【1日1事例】ヘルスリテラシーがもたらす意思決定の格差 #ヘルスリテラシー #意思決定 #健康格差
参考文献:ヘルスリテラシーがもたらす意思決定の格差
筆者:中山 和弘
発行日:2020年
掲載元:日本看護倫理学会第12回年次大会
検索方法:インターネット
メモ
・最近のヘルスリテラ シーの定義で代表的なものは、「健康情報を入手し、 理解し、評価し、活用するための知識、意欲、能力で あり、それによって、日常生活におけるヘルスケア、 疾病予防、ヘルスプロモーションについて判断したり 意思決定をしたりして、生涯を通じて生活の質を維持・向上させることができるもの」である。
・それは、 健康情報を得て意思決定することである。意思決定とは問題解決行動であり、情報とは問題解決のための選 択肢を知り、それぞれの長所、短所を示したものである。
・このような定義に基づくヘルスリテラシーの調査が実施され、それに困難がある人が多く、それが健康格差を生んでいるとして、人権問題としての対策の必要 性が叫ばれている。
・理解まではできたとしても、判断したり意思決定して行動に移せない状況がみられた。
・その背景には、家庭医などによるプライマリケアや 健康教育を受ける機会、未就学児からの健康教育と問題解決・意思決定能力の育成、わかりやすく信頼でき る健康情報資源の存在、健康科学・医学系論文へのアクセスなどの問題があると考えられる
・『世界価値 観調査』での世界各国の幸福感の調査によれば、人生の選択の自由度が高い国ほど幸福感が高い傾向にある。
・EU8カ国の調査で最もヘルスリテラシーの高かったオランダは、人生の選択の自由度とともに幸福 感も世界の上位であった。しかし、日本の幸福感は先進国では低めで、人生の選択の自由度は最低ランクで ある。そもそも選択の自由がなければ意思決定はできない。
・ヘルスリテラシーが低いなかで求められるものが意 日本看護倫理学会誌 VOL.12 NO.1 2020 91 思決定の支援であり、それが患者中心の医療である。 患者中心とは、患者の好み・意向、ニーズ、価値観を 重視した意思決定を保証することと、そのための情報 提供と支援とされる。そして、その実現のための方法 として注目されているのが、シェアードディシジョン メイキング(Shared Decision Making)である。
・その根底には、自己決定できることは人間が生まれ 持った性質として幸せであり、人間が他者との人間関 係を持ちながら、相互に依存して生きているため、自 律して自由に決められるためには支援が不可欠である という考え方がある。
・自己決定と自律という二つを倫 理原則としているところが、情報さえ提供すれば意思 決定できると考えるインフォームドコンセントとは異 なる点である。
・そして、患者の意思決定支援をより効果的なものと するために、欧米では、1990年代から「ディシジョ ンエイド(decision aids)」が開発されてきている。 治療やケアの選択肢について長所と短所の情報を提供 し、患者が自分の価値観と一致した選択肢を選べるよ うに支援するツールである。
・ヘルスリテラシーとは、選べる選択肢とそれらの長 所と短所を知り、自分の価値観を基に、専門家と協働 して意思決定し、健康と幸福を決める力と呼ぶことが できる。
・しかし、市民や患者が容易にそれを身につけ ることは難しく、医療者がその力を引き出す支援がで きることが求められていて、今や、アドボケイトとしてその支援する力を医療者のヘルスリテラシーと呼ぶ。
・出会った医療者のヘルスリテラシーの違いによって、そもそも選択肢が提供されるか、質の高い意思決 定ができるかどうかの格差が生じてはならない。
調べた単語:「アドボケイト」
・権利表明が困難な子ども、寝たきりの高齢者、障害者など、本来個々人がもつ権利をさまざまな理由で行使できない状況にある人に代わり、その権利を代弁・擁護し、権利実現を支援する機能
参考URL:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjne/12/1/12_90/_pdf/-char/ja