『大怪獣のあとしまつ』は本当にそこまで酷かったろうか

 アマプラに来ていたので『大怪獣のあとしまつ』を見た。

 なおこの作品、世間での評価はすこぶる悪く「圧倒的駄作」「令和のデビルマン」「作品自体がウ○コとゲロの中間」などの罵詈雑言を浴びている。
 しかしながら僕は思う。本当にそこまで酷かったろうか

 なぜ世間ではそこまで酷いものと評価されているのか。この作品の持つ108の酷いところから突出して酷いものを挙げると
・全編に渡って配された下品なだけでクソつまらないギャグ
・ラストのアレ
の二点で概ね意見が一致するものと思う。

 特に後者はラストでそこまでの二時間弱をまとめてゴミ捨て場につっこむような意味不明の産物であり、ただでさえ苦痛に耐えてきた視聴者に目眩を起こさせるに十分で、もはや「こいつら本当はこの映画作りたくなかったんじゃねぇか?」と思うしかない愚行だ。
 僕もアマプラだったからよかったもののこれが1800円払って劇場で見ていたなら発狂してました

 さて、この映画の広報から多くの人が抱くイメージは、

王道のヒーロー・ロボットものから基本的にオミットされている「現実的問題」に焦点を当て、それに官僚主義や政治的浪花節などの「嫌なリアリティ」を散りばめた困難に立ち向かい解決する

というものだと思う。
 実際作品はそのような雰囲気で全編進んで行き、結果ラストのアレが全てを台無しにして二時間弱をゴミ捨て場につっこむのだけれど、アレが不評を買うのはそこまでが「一応上記フォーマットの作品として体を成していた」からであって、もし作品全てが意味不明なゴミであれば「ゴミを最後にゴミ捨て場につっこむのは当たり前だよね」ということでラストは話題にすらなってなかったはず。

 本編にて描かれる最大の困難は、怪獣の死骸の「腐敗」である。その他周辺国の横槍とか色々あったけど扱いが小さすぎて「腐敗」一辺倒に見えたきらいはあるが、それだけ「腐敗」に関してはそこそこ誠実に扱っていたと思う。腐敗すれば臭いが出るし、ガスによる破裂・飛散も怪獣規模になれば相当のもので、臭いとはいえ災害クラスになることは想像してみれば頷ける。そこに関してはきっちり困難として設定できていた。
 それへの対策も

国を代表する各省大臣たちが最初ある程度一致団結して真摯に挑むものの次々起きる不測の事態から各人の持つ政治的思惑の相違により瓦解→民間の有志・八見雲さん、主人公の属する特務隊の伝説的存在ブルースさん、おっさん二人がそれぞれ力を尽くした上破れ去る→彼らの遺産を背負った主人公が国という大組織に背き最後の作戦に向け単身立ち上がる

というテンプレで、全体的には概ね納得できるものであり、大した科学的考証もなければ物語的な創意工夫もないけれど、これだけなら十人並みの凡作程度には納まっていたであろう。

 ここで大事なのは、特筆して酷い二点をそのまま取り除くだけで、この作品が「テンプレ的凡作」で納まることである。なくても話としてなんとなく成立してたのにわざわざ酷い要素をぶち込んだのだ。
 凡作に下品なギャグをただただぶちまけ、ラストのオチでまとめてゴミ捨て場に放り込んだ脚本ならびに監督の意図は、杳として知れない。

 まとめるとこの作品は「必要もない下品ギャグを散りばめラストでわざわざゴミ捨て場に放り込んだことでゴミになったけど、それを除けば、本来、テンプレ的凡作だったはずの作品」なのである。
 さて、みなさんはこれがそこまで酷いと思いますか?

 うん、酷いですね!

注:さすがにデビルマン級ではないです。

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