出版されると買うようにしてきました。

冒頭のリンク先で試し読みできますので、興味を持たれたならば是非とも読んでみて下さい。

(早川書房さん非常に太っ腹です。さっき試したら、なんと完全版の紙媒体版で82ページ相当が試し読み出来ました。これは通常版の内容の40%近くに相当します。)


内容について

タイトルの通りSFや科学ネタを中心としたエッセイです。
専門的になりがちな科学や技術のネタを、読む人にとって解りやすく砕けた表現で紹介しています。
「〜だよね。〜なのね。」と語り口調の文体が印象的でした。

元々は掲載誌に準じて、SFの書評的な内容が多かったようですが、次第に世に出回るテクノロジーに関する話題も扱うようになった感じです。

科学に対する興味の入り口として、小学生高学年〜中高生あたりに是非読んでもらいたいものですが…

鹿野氏の執筆の記録文集という側面もあるのでしょうが、子供のお小遣い程度では気軽に買えないお値段なのが残念です。

もう一つ難点を挙げると、紙媒体版ではサイズとレイアウトの都合上、文字の大きさがかなり小さめです。
字間が普通の書籍よりかなり詰められている感じで、恐らく高齢の方には目の負担が高く、読むのに結構苦労すると思います。

またページ数が膨大で紙質もかなり薄いうえにずっしりと重いので、本を持ったりめくったりするのも結構大変です。

老眼が進行している方で、紙媒体での保有にこだわりが無いならば、タブレット等のデバイスで読む前提で、電子書籍版での購入を強くオススメします。読みやすさが全然違います。

A5サイズにびっしりと
三段組で文字が詰め込まれています。

紙媒体の書籍の体裁と読みやすさという点では、通常版の方が圧倒的に良いですね。

通常版の方がコンパクトだが
完全版より文字も大きく、
段組みも無いので読みやすい。


余談 : 鹿野司氏の他の著作について

鹿野司と聞いて懐かしく思うのは、今は亡き月刊「ログイン」誌に連載されていた「オールザットウルトラ科学」ですね。これも同様にサイエンスエッセイです。

前述の「子供の頃に読んだ」というのは、この連載記事のことです。

黎明期のログイン誌は、初期のパソコン世代のマニアックなゲーム記事を中心に取り扱っていました。
読者層もテクノロジーに興味があるオタクっぽい若年層という事で、鹿野氏の親しみやすい文体は、こういった読者層を科学の道に取り込むのに大いに影響を与えた事でしょう。

かなり昔に書籍となっていますが、未収録の連載記事も結構あると思います。
こちらも早川書房さんの様に、どこかの出版社が原稿を集めて完全版を出版して頂けたら、凄く嬉しいですね。

帯紙は小松左京の推薦文
フザケた感じの文体が
当時のログインを連想させます。


いいなと思ったら応援しよう!